2006年から2008年までの中期計画である「Design2008」における今後のIT戦略について、平山氏はこう語る。

「1つ目は『エネルギー情報サービスの実現』、2つ目は『ユビキタスオフィスの実現』、3つ目は『ITガバナンスの強化』です。

　まず、『エネルギー情報サービス』では、我々のコアビジネスはエネルギーをお客さまに提供することですが、ITを活用してエネルギー周辺の付加価値を高めるサービスを作り、エネルギーと一緒にお客さまに提供をしようと思っています。既に具体化しているサービスとしては、『アイルス』というネットを使ったセキュリティシステムがあります。今、新築のマンションなどを建てる時、光ファイバーの常時接続が一般的になってきています。そこで、我々はNTT西日本さんと一緒にマンションへ常時接続をご提案しています。ネットに繋がったら、今度は一軒一軒のセキュリティ対策をするために、ドアや窓にセンサーをつけます。このようにお客さま宅に設置させていただいたセキュリティシステムを、子会社である大阪ガスセキュリティサービスが監視し、侵入者がいたらセンサーで検知して出動できるようになっています。ホームセキュリティのほかにも、携帯電話から床暖房や照明などの家庭内の設備を遠隔操作するサービスや、お年寄りの行動をセンサーで監視する見守りサービスも提供しています。このサービスは、お年寄りの動きが少ない場合、異常が起こってるのではないかと知らせるものです。

　ほかには、「スカイリモート」という、コージェネレーション設備の運転状況監視、遠隔操作サービスもあります。コージェネレーションとはガスでエンジンを回す事によって発電し、お店で使う電気を供給する一方、エンジンから出る廃熱を利用してお湯を沸かす省エネ/省コストのしくみです。コージェネレーションを導入いただいているチェーン店では、それぞれのお店の設備がどのような運転状況になっているのかをすぐ知りたいですし、一括でコントロールしたいものです。それに応えるため、NTTドコモのパケット通信サービスで情報を飛ばして、センター側でウェブサービスにしてお客さまに届けています。そうすることで、お客さまはパソコンからチェーン店の状況を一括して把握できるのです。このようなサービスを提供することがエネルギーの競争力の強化になりますし、さらにはそのサービスを他のエネルギー事業者に販売するという新しいビジネスになるかもしれません。

　2つ目の『ユビキタスオフィスの実現』ですが、これまで弊社ではITによる定型業務の効率化を中心に進めてきたのですが、これからはITを最大限に活用して非定型業務の効率化を進めていきたい、と計画しました。オフィス内でいえばホワイトカラーの生産性向上ですね。会社の中のどこにいても、あるいは社外やほかの事業所、出張先にいてもオフィスと同じ環境を提供し、仕事ができるようにしようということです。それを無線LAN、軽量の端末、IP電話で実現しようと考えています。

　そして3つ目は『ITガバナンスの強化』ですが、ITの利用範囲が飛躍的に拡大する中で、ITを安全・安価に使うためにはガバナンスを強化することが必要と考えています。具体的には、ITインフラやシステム開発の徹底した標準化、リスクマネジメントの確立（情報セキュリティ）、コストダウンですね。」

　このようなIT戦略をグループ内で推進するのが情報通信部の主な役目となる。もともと100人ほどの部署だった情報通信部は、2003年の4月に60人を各事業部に振り分け、現在25人体制までスリム化している。

　「社内の情報化推進は分散した体制をとっているのが特長で、実行部隊としての機能は私どもの子会社が担っています。たとえば、情報子会社であるオージス総研ではホストコンピュータやサーバー、ネットワークといったグループITインフラの構築、運用とシステム開発をしています。IP電話などの構築、運用に関しては大阪ガスビジネスクリエイトにを任せています。また、シェアードサービスについてもアイサポートという会社を作り、分社化しています」と平山氏は説明する。