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2007年01月12日

【小田嶋隆氏インタビュー】テレビ断末魔の悲鳴を聞いているみたいですよね 

昨今、視聴者のテレビ離れが進んでいるが、その背景には何があるのか?テレビ番組の批評で人気のコラムニスト小田嶋隆氏に聞いた。


でかい穴があいたテレビコラム欄

テレビ標本箱
テレビ標本箱

――新刊『テレビ標本箱』(中公新書ラクレ)は『読売ウィークリー』の連載をまとめられたものですが、テレビを批評ターゲットにしようと考えたきっかけを教えていただけますか。

小田嶋氏■
週刊誌での連載にちょっと自信がなかったので、テレビにしておけばネタに困らないだろうという、本当の理由をいってしまうとそのくらいなんですけどね。きちんと研究テーマを持っている人ならそれで連載を回せるんでしょうけど、私はこれといったテーマもなく生きているから、何か対象に反応するかたちでしかものが書けない。日常的にネタが転がっている分野は……と見回したらテレビくらいしかなかったということです。


――ナンシー関さんの死後、雑誌のテレビコラム欄が急激にレベルダウンしたことが連載することの決意を後押ししたとも「まえがき」に書かれてますよね?

小田嶋氏■
でかい穴を開けていったなという感じですよね。ナンシーの代わりをやれると思ったわけじゃないんだけど、「どうしようもないページばかりになったな」と各週刊誌を読みながら考えていたところはありました。だから、ナンシーが存命していたらやらなかったと思います。オレが付け加えるものはないという感覚があったし、たぶん恥ずかしくて書けなかった。実際には、彼女とは角度もやり方も文体も違うんだから同時にやっていたってかまわなかったんだろうけど、ナンシーがいたころはテレビ批評をやろうなんてそもそも考えもしなかったですからね。


――各コラムに添えられているイラストはナンシー関さんへのオマージュですか?(笑)

小田嶋氏■
そういうわけじゃない(笑)。連載を始めるときに「図版をどうしますか」という話になって、イラストレーターを立てるとか、キャプチャー画像を使うとかいろいろ案はあったんだけど、いずれにしても締切が3日か4日早くなってしまうんですよ。それで自分で描くことにしたんですけど、「オレが描く」といったら担当編集者は「え?」って顔をしていました(笑)。

小田嶋隆氏
小田嶋隆氏


――テレビ界ってしがらみが多いから、トラブルの対処や対策が大変そうな気がするんですが。小田嶋さんの場合はとくに。

小田嶋氏■
『読売ウィークリー』はわりとタブーのない雑誌で、ジャニーズのタレントなんかもけっこう取り上げていますけど、編集部から「これはちょっと」といわれたことはほとんどないですね。
クレームの入りやすい書き手のようなイメージがあるみたいですけど、私の場合、原稿が引っかかったことって、じつはほとんどないんですよ。唯一、NGを出されたのって、昔連載していた音楽誌くらいですね。音楽雑誌って利権の渦みたいな業界だから、たいしたことを書いているわけでもないのに「これは勘弁してください」となることがすごく多い。「反体制!」とかいいながら、あれほど腰の引けた業界はないなっていうくらい。

たとえば書評だったら、嫌いな本を取り上げてわざわざ「つまらない」って書くのも大人げない話だから、面白いと思った本だけ取り上げていればいいし、それで十分回るわけです。だからそんなに酷い書評というのはありえないんだけど、レコード評の場合は利権で動くからホントにクズみたいなレコードについて書かなければいけなかったりする。テレビの場合はもっと酷くて、どれを見てもクズだから、真っ当に取り組んでも結果的に悪口になってしまうんですね。しょうがないですね、これはもう。

一人相撲のテレビ番組


――番組のつくりが目に見えてヌルくなってますからね。

小田嶋氏■
地上波、衛生放送、CSとテレビが多様化して、いいコンテンツ、カネになりそうなコンテンツは有料化の方向へ流れているんですよ。地上波には、いわば、テレビが拡散したあとのいちばんカスの部分だけが残留しているわけです。だから、そこだけ見て「テレビはダメになった」といっちゃうと少し違うかも知れないんだけど、でもまあ腐ってますよ(笑)。


――地上波のカス加減を象徴するような現象って何かありますか。

小田嶋氏■
朝昼の時間帯の番組が、自局一押しのドラマや特番の宣伝ばかりになっているんですよ。出てくるゲストが軒並み「次のドラマ主演の誰それさん」とか「今日の夜、何々に出る何とかさん」とか、そんな人ばかり。テレビってもともと宣伝メディアであるわけですが、自局の番組で自局の番組の宣伝をするという、タコが自分の足を食うみたいなすごい状態になっている。『笑っていいとも』の「友達の輪」も、翌日の夜に主演する女優とかに、どう見ても何の関係もない歌手が「久しぶり〜」とかって回すようになっているでしょう。「番宣の輪」ですね(笑)。


――視聴者はそれに慣れちゃってるんでしょうかね?

小田嶋氏■
いや、そろそろ見限りはじめているんじゃないですか。もう視聴者無視で、出ている側だけで完結するようになってしまいましたから。「何とかちゃーん、久しぶり〜」とか出演者同士だけでやっているでしょう。
テレビって昔は、視聴者へ向かってしゃべるものだったんですよ。出演者が「みなさん、こんにちは」とブラウン管の向こうにいる視聴者に語りかけるという虚構によって、テレビというメディアは成立していたんだけど、もう面倒くさいからやめちゃったんですよ、その虚構を。

画面のなかの出演者だけで「久しぶり〜」とか勝手にやっている様子を、視聴者が「オレたちには挨拶もなしかよ」とか思いながら見ているのがいまのテレビなんです。出ている側と見ている側のあいだの格差が明らかになったというか、テレビのなかの人たちのリッチかつセレブでおいしそうな生活を、パンピーがうらやましそうに指をくわえて見るのがテレビだということに視聴者が気づきだしてしまった。その不愉快さが視聴者をテレビから遠ざけている面はあると思います。


――コマーシャルはどうですか。

小田嶋氏■
広告業界の知り合いがいうには、バブル後の不況でものすごく下がってしまった制作費がまだ回復していないらしい。クライアントがCMに重きを置かなくなっておカネをかけなくなったということでしょうけど、視聴者側も「テレビに出ているからって信用できないぞ」って薄々気づきはじめてますからね。近未来通信みたいな一件があったりして。

昔は、テレビでCMをやっている会社だから大丈夫だろうという安心感があったし、実際それなりのステイタスがなければCMなんて打てなかったんだけど、いまやサラ金やら怪しい通販やら、果ては近未来通信みたいな詐欺会社までが、ヘタしたらゴールデンタイムでも幅を利かせていますからね。

広告収入でペイするというテレビの収益システム自体が壊れかかっているわけですが、そのせいか、自分たちが宣伝媒体だってことを過剰に意識しだして、日銭にすごくうるさくなっています。お台場を観光地にしようとたくらんだり、亀田興毅みたいな突っ込みどころだらけのイベントを仕組んでみたり。しかも、そういった仕掛け方が見え見え。ヤラセをやるにしても、昔はバレないように腐心していたわけです。それを、誰が見てもわかる、というより「ヤラセですがそれが何か?」と顔に書いてやってしまう。 断末魔の悲鳴を聞いているみたいですよね。これが2011年にアナログ放送が停波になったら、いったいどんなビッグバンが起こるのか。みんなけっこう楽しみにしているんじゃないですか(笑)。

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