• 2007/03/30 掲載

【CIOインタビュー】 日立ハイテクノロジーズ グローバル戦略を支える骨太IT革新(2/2)

経営革新を支える日本のCIO

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セキュリティへの取り組みも重要な課題


 ERP導入により、企業データのリアルタイム統合環境を手に入れた同社。次なる課題には、経営の可視化という視点でのデータの有効活用がある。卜部氏は言う。

「数年前までは幹部のサポートスタッフが『急に生の数字を出してもらっては困る、まず我々がデータを分析してから幹部に報告したい』と言っていました。今やもうそんな時代でもないでしょう。」

 そこで2005年、経営データをビジュアル化し、経営幹部が画面上で容易に分析を行えるようにした経営ポータルを立ち上げた。現在はその利用促進に向けて、経営幹部への啓蒙活動と機能の拡充に取り組んでいる。

「リアルタイムのメリットを肌で感じられるようにしないといけない。経営ポータルがそのひとつです。言わないと数字が出てこないというのではなく、ここにありますよと言えるようになれば成功だと思います。」

 一方で卜部氏が高い関心を寄せるのが、情報セキュリティの強化である。日本でも2008年の日本版SOX法の施行を前に各方面での対応が急がれている。同社は米国で上場している日立製作所のグループ会社であるため、米国SOX法の適用対象として早い段階から内部統制に取り組んできた。内部統制は経理部門だけの問題ではない。全社的な意識の徹底、ITによる支援の強化、IT活用に関する社内ルールの制定など課題は多い。

「当然ノートパソコンなども統制の対象となります。ディスクのなかを暗号化するといった取り組みも進めてきましたが、最近では外部への持ち出しさえ禁止になりつつあります。営業部門にとっては不満でも、便利さとセキュリティはどうしてもトレードオフなんですよね」

 情報漏えいによるリスクの大きさには代えられないということだろう。卜部氏は、時代の要請に基づくセキュリティ課題をクリアしつつ、今後は社内外のあらゆるビジネスプロセスの統合とシームレスな連携を実現していきたい、と意欲を見せる。


ゴールのないゴールを追い続ける努力


 これまで数多くのITプロジェクトを担ってきた卜部氏。自らの苦い体験も踏まえ、プロジェクトの計画段階についてこうアドバイスする。

「総論では合意ができていても、各論を調整していくうちに玉虫色になってしまうことはよくあります。たとえば、ある帳票を出しましょう、無駄だからひとつの帳票にまとめましょうという場合。それぞれの意見を聞いていくうちに、1日で100ページも出ることになっていたりします。そうなると結局誰も見なくなっちゃうんですね。目的を明確にして、コンセプトを維持しながら稼働まで持っていかないと、最終的に方向性の見えないシステムになってしまう。本当に必要なものと、あれば便利なものの見極めが重要です。その点でも、声の大きい人の意見だけが通ったりすることのないよう気をつけています。」

 こうした心構えひとつでプロジェクトにかかるコストも削減できるはずだ。大規模なプロジェクトほどその影響は大きいといえる。

 「基本的にITは道具。いい道具でも使いこなせなければ意味がない」と言う卜部氏は、社内全体のスキル不足を懸念する。ITスキルではなく、業務スキル。IT化が進むにつれ手作業が減り、業務が何のためにどのように進められているかを見失ってしまうというのだ。

「新しいことをやろうとするときに、やりたいことだけ伝えて、『あとはIT部門が考えてよ』というのではまずい。本来システムを作る場合はIT部門ありきではなく、まずはエンドユーザ部門の明確な目的意識のもとにスタートすべきで、それを具現化するのがIT部門です。企画の初期段階の部分が非常に弱くなっている気がします。」

 企業戦略や成長を支えるIT。当然、プロジェクトを担う人材には大きな期待がかかる。

「ITがボトルネックにならないようにするためにも、ミクロの目だけでなくマクロの目も必要です。そのためには、これは何だろう、どうやっているのだろうという興味/探求心を旺盛にし、論理的な思考を身に付ける努力をしてほしいと思います。使って喜ばれるというのはモノづくりの喜びそのもの。そういうところにもやりがいを感じてほしいですね。」

 常に最先端を走っていきたいという卜部氏。「成功というのは常にゴール。しかし、ゴールはないと思わないといけない」という言葉が印象的だ。

■データ
日立ハイテクノロジーズ
代表者名 代表執行役執行役社長兼取締役 林 將章
設立年月日 1947年4月12日
資本金 79億3,848万円(2006年3月31日現在)
売上高 9,368万円(2004年度、連結)
本社所在地 〒105-8717 東京都港区西新橋1丁目24番14号
従業員総数 9974名(連結)、3161名(単体)(2005年9月末日現在)
電話番号 03-3504-7111
ホームページ http://www.hitachi-hitec.com/

■事業内容
・半導体製造/検査評価装置、液晶/ハードデイスク関連装置、サイエンス機器、医療/バイオ機器、環境システム等の国内外の研究開発/製造/販売/サービス
・情報エレクトロニクスの各システム、電子部品、先端産業部材等の国内外の販売/サービス


今回の記事は、弊社刊行「日本の情報システムリーダー50人」(2006年4月発行)に掲載されております。 その他の企業の記事は、同書でご覧頂けます。

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