• 2007/06/27 掲載

【コミック・ガンボ編集長インタビュー】無料マンガ雑誌創刊「普通のマンガでは誰も読んでくれない」

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無料で配布されるマンガ雑誌『コミック・ガンボ』が今年1月に創刊された。首都圏を中心に10万部が配布されていて、読者の認知度も徐々に高まり、まずは順調なスタートを切ったといえるだろう。同誌を手掛ける株式会社デジマの甲斐昭彦代表取締役に、起業から現在までの動きと今後の展望についてのインタビューをお届けする。
刊行し続けることで、周囲の理解が高まってきた

株式会社デジマ 甲斐昭彦代表取締役
株式会社デジマ 甲斐昭彦代表取締役
――『コミック・ガンボ』が今年1月に創刊したときには、テレビや新聞などでもずいぶん大きく取り上げられましたね。

甲斐■
予想以上に話題にしてもらえてありがたかったです。やはり「世界初の無料マンガ雑誌」というものを一番最初にやったということに意味があったかなと。準備の段階では、ハナ差でどこかが先にスタートしちゃったらどうしようと、ドキドキしてましたが(笑)、幸いにも他にそういうところはなかったですね。


――見た目は普通の青年マンガ雑誌と変わらず、なぜこれが無料で配られるのかと驚いた人も多かったようです。

甲斐■
駅前の路上で、雑誌を100円で売ってるところがいくつもあるじゃないですか。この前、あそこに『ガンボ』が並んでいるのを見つけて、ちょっと笑っちゃいました。表紙に「0円」って書いてあるのに(笑)。


――漫画家の方々や広告主さんなど、周囲の反応はどのように変わりましたか?

甲斐■
創刊する前から、我々は広告セールスのためにクライアントさんや広告代理店さんに説明して回っていたんですが、最初の頃は、こちらが「普通のマンガ雑誌と同じような装丁で、中身は全部マンガで、10万部作って、無料で街頭で配るんです」と説明しても、モノがないのでイメージのわかない人が多かったですね。創刊号が出て持っていくと、「なんだ、普通のマンガ雑誌じゃないですか」って(笑)


――だからそう言ってたじゃん!って (笑)

甲斐■
というわけで、実際にモノが出たことで、理解していただきやすくなったかなと。いっぽう漫画家さんも、他にどんなマンガが掲載されるのかを気にする方が多かったのですが、やはりこうやって一定のクオリティのものを出し続けているということで、漫画家さんからの売り込みも増えてきました。普通に仕事場のひとつとして認知していただいてきたと思います。


――街頭での手渡しというスタイルが主体になっていますが、最近では書店やインターネットカフェなどでの常設ラックが増えてきてますね。インターネット通販も開始しました。

甲斐■
はい、やはり読者の皆様からのリクエストが非常に多いんです。配っているときにたまたま当たらなかったという人のために、常設店はなるべく増やしていきたいですね。定期購読の場合は送料をいただくので、雑誌を買うのと変わらないんですけど(1号280円~)、そこまでしてでも読みたいというお客さんがいるのはありがたいことです。

マンガを出すからには「紙の雑誌」にこだわりたかった


――話は前後しますが、ここで改めて、デジマという会社を起業してまで無料マンガ雑誌を作ろうと思ったきっかけを教えていただきたいのですが。

甲斐■
以前、僕はトランスコスモスという会社で、新規事業の立ち上げやベンチャー企業への投資、出資先の管理とかをしていました。それはそれで非常に面白い仕事でしたが、他人の会社に口を出すより、やっぱり自分で事業をやりたいなという気持ちが強くなってきたのがきっかけです。で、いくつか企画を考えたんですが、やっぱり自分が一番好きなものがマンガで、どうせやるなら好きな仕事をしたいと。


――商売の原点ですね。自分の興味に立ち返った。

甲斐■
でも、じゃあ僕が独立して普通に出版社としてマンガ雑誌を創刊したら……と考えたとき、普通に一読者としての自分が、そりゃ無理だろうと言うわけです。見知らぬ会社が作った見知らぬ本が書店に並んでいても買わないよなと(笑)。


――冷静に考えたら…そうかもしれません。

甲斐■
で、いろいろ考えていたときに『R25』が登場しまして、僕は興味深く見ていたんです。それまで自分のイメージとしては、フリーペーパーといえば住宅情報誌のように中身がすべて広告のもので、だからこそ成り立つんだろうなと思ってたんです。だけど『R25』は読み物として面白いし、ちゃんと広告収入で成り立っている。じゃあ、これなら、マンガでもできるんではということで、色々とリサーチをし、事業計画を作ってみると、いけそうかなと。


――でも、今まで、他のマンガ雑誌にはあまり広告が入っていませんよね。

甲斐■
他のマンガ雑誌は確かにそうですけど、広告が入らないんじゃなくて、入れてないと思ったんです。マンガ雑誌にもいろいろありますけど、『週刊少年ジャンプ』が300万部あって、『週刊新潮』に比べると数倍もの部数があって、それ自体に広告価値がないとは信じられないと思ってましたんで。


――なるほど。

甲斐■
普通の出版社の場合、コミック雑誌のみの販売収入では、収支は大体プラマイゼロかちょっと赤字という感じだと聞いています。そのあと単行本にまとめて費用を回収し、さらに大きな積み上げを狙う・・・というビジネスモデルですよね。我々の場合は雑誌を売っていませんので、その部分は広告で埋めていきましょうと。ただ、広告だって大きく伸びるというものではありません。やはり、今後単行本が出てヒットすれば100万部を超えて……というところに、ビジネス的な魅力を強く感じます。


――紙の雑誌にこだわる理由には何があったのでしょうか。最近では、Webで読ませる無料コミック誌というのも幾つか出てきましたが。

甲斐■
確かに、10万部のマンガ雑誌を作るとなると、印刷や配布のコストだけで毎号1000万円以上はかかるでしょう。Webだけで公開するなら半分くらいのコストですむんじゃないでしょうか。でも、僕自身がマンガ好きですが、自分は紙でしかマンガを読まないんですよ。Webでマンガが読めるサービスは幾つか見ましたし、その中に面白いマンガがあるのも知っていますけど、やっぱり続けて読まないよなぁと。そうすると、Webを主体にして考えるのは難しい。紙の雑誌であることは、読者に読んでもらうための必要条件かなと思っているんです。


――確かに、電車の中で読んだり寝転がって読んだりできるのが、雑誌の利点ですよね。

甲斐■
それと、雑誌という紙の束で渡すことで、いい意味でのセット販売ができるんです。たとえば、ウチで一番有名な漫画家さんというと江川達也さんになると思いますが、読者が江川さんのマンガを読みたくて『ガンボ』を受け取り、ここから読み始めたとしても、読み終わったら他のマンガも必ずぱらぱらめくって読むでしょう。だけど、ネットで作品を読ませてしまうと、それを読んだだけで終わってしまい、他に行かないでしょう。我々には、大人気の漫画家をずらりと並べられるほどのツテもないし、実績もありません。そんな中でもいろんな作品を読んでもらって、その中から好きなものを見つけてもらいたいと思いまして。

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