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  • 2008/05/26 掲載

【CIOインタビュー】ITコスト半減に成功した大成建設の取り組みと秘訣--大成建設 木内里美氏

経営革新を支える日本のCIO

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昨今、建設業界は大変な苦境に立たされている。昨年度の国内市場規模は、バブル崩壊後のピーク時に比べ、約50兆円と4割減に縮小。このような状況から、いかに無駄を省きつつ、守りから攻めの経営に転換できるか?それはいまや同業界にとって喫緊の課題だ。そんな中、大幅なITコストの削減に成功し、注目を浴びている企業がある。大手総合建設会社の大成建設だ。同社は2001年から情報システムの再構築を敢行し、ITコストを半分程度まで削減した。その旗手として活躍した情報企画部長 木内里美氏に、コスト削減の経緯や情報システム部門の果たす役割、さらに、IT業界に先駆けて工事進行基準を適用してきた建設業界の目から見た、2009年受注ソフトウェアの工事進行基準適用などについて話を聞いた。
3割コスト減の目標が最終的には半分に

木内里美氏

大成建設
理事
社長室 情報企画部長
木内里美氏

─貴社がITコストを大幅に抑えることができた経緯について教えてください。

木内■大成建設では、2000年に情報企画部が社長室へ組み込まれ、それを機にITシステムの見直しが始まりました。そこでITコストが掛かりすぎる割にはパフォーマンスが良くないという指摘を受け、社内的な方針を詰めていくことになりました。同年8月に社内各部署が集まり、タスクフォースを発足させました。トップからの指示は、2005年を目処にIT関連の総コストを30%削減せよという内容でした。本来の技術開発コストよりもIT関連コストのほうが高い状況に問題を感じていたのです。タスクフォースでのさまざまな議論を行い、2001年からシステムの再構築が始まりました。

─3割のコスト削減という目標が掲げられ、どのように感じましたか?

木内■1割ぐらいならば、なんとか乗り切れる気がするのですが、いきなり3割減という数字は容易に達成できるものではないと感じました。とはいえ、最初から3割という高い目標を掲げられたがゆえに、根本的な改善をしなければ無理だという思いに至りました。それが結果的に良かったのです。グランドデザインの中で、汎用機(メインフレーム)を廃止し、自前管理のコンピュータ群をデータセンターにアウトソーシングしたり、PCなどの機器調達に掛かるコストを見直したり、骨格となる部分を中心に徐々に実行していきました。特にコストが高い部分を下げていくことで、その節約の集積がコスト削減につながるかもしれないと考えたわけです。

 2007年度には、いろいろな効果が重なり、コストが約半分にまで圧縮されました。IT調達に専任担当者を置いて細かく見ていったことや、会計システム上でもあらかじめ部門ごとに新規投資予算を持たせない「ゼロ・バジェット型」にしたことなどが功を奏したのだと思います。必要なものがあれば案件として挙げ、審議するというスタンスにすることで、本当に必要なものに対して投資できるようになりました。

─あらためて貴社のシステムの概要について教えてください。また、建築業界で特有となるようなシステムはありますか?

木内■まず企業システムには、どのような業界でも共通するものがあります。たとえば、人事・経理・会計系などを含むバックオフィス系システムがそれです。これらはメインフレームで動いていたため、再構築しなければなりませんでした。さらに営業系システムや、建築業界に特有のシステムもあります。情報は「ヒト」「カネ」「モノ」という観点から管理するわけです。建設業にとってモノとは、建物や施設を提供することです。お客様の「契約」から始まって、建築物として「仕上げ」、「完了する」という流れがあります。そのプロセスに従って、データを蓄積していく仕組みをつくる必要がありました。これは「契約決裁システム」ですが、単純に電子的な契約決裁を行うのではなく、入り口にあたる契約段階からデータをしっかり管理していこうという考え方です。

 1990年以降から情報システムは大きく変わってきました。管理系システムから、実際に現場で働く人たちを支援するコミュニケーション系のシステムへと大きく広がってきたのです。インターネットを中心としたネットワークを支える技術がその流れを促しました。

 現場で利用するという意味では、今回のシステム再構築でも大きな展開がありました。たとえば、国内の支店・営業所のほか海外も含め約1200カ所ある「作業所」と呼ばれる建設現場からプロジェクト情報を共有できる「作業所Net」を構築したことです。さらにこの「作業所Net」から電子調達をすることができます。当初これは「TRIO-PLAZA」という名称で開発していたもので、協力会社と「見積り」「契約」「請求支払い」という3つの要素をやりとりできる電子商取引システムでした。このTRIO-PLAZAは1:N対応の調達システムでしたが、現在さらにグループ会社や取引会社などにも展開できるようになり、発注機能も加えたN:N対応の「SUPER-TRIO」として発展しています。このように現場を支える生産管理の仕組みのブレークスルーも大きなポイントでした。

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