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  • 2008/08/20 掲載

工事進行基準は当たり前のこと、品質の向上で価格ありきのIT投資からの脱却を--NSD社長 冲中氏

【ITキーパーソンインタビュー(16)】

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2009年4月から受注ソフトウェア開発業などに義務づけられる「工事進行基準」。システム・インテグレータ(以下、SIer)の負担が増大する、ソフトウェア事業者に変革が必要だ、といった見方もあるが、実際の現場はどうなのだろうか。40年にわたり受託メインでシステム開発を行っている日本システムディベロップメント 代表取締役社長 冲中一郎氏に話を伺った。

受託による垂直モデルビジネスで高い利益率

日本システムディベロップメント
代表取締役社長 冲中一郎氏
日本システムディベロップメント
代表取締役社長
冲中一郎氏
──まず、日本システムディベロップメント(以下、NSD)という会社の概要をお聞かせください。

 NSDはシステムの受託開発を主体としている企業です。今年で40周年目を迎えますが、創業以来、または20年、30年と長くお付き合いただいているお客さまが多いのが特徴です。三菱UFJフィナンシャル・グループさんや第一生命さん、損保ジャパンさんなど、金融系のお客さまが全体の40%ぐらいの割合を占めています。金融系以外にも日立さんやニチレイさん、NTTグループさんやJALさん、こうしたすばらしいお客さまと固定的な関係を持っている独立系のシステムベンダーは恐らくそうはいないと思います。

──高い営業利益率を上げていることでも注目されていますね。

 これはビジネスモデルの優位性にあると考えています。単独のプロダクトやシステムを提供している企業では、次から次へとお客さまが入れ替わっていくビジネスモデルです。プロダクトを中心にさまざまなお客さまと接する「水平モデル」のベンダーさんは非常に多いと思います。こうした企業は宣伝広告費や営業力が中心となっていると思います。

 その一方で我々は創業以来、あるいは20年、30年と継続的にお世話になっているお客さまが多いため、必要以上のコストをかける必要がありません。そこが弱点にもなりますが、通常15~16%の販売管理費はNSDでは約半分しかありません。

 特定のお客さまと深くお付き合いさせていただき、さまざまなプロダクトをご紹介していくという「垂直モデル」は別の面でも活かされています。たとえば、勘定系や基幹系のシステムに携わっているため、場合によってはお客さま以上にお客さまのシステムに詳しい人材がいます。こうしたお客さま担当のシステムエンジニア(以下、SE)を揃えることで、より細かなニーズに応えることができると同時に、SEの稼働率を高く設定できます。

 一般的に水平ビジネスを主体にしている企業は、たとえばA社での導入を行えば次にB社での導入を行う、といった流れになると思います。しかし、A社に導入できればすぐにB社の受注が取れるとは限りません。こうした水平ビジネスを主体にする企業でSEの稼働率を80%にキープすることは、私の経験上とても難しいはずです。しかし、垂直モデルでは、お客さまの要望もあって、SEを常に待機させておく必要などもあり、稼働率は90%以上を確保できます。

 3つめは、お客さまのシステムや事情に精通しているため、プロジェクトの失敗が少ないということです。前期は残念ながら成功とは言えない案件が2件出ましたが、まったくない年もあるほどです。

 この3つの要因から考えれば、20%近い利益率も当たり前だと思います。

販社も交えた13社による電子メールセキュリティを若手営業マン主導で実現

──こうしたビジネスモデルは創業当初から変わらないものなのですか?

 実はマカフィーのウイルス対策ソフトを15年前に日本に持ち込んだのはうちの会社です。もちろんこうした商材をベースにしたプロダクト販売事業は今も継続的に行っていますが、売上全体のおよそ6%程度に過ぎません。我々も米国に会社を作り、商材をいくつか日本に持ち込みましたが、100個持ち込んで3つ当たれば御の字です(笑)。単品売りというのは、1つの品でヒットする確立は非常に低く、実はそう簡単ではありません。そのため、垂直モデルをメインの事業になったわけですが、現状は垂直モデル事業をいかに拡充していくのかが経営の課題だと考えています。

 しかし先にも述べたように営業力が強いわけではありません。そこで考えたのがある特定の分野に特化した強みでブランディングしていく方向です。中でもメールセキュリティは多くの企業が依然大きな悩みを抱えている重要な分野です。我々はもともと暗号化ソリューションであるPGPなどをかついでいるわけですが、それだけですべてが実現できるわけではありません。実際インテグレーションする際にはさまざまな製品を組み合わせていくわけですが、それはすでに先行者が多くいます。そこで販社さんを中心にお声がけして「Total Mail Risk Management & Solution(以下、TMRMS)」を立ち上げたわけです。

──TMRMSについて詳しく教えてください。

 メール分野で定評のある製品を提供する企業と、さらにメール提案のエキスパート企業を合わせた13社によるソリューション提案の仕組みです。メールサーバ、メールアーカイブ、ウイルス/スパム、メールフィルタリング、メール暗号化、メール一斉配信、大容量ファイル送信、情報漏えい保険の各分野でエキスパートが集いました。

──開発元だけではなく販社もなんですね。

 この点は非常に重要だと思います。たとえばミラポイントの製品を提供されている日商エレクトロニクスさん、マカフィー製品を扱われている丸紅インフォテックさん、といった具合に販社さんにお声がけしたのは、(競合製品などを提供する)ベンダー同士の協調だけではうまくいかないこともあるからです。さらにメールセキュリティ分野において、そもそもどういうことが必要なのか、製品が高度化していく中で、その必要性がお客さまに十分伝わっていない面があります。しかし、こうした需要を喚起するために網羅的に製品をご紹介することを販社1社で行えない面があります。

 販社さんは当然プロダクト個別の水平モデルでのビジネスですが、お客さまのニーズはソリューション、すなわち垂直モデルにあります。そのため、自分の会社にとって何が必要なのか、何を選べば良いのか、非常に悩まれているのです。そこに明確な答えを出すことでお客さまのニーズに応えようと考えました。もちろん共同プロモーションを展開できるといったメリットもあります。それぞれの分野の製品を切り口に、興味を持っていただいたお客さまには、そのまま優良な新規のお客さまになっていただくことを目指しています。

──若手の方が行動を起こされて具現化されたそうですが。

 そもそもなぜこうした動きをNSDで開始したのかと言いますと、先にも述べた経営課題の1つ、営業力強化施策の一環という面があります。まず、社内的には従来1箇所に集中していた営業部隊を各開発本部に分散させました。その結果、開発本部と営業部隊の連携が強化されました。

 その結果、PGPを担当していた若手の営業マンが、自身の過去のキャリアなども駆使してTMRMSというアイデアが生まれました。もともと営業部隊も「自分たちがやらなければ」という強い気持ちを持っていたのですが、成熟しつつあるセキュリティ市場で、単純にプロダクトを(バラで)売っていくのには限界があったはずです。今回の動きはまだこれからの面がありますが、今後も参加していただく企業を増やしていくなど、拡充していきたいと考えています。

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