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2008年09月24日

立教大学経営学部教授 国際経営論 林倬史氏 + 林研究室

【連載】戦略フレームワークを理解する「イノベーションのジレンマU」

前回は、「イノベーションのジレンマの概念」について、持続的イノベーションと破壊的イノベーション、なぜ、リーダー企業は破壊的イノベーションに対応できないのか。変化への適応力を創造するためには何をすべきかについて論じた。今回は、事例を挙げながら、「イノベーションのジレンマ」の意義と問題点を検討していく。

「破壊的イノベーション」の戦略的意味の確認

  最後に、クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」論の意義と問題点を検討していこう。そこで、彼の理論的軸を成している「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」を新たな技術的特質や新たな用途の視点から確認してみる。

「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」の技術的特質

 クリステンセンが「持続的イノベーション(Sustaining Innovations)」と「破壊的イノベーション(Disruptive Innovations)」という時、それぞれに対応する技術は、「持続的技術(Sustaining Technologies)」と「破壊的技術(Disruptive Technologies)」という用語を用いている。彼が、前者の「持続的イノベーション」という場合、それに対応する「持続的技術」は、革新的(radical)技術の場合と漸進的(incremental)技術の場合のそれぞれを用いて説明している。

 一方、彼は、「破壊的技術(Disruptive Technologies)」を説明する場合、その一事例として、かつてソニーがトランジスターを用いた小型ラジオを市場に投入した事例を用いている。そこでは、真空管による据え置き型ラジオが音質に優れているという意味で高性能であるのに対して、このソニーの携帯型ラジオは、音質面では低性能であり、より単純な機能ではあるが、トランジスター技術という革新的(radical)技術の開発によって、ポケットサイズ、携帯型という新たな用途を低価格で可能にした「破壊的イノベーション」であると論じている。換言すれば、「破壊的技術」の基本的特質とは、図表にも示されているように、新たな技術的特質を有する一方で、既存市場の性能要求を満たしてはいないが、潜在市場の性能要求を満たしていることを基本的条件としたうえで、低性能、単純機能、そしてしばしば低価格な製品を実現する技術を意味することになる。

 したがって、ここでの技術的特質は、新たな技術的特質を有する分だけ、より革新的(radical)技術が含まれていることを条件とする。他方、かつてホンダが北米オートバイ市場に参入した際に、ハイウェーでは低性能のために使い物にならなかった同社のバイクが、オフロード・バイクとして新たな用途を開拓して足場を築いた事例を同じく「破壊的イノベーション」のケースで論じている。このケースは、製品が新たな市場を切り開いた最大の要因は、革新的(radical)技術に基づいた新たな技術的特質というよりもむしろ新たな用途の提案にあった。


※クリックで拡大
図表1 持続的・破壊的イノベーションのイメージ図
(出所:DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部(2000)、85頁

「破壊的」とはどういう意味か。

 それでは、クリステンセンが言う「破壊的イノベーション」および「破壊的技術」の「破壊的」とはどういう意味なのだろうか。彼によれば、「破壊的技術は、当初は - - - 小規模市場でしか使われないが、いずれ主要市場で確立された製品に対抗しうる性能を身につける点が「破壊的」と呼ばれるゆえんである(クリステンセン、2001:頁19)。

 クリステンセンは同時に、「破壊的技術」の特徴として、単純・低価格・低い性能を指摘したうえで、「破壊的技術の特性は、当初は、主要顧客がもっとも重視する特性について、従来の技術の性能を下回ること。したがって、破壊的技術の商品化が成功するためには、その新技術の特性を評価する別の顧客層を見つけなければならない」(2001, 305頁)。すなわち、彼の用いた事例を踏まえたうえで「破壊的技術」の定義を一言でまとめると、主要顧客の要求からすれば、単純・低価格・低い性能ではあるが、新たな小規模市場では評価される既存市場の製品にはない新技術の特性を有していること(クリステンセン、2001:頁305)、である。

 上記のように、クリステンセンが『イノベーションのジレンマ』で論じている「破壊的イノベーション」には、二つのタイプが混在している。次作『イノベーションへの解』(C.K.クリステンセン・M.レイナー、2003)では、この点を踏まえて、「破壊的イノベーション」をさらに「ローエンド型イノベーション(Low End Disruptive Innovation)」と「新市場型イノベーション(New Market Disruptive Innovation)」の二つに分類して論じている。前者の「ローエンド型イノベーション」のタイプは、既存の主流市場のローエンドに位置する顧客層対応の製品であり、性能面では最低限の条件は十分クリアしている。後者の「新市場型イノベーション」は、性能は劣っているが、新しい属性(たとえば単純で便利)での性能に向上が見られる。いままではお金もスキルも不十分なため、既存の顧客層ではなかった新たな層という意味で新市場という概念で説明されている(2003,頁66)。以下、その点を踏まえながらいくつかの事例で検討しみよう。

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