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  • 2008/09/04 掲載

【CIOインタビュー】「宅配便事業統合は高品質なサービスを市場に投入していくチャンス」--日本通運 野口氏

リーダーシップと柔軟性で、さらなる品質向上を目指す日本通運IT推進部長の取り組み

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燃料費の高騰により、物流業界には厳しい時代が訪れている。日通総合研究所によれば国内貨物の輸送量は9年連続減少と歯止めがかからない。3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)による効率化やモーダルシフトによる環境負荷軽減への取り組みには世間の関心も高く、経営的な観点からも時代の要請という観点からも大幅な効率化が求められている。そうした中、IT部門ができること、やるべきことはどういったことなのだろうか。2009年4月に日本郵便との宅配便事業の統合を控えた日本通運のIT推進部長 野口雄志氏を訪ね、業界の動向とプロジェクトへの取り組み姿勢やその手法などについて話を伺った。
物流における「品質」は日本の大きな強み

野口雄志氏
日本通運
IT推進部長
米国PMI公認PMP
野口雄志氏
──昨今、原油価格の高騰など物流業界にとっても逆風となる要因が多く聞かれます。業界の動向とシステム投資動向などについてお聞かせください。

 サブプライムローンの問題に始まり、原油価格の高騰などにより、物流業界にも大きな影響が出ています。物流費がお客様企業の中で大きな割合を占める状況になってきており、国内貨物の輸送需要は減少傾向にあります。その中で、いかに省力化、効率化しながら、さらにお客さまの満足度を上げていくことが非常に重要な要素になっています。

 日本通運では倉庫(ハードウェア)、システム(ソフトウェア)、オペレーションを一体にした物流ソリューションを30種類近く提供しています。たとえば国内の引越し管理システムであったり、鉄道のコンテナを出発地から到着地までの所在管理などがあります。モーダルシフト(注1)なんかは、環境問題などの面でもニーズが高まっていますね。

 従来は、たとえばA地点からB地点にただ「もの」が届けばよかったのですが、今では集荷や配達の時間をどの程度守ることができるかなど、品質をはじめ、幅の広い付加価値サービスが求められています。国内需要が伸び悩む中、国際物流は少しずつ増加する傾向にありますが、品質については日本も海外も変わりはありません。品質は日本の大きな強みだと考え、我々としても非常に気を付けているところです。さらにITの品質はサービスのレベルに直結するため、IT部門として良い意味での危機感を持っています。

──物流のアウトソーシングは活況だと聞きます。

 そうですね。お客さまのニーズに合わせてお客さま専用の物流システムとして提供する3PL(3rd Party Logistics)は、物流におけるコスト削減策として必ず検討の項目にあがることだと思います。システムとしては、WMS(Warehouse Management System:倉庫・在庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)、PO(受発注システム)などを組み合わせて、お客さまの物流のすべてをアウトソーシングするお手伝いをするわけです。

──個別のトピックとしては、RFID(ICタグ、ICラベル)の動向も気になります。

 日本通運では、かなり早くからRFIDに取り組んできており、倉庫の中の番地管理などで実際に使っていますね。ただ、RFIDというと出発地から到着地までの一連の利用を前提とした議論がなされることがありますが、まだそこまでは入っていません。米国の小売大手のウォルマートが納品を効率化していますが、生産から納品までの一連の管理下での運用は試行中の段階です。

──コストの問題でしょうか?

 コストの問題は大きいですね。さらにそれに加えて、私が思うのは標準化だと思います。ここがまだ未整備なので、日本でも課題になってくると思います。

 その点、EDIなんかは標準化が進み、垣根が低くなってきました。かつては各社独自のフォーマットを使っていたのが、流通BMSなどの取り組みを通じて、システムをつなぐハードルが下がったように思います。

CIOに求められることはリーダーシップと柔軟性


──御社の情報システム部門はもっぱら対外的な取り組みのみを中心に活動しているのでしょうか?

 私のいるIT推進部では対外的にお客さまへの提供するソリューションのほか、社内向けのシステムも管轄しています。全世界37か国、196都市に340拠点を支えるインフラの管理からサービスの企画など、バックボーンの構築も重要な要素です。

──非常に多岐にわたるお仕事を抱えてらっしゃる中で、情報システム部門長(以下、CIO)という立場に求められることは何だとお考えでしょうか?

 私が大切にしているのは、「リーダーシップ」と「柔軟性」です。最近のITプロジェクトはオープン化されていて、ひとつのプロジェクトに複数のベンダーさんやSIerさんが参加します。そうした状況でプロジェクトを成功させるためには特に「前向きな」リーダーシップが必要です。これは、プロジェクトマネジメント能力や、チームとしての的確な指示、各段階における的確な判断を行う力、と言ってもいいかもしれません。

 「前向きな」と申し上げたのは、プロジェクトチーム一丸となって目標に向かってやり遂げる意思を形成することを意味しています。プロであるベンダーさんやSIerさんの力を最大限に引き出していくうえで、合意形成やモチベーションの醸成は重要なことです。同じ1億円のプロジェクトでも、100%の力で頑張ってもらったプロジェクトと、チーム一丸となって120%の力を発揮した結果生まれたプロジェクトではまったく違います。

 もうひとつ挙げた柔軟性というのは、考え方における柔軟性です。今のような変化の激しい時代にITシステムを作っていく場合、数年先のことを100%見通すことは不可能です。ある程度の変化に対応できるバッファ(設計思想上)を持った設計をしておくことが重要ではないでしょうか。ビジネスが拡大すればそれに合わせて拡張でき、業界を取り巻く環境が変わればそれに対応できる余裕を持たせておく。具体的な手法は色々だと思いますが、そういった考え方を持ってシステムを構築していくことが大切だと思いますね。

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