柔軟性を失い、ビジネスの変化に対応できなくなってきた基幹系システム

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株式会社テックバイザージェイピー
代表
栗原 潔氏
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──海外企業とのグローバルな競争、コンプライアンスや四半期決算への対応など、企業を取り巻く経済的・法的な環境は厳しさを増しています。こうした状況について、どう捉えていますか。
栗原氏:言うまでないことですが、市場が右肩上がりの時代は終わりました。現在は、ゼロサムゲーム、場合によってはマイナスサムゲームの時代とさえ言えるでしょう。さらに、国内で競争力があっても、国際的な競争力がなければ、中国を初めとするアジアの企業にパイそのものを持って行かれる可能性もあります。法的にも、コンプライアンスの考え方が厳しくなり、企業の対応が問われています。
こうした状況に対応するためには、ITによる情報武装が不可欠です。ところが、従来的な基幹系システムは、堅牢性を重視するあまり、柔軟性を失っているように思えます。本来、経営の助けになるはずのシステムが、柔軟性が足りないため経営環境の変化についていけず、かえって経営の足かせになっているケースが多いのです
──とはいっても、基幹系システムにとって堅牢性はやはり重要な要素ではないでしょうか。
栗原氏:堅牢性を重視するメインフレーム的な発想が間違っているとは思いません。ただし、堅牢性を重視するあまり柔軟性が欠けてしまい、ビジネスの機会を逸してしまっては元も子もありません。現実に、ベストなソリューションを時間をかけて作るよりも、グッドイナフなソリューションを他社に先駆けて出す方が有利なケースが増えてきているのも事実です。大切なことは、堅牢性と柔軟性のバランスです。
重要なことはポートフォリオ的な発想とSOAによるシステム開発
──では、柔軟性と堅牢性を両立させ、いわゆる「攻めのIT」を実現するためには何が必要なのでしょうか。
栗原氏:最も大切なことはポートフォリオ的な発想でIT投資を行うことだと思います。攻めのITと守りのITを明確に分けて、メリハリのある投資をしましょう、ということですね。守りのIT投資であれば、独自性を出す必要はありませんから、グッドイナフな投資で十分です。場合によっては社外にアウトソースするという選択もあるでしょうし、将来的にはクラウドを利用するといったこともあるでしょう。一方、攻めのIT投資では、社内のリソースを積極的に投入して差別化していく必要があります。このようなポートフォリオ的な発想がないと、各プロジェクトに均等に予算を配分したり、経営環境が厳しくなったからといって、予算を均等に削減したりといったことになりがちです。
テクノロジー的にはSOAが重要です。SOAの本質は、テクノロジーの視点ではなく、ビジネスの視点からソフトウェアを部品化するところにあります。ビジネスプロセスの部品がソフトウェアの部品に対応するように設計・開発しておくことで、ビジネス上の変化があったとき、一からシステムを作り直すのではなく、部品の交換や作り直しで対応できます。
たとえば、商品を販売するシステムがあったとして、ユーザーインターフェイスとバックオフィスの処理を分けておけば、新たにインターネット販売のプロジェクトが立ち上がったとしても、ユーザーインターフェイスの部分だけ作れば、バックオフィスの部分はそのまま使えるわけです。
また、将来的には、SOAとSaaSが、相互補完的な関係になっていくことも考えられます。現在は、まだSOAとSaaSに直接的な関係はありませんが、コンシューマレベルでは、すでに決済処理だけSaaSによる別のシステムを使うといったことは行われていますから、いずれは基幹系システムの開発でも、部品だけをSaaSでアウトソースするといった可能性も十分あると思います。
基幹系、情報系、コラボレーション系のシステムの融合
──最近は「Enterprise 2.0」というキーワードも聞かれますが、基幹系システムとはどのような関係があるのでしょうか。
栗原氏:Enterprise 2.0は、ブログやSNS、ソーシャルブックマーク、RSSといったWeb2.0系のテクノロジーを企業内で使っていこうというコンセプトです。ですから、「企業内Web2.0」という言い方をする人もいます。その背景には、従来のナレッジマネジメントの仕組みが十分に機能してこなかったという反省があります。Webの世界では、実際に組織を超えて知のやりとりが行われていますし、Wikipediaのようなデータベースも作成されています。であれば、同じようなことが企業内でできてもおかしくないということですね。
今後は、Enterprise 2.0の仕組みが、ナレッジマネジメント革新の起爆剤になりうるだろうと思います。また、将来的には、基幹系システムがEnterprise 2.0の仕組みを取り入れることによって、基幹系システムの柔軟性をさらに増すことができると思います。
──基幹系システムは、将来、どのような形に進化していくのでしょうか。
栗原氏:基幹系システム、情報系システム、コラボレーション系システムは、従来は独立したシステムであったのが、これからは融合していくでしょう。たとえば、従来、情報系やデータウェアハウスのシステムに対し、リアルタイム性が求められることはあまりありませんでした。しかし、今では情報系システムでも1日遅れのデータでは不十分なケースが増えています。このように、基幹系と情報系は境界が不明瞭になってきています。
コラボレーション系に関しても、ビジネス・プロセスの過程において、必要に応じて、基幹系システムの情報を入力・発信することが当たり前になってくるなど、基幹系とコラボレーション系のシステムは、まったく別ものという従来の常識が常識でなくなってくる可能性は高いと思います。
──最後に、10月3日に開催される「WebOTX WORKS DAY〜ビジネスの成長に必須な基幹系システムの未来予想図 今とるべき対策とは?」でのご講演内容について簡単にお聞かせください。
栗原氏: 基幹系システムが硬直化し、ビジネスのニーズに応えられなくなっている。あるいは、業務の足手まといになっていると感じている方は多いと思います。だからといって、システムを一から作り直すのは非現実的です。当日の講演では、こうした問題を認識されている皆様に、現実的な解決方法を提案したいと思いますので、ぜひ、ご来場いただければと思います。