【2009年03月13日 12時00分 更新】

実用化に向けた課題

802.11vhtとは何か?無線LANの常識を覆す1Gbps超のワイヤレス規格がいよいよ始動【2分間Q&A(52)】

有線LANの世界では1Gbpsが当たり前となり、基幹LANは10Gbpsを用いる企業がほとんどになった。しかし、これらの帯域と比べると無線LANの帯域は狭く、有線LANと同じように使うことはできない。この問題を抜本的に解決する次世代無線LAN規格「IEEE802.11vht(IEEE 802.11ac/ad)」が仕様策定に向けて始動を開始した。この規格と実用化に向けた課題について解説していこう。

執筆:池田冬彦

802.11vht登場に至る歴史

 日本に初めて無線LANが登場したのは、イーサネット(10Base-T)が普及し始めた1993年のことだ。それから無線LANはさらなる高速化の道を歩み、最大リンクアップ速度が400Mbpsの802.11nのドラフト規格が事実上の標準として広く普及することになった(表1)。

表1 主な無線LANの規格
種別規格名名称周波数帯域最大リンク速度通信距離規格のポイント
無線LANIEEE802.11Wi-Fi2.4GHz2Mbps30〜60m1997年に規格化された無線LAN規格
IEEE802.11bWi-Fi2.4GHz11Mbps30〜60m古い無線LAN規格
IEEE802.11aWi-Fi5GHz54Mbps30〜60m802.11bと非互換の規格
IEEE802.11gWi-Fi2.4GHz54Mbps30〜60m802.11bと互換の規格
IEEE802.11nWi-Fi2.4/5GHz400Mbps30〜60m802.11bと互換の高速規格
IEEE802.11vht(IEEE 802.11ac/ad)Wi-Fi(未定)6GHz未満/60GHz1Gbps以上不明仕様策定中
※色付けされている規格名は実用化されているもの

 高速化が進んだとはいえ、無線LANはアクセスポイントと端末との距離や周囲のノイズ、接続するユーザー数や近隣の同一周波数帯の電波の影響によって、スループットがめまぐるしく上下する。そのため、有線LANよりもハンドリングが難しい側面がある。802.11n登場まで主流だった802.11a/gの最大リンクアップ速度は54Mbpsで、実質的な帯域は最大で20Mbps程度しかない。しかも、接続するユーザー数が増えればスループットはさらに下がる。

 802.11nの普及は、業界主導で進められ、標準化作業の舞台である「IEEE(電気電子学会)」の正式な標準化を待たずに製品が登場したが、その一因には無線LANの高速化を望む市場の強いニーズがあったためと思われる。802.11nは最大400Mbpsのリンクアップ速度であり、実効帯域はおよそ100Mbps前後だ。ようやく無線LANの世界はイーサネット(100Base-TX)レベルに達したと言える。だが、今では家庭、オフィスに広く普及した1000Base-Tと比べると、まだまだ十分な帯域とは言えない。特に、今後需要が高まる音声、ビデオデータの伝送には力不足だ。この問題を抜本的に解決する切り札が、次世代無線LAN規格「802.11vht」だ。

802.11vhtの標準化がいよいよ開始

 802.11vhtはギガビットWi-Fiとも呼ばれ、シングルリンク(接続)で500Mbps以上を達成させることを目標にしている規格だ。802.11nに採用されたMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術と同じく、マルチリンク技術を実装し、デュアルリンクで1Gbps以上を実現する。ちなみに、MIMOとは、複数のリンクを同時に使い、データを多重方式で伝送する技術のことだ(図1)。

MIMO技術

図1 MIMO技術
複数のアンテナを複数のリンクで結び、データを効率良く多重転送する


 既に超高速無線LANの研究は世界各国で数年前から本格化しており、さまざまな研究機関やハードウェアベンダーにおいて、数Gbpsのワイヤレスシステムの開発が進んでいる。日本においては、NICT(情報通信研究機構)が60GHz帯を使って3Gbpsもの高速な無線LANシステムの開発に成功している(図2)。

主要な無線システムの種類

図2 主要な無線システムの種類
60GHz帯を使うため電波の直進性が強く、安定して利用するには、複数のアンテナを切り替えて使う必要がある(本技術が802.11vhtに盛り込まれるかどうかは未定)。


 しかし、このような新しい無線LANシステムを普及させるためには、これまでの無線LAN規格と同様に、異なるベンダーの機器同士の相互接続性を実現することが鍵となる。この標準化の舞台となるIEEEにおいて、2008年に「Very High Throughput(VHT)Study Group」が設置され、本格的な研究活動が始動している。

 802.11vhtには、2つの規格が存在する。1つは、60GHz帯という極めて高い周波数を使った規格「802.11ad」と、もう1つは6GHz帯以下の電波を使う「802.11ac」だ。これらの研究グループには、米インテルやアセロスコミュニケーションズ、ブロードコム、ノーテルネットワークスなどの通信主要ベンダーが参加しており、2008年11月には802.111acの作業部会(ワーキンググループ)が承認された。802.11adについては、まもなく標準化活動が開始される模様だ。

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