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2009年07月27日

武蔵大学経済学部 准教授 黒岩健一郎氏

【市場志向型経営の構図 第11回】市場志向型経営の経営戦略

「あなたの会社の経営戦略とは、どんなものですか」と質問すると、中期経営計画の内容を詳しく説明してくれる経営者もいれば、「うちの会社の経営戦略は、経営戦略を作らないことです」という経営者もいる。「経営戦略」という言葉の捉え方は、経営者によってさまざまだ。今回は、市場志向型経営を実施していく上で、経営戦略をどのように捉えたらいいのかを考えてみよう。

執筆:黒岩健一郎

市場志向型経営の経営戦略の捉え方

 さて、市場志向型経営の経営戦略の捉え方は、どのアプローチなのだろうか。
市場情報に注目して経営を行うという点で、ポジショニングアプローチであることは間違いない。「市場情報を収集し、トップマネジメントが分析して計画を立て、それを社内に普及して、現場に実行させる」といったイメージを持つと、計画・ポジショニングアプローチではないかと考えるだろう。しかし、市場志向型経営は、情報生成・普及・反応のプロセスを1サイクルで完結とは考えていない。このサイクルを何度も回して、顧客ニーズのスイートスポットをつかんだり、市場の変化に素早く対応したりすることを想定している。それらは、共有された市場情報をもとに社内の各部門のミドルマネジメントが、横の連絡を密にとりながら行動していくことで達成される。つまり、市場志向型経営では、創発・ポジショニングアプローチで経営戦略を捉えているのである。

 したがって、トップマネジメントの役割は、市場情報の分析や意思決定よりも、ミドルマネジメントの活動が活性化するような仕組みづくりになる。市場志向の重要性を語り、市場情報を重視する組織文化を育むことや、市場情報を司る組織に予算配分をして、社内での存在感を高めるようにする。こういった後方支援活動が主な任務になるのである。

学習する組織

 市場志向型経営は、創発・ポジショニングアプローチで経営戦略を捉えているので、資源の蓄積は、最優先課題ではない。しかし、市場志向型経営では、知識の蓄積も行われる。市場情報の生成・普及・反応とは、情報処理プロセスであり、すなわち学習プロセスでもあるからだ。

 市場志向型経営を行う企業は、自社の行った活動に対する市場からのフィードバック情報で学習している。フィードバック情報から、実施した活動が成功だったと解釈すれば、前の活動が継続・強化され、失敗であれば活動方法を変更する。このような市場とのやり取りから、市場情報を生成する能力や活用する能力、すなわちマーケティング・リテラシーが高められていくのである。

 マーケティング・リテラシーは、組織内の個人に蓄積されるというよりは、組織そのものに蓄積されていく。社内規則や手続き、慣習、思考のフレームワークなどの形態で、教育や模倣、人事異動などを通して、組織の集合的な記憶に保存される。

 このような記憶によって、市場情報の解釈能力が増し、ますますマーケティング・リテラシーが高まる。プロ棋士が盤面を数秒見ただけで次の一手を導き出すように、市場情報の一部から将来の動向が予測できるようになるのである。

むすび

 市場志向型経営では、詳細な経営計画を予め策定するのではなく、市場情報に適応していくプロセスの中で、経営戦略が形成されていく。その競争優位は、環境への適応スピードであり、それを可能にさせる環境適応能力、すなわちマーケティング・リテラシーなのである。

【参考文献】
 嶋口・石井・黒岩・水越(2008)『マーケティング優良企業の条件 創造的適応への挑戦』日本経済新聞出版社

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