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2010年03月24日

【西田亮介氏インタビュー】新しい情報を発信するプロジェクト「.review」とは何か?

ネットツールを駆使しながら、新しい情報の発信を試みているプロジェクト「.review」。既存のメディアとも連携しながらチャレンジを続ける彼らの狙いや具体的な活動について、研究者としても活躍する西田亮介氏にうかがった。

Twitterから生まれたプロジェクト!?

――まずは「.review」についてお伺いします。これは西田さんが新しく作る雑誌の名前ということではないんですよね?

 西田氏■「.review」はプロジェクトの名称です。プロジェクト「.review」には、2つの大きな目的があります。1つは新しい書き手の発掘です。もう1つは「知」の流通形態を変え、新しいパス(関係性)を作りつつイノベーションを生み出すハブとなることです。かつては雑誌や、企業が発行する文化誌、そしてその編集者たちが、新しい書き手を発掘する役割をはたしていました。

 しかし、出版不況によって、雑誌の数が減ってしまいその結果、新人発掘よりも、定評ある書き手にあらゆる企画を任せるという事態が生じています。例えば、脳科学者が専門の脳に関する議論のみならず、旅行記からビジネス論まで取り扱うというありさまです。それはそれで読者にとっても出版社にとっても悪いことではないかもしれませんが、新しい書き手にとっては世に出にくい。しかし、とはいえ、ただ文句を言うだけでは、何も始まりません。ですので、僕たちは新人たち自身の手で、世間に知られるためのきっかけをつくっていく、ということを意図しています。

――この場合、「新しい書き手」とはどんな人をイメージされているのでしょうか?

 西田氏■セミプロや各分野の新しい世代の人たち、もしくは重要にも関わらずさまざまな事情で現在注目されていない人たちです。そこにスポットライトをあてていきたいと考えています。具体的には、若手の研究者や院生、物書き志望の人たちが該当するでしょう。たとえば、僕自身も博士課程に籍を置いている、研究者として修行中の身です。そうした現在進行形で成長している人たちのファーストステップとなる場所を作っていきたいわけです。また、今存在している「知」の流通の形態、パッケージングの形態、商品化の形態、コラボレーションの人選、これらすべての分野で新しいことを試みたい、もしくは、新しいパスを作っていき、新しいアイデアや企画の源泉になりたいと考えています。

 現状の本や雑誌、専門誌や学会誌、あるいはブログを読む以外にも、もっと知を入手するルートが多数あってもいいのではないでしょうか。そのために、できることなら何でもやろうと思っています。もしくは、できないことでさえ挑戦してみたい。たとえば、まだ「.review」は雑誌や書籍の形態のバージョンを作っていないのですが、一足先に書店でフェアをやってしまう。先に流通とコラボレーションしてしまうわけです。

photo

西田亮介氏

――となると、「.review」プロジェクトの着地点はまだ見えていない?

 西田氏■はい。というよりも、着地点はネットのインフラを利用する場合、考える必要さえないかもしれません。最近のWebの世界には「永遠のベータ版」という考え方もありますね。

 まず、現状としてWeb上に「.review」のサイトがあります。僕たちは「.review β」と読んでいますが、そこで、投稿されたアブストラクト(要約)や完成した原稿も基本的には無償で公開しています。今後テキストだけではなく動画やポッドキャストなども、新しいコンテンツとして付け加えていく予定です。

 もう1つは、雑誌や同人誌に近い形態の「.review Premium」です。これはテーマごとにコンテンツをパッケージ化して、基本的にダウンロード販売していきます。こちらでは集まってきている原稿だけではなく、すでに世の中的に価値のあるとされているコンテンツの作り手の方たちにも原稿を依頼しています。つまり、「.review Premium」は印刷すれば雑誌や書籍のような形態をとるコンテンツです。また、印刷したものを「文学フリマ」などで販売する予定です。そして、ほかには、先ほど少しお話した書店でのフェアやトークイベントなどにも積極的に取り組んでいきます。

――今までは書き手が世に出るためには、まず雑誌や書籍があり、出版社に原稿を持ち込んだり、賞に応募したり、編集者と知り合いになって仕事をもらう、という形がほとんどでした。それを変えてしまいたい、また別のルートを作りたい、ということですね?

 西田氏■はい。その通りです。

――「.review」プロジェクトはTwitterから始まっているそうですが?

 西田氏■まず、プロジェクトの概要とアブストラクトの募集についての告知をツイート(注1)したのが2010年の1月6日です。そこからいろいろな人たちにRT(注2)され、分野の垣根を越えて広まっていきました。
注1:Twitterに書き込みを投稿すること
注2:「ReTweet」の略。ほかの人による投稿を転載すること

 藤村龍至さんや李明善さん、浅子佳英さんといった建築クラスタの人たちや、ラジオ関係ではTBSラジオ『文科系トークラジオ Life』の長谷川裕プロデューサー、また、評論関係では評論家で小説家の東浩紀さんなど分野のゲートキーパーになってくれている方々をはじめとして、本当にたくさんの方々がRTしてくださいました。

 Twitterで僕をフォローしてくれている人には大学院生や研究者、その予備軍が多いのですが、告知から数時間のうちにアブストラクトが届き始めました。まだ告知から2カ月も経っていませんが、現時点でアブストラクトは140本以上届いています。

――「.review」がTwitterからスタートしたプロジェクトだというのは非常に現代的であるし、象徴的なエピソードでもあると思います。西田さんがこのプロジェクトを考えたとき、Twitterの存在というのは考えていたのでしょうか?

 西田氏■いえ、Twitterは告知のためのツールとして使うことを想定していたわけではなく、周囲に使っている人が多かったこともあって、無目的にハマっていただけです(笑)。でも、「.review」をはじめるときに、これは告知に使えるのではないかと、ふとひらめいて使ってみることにしました。そういう意味では、時流にうまく乗ったとも言えるでしょうね。結果的には、Twitterがアーリーアダプターから一般に認知され始めた、いいタイミングでTwitterを利用することができました。この、Twitterが一般的になってきた時期と、「.review」が展開していった時期が重なっています。

――仮の話をしても仕方ないのですが、もしTwitterがなかったら、ここまで「.review」が広まることもなかったと思いますか?

 西田氏■ちょっと苦しかったと思いますね。僕のブログのPV(ページビュー)が1日150程度なわけですから。Twitterがなければ、ここまで多くの人に認知されることはなかったと思います。

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