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  • 2010/06/08 掲載

【CIOインタビュー】クラウド化で次世代プロジェクト遂行支援システムを構築──日揮 丹治紀夫氏(後編)

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前編では、日揮のIT投資戦略についてお聞きしたが、後編ではますます競争が激化するプラント建設業界の動向を見据えた今後のIT投資動向について、現在同社が取り組んでいる新情報基盤戦略やクラウド化構想、ID管理の課題と今後のビジョンについて、お話しをお聞きした。

グローバル化に対応した新情報基盤

photo
日揮
エンジニアリング本部
情報技術部
部長 丹治紀夫氏
──日揮ではジョイントベンチャーなど、多くの企業の協力で遂行されると思います。その際、コミュニケーションやコラボレーションが重要になると思いますが、この部分はITを使用してどのように効率化されていますか?

 ジョイントベンチャーは海外で活発に行っています。プロジェクトチームが組成されたとき、基本的にリーダー企業が情報共有のためのシステムやプロジェクト管理システムを提供し、それを参加企業が使用するのが一般的です。昨今は、日揮の情報技術部主導でコラボレーションやコミュニケーションの仕組みを充実させることに注力し(前編図2を参照)、プロジェクトポータルやテレビ会議などを使用しています(参考リンク)。また、コミュニケーション&コラボレーション・ツールは全面改訂したものを今年8月にリリースする予定です(図4)。

 また、バックオフィスやITインフラは情報子会社の日揮情報システムがサポートしています。日揮情報システムはシステムの運用そのものを行い、そこで得られたノウハウを外部に展開しており、同社の売上の70%はグループ外への販売が占めています。

画像
図4 日揮の新情報基盤
──今後の事業についての展望とIT部門の役割についてお聞かせください。

 近く予定されているプロジェクトにフィリピンのバイオエタノール事業があります。当社は事業主として投資しますが、グループ企業がプラントを建設、EPCを担当するので、設計部門として応援が必要で、顧客としての顔とコントラクターとしての両方の顔を持つことになります。

 韓国勢もコスト競争力が高いのですが、次に中国が出てくることになるでしょう。もはや効率化だけでは勝てないので、従来型プラントはコスト競争力のあるフィリピンやインドネシアなどの海外子会社を、これまでの設計拠点としてだけでなく、EPCができるプロフィットセンターとして育成していきます。一方、日揮本体では大型で付加価値の高い将来の技術を使用する分野と、事業投資に注力していく計画です。

 IT部門はこうした性格の異なるプロジェクトを効率的に扱うため、次世代のプロジェクト遂行システムとしてプライベートクラウド化を図り、JGCグループ(日揮グループ)でサービスを享受できるような構想があります。現在のシステムは大型ジョブ向きなので、オプションを設けて、小型のジョブにも使いやすいようにする計画です。このような仕組みによりグループ全体のIT資産の縮小化を目指す計画です。システムのサポートは日揮情報システムのフィリピン子会社を中心にして行う予定です。というのも、ワールドワイドなサポートが必要になるので言語・ロケーション・コスト面などからフィリピンの会社を使うのが最も効率的だと考えたからです。  また、今後はさらに仮想化を進めていく方針で、運用コストやストレージの削減を目指します。

──バックオフィス系との連携はどのように考えていますか?

 日揮グループ全体のデータが連携され、一元的にプロジェクト状況や採算状況が把握できるのが理想ですが、同一システムを適用することは困難です。そのための第1ステップとして、日揮情報システムが中心となり、グループ企業用に標準で適用する会計系のソフトウェアの選定と展開を推進しているところです。ID体系の見直しを含めてグループ全体の人材情報のマスター化も図っていきたいと考えています。

──IT投資に際して、どのような評価基準をお持ちでしょうか?

 実は明確な基準はありません。KPIをどれにするかは非常に難しい問題で、同じような立場の皆さんも困っているという声を聞きます。ITがその企業の売上に直結する企業であれば、ITのKPIを設定するのは容易ですが、当社のようにプロジェクトをITが支えている場合は簡単にはいかない面があります。とはいえ、基本的にはシステムのジョブ適用数が1つの評価基準になります。

 ただ、システムは独立しているのでなく、仕事のなかに位置づけられているので、ITがなければ業務が進まないことは確かです。とはいえ、定型業務を超えた新しいチャレンジに対して投資効果を測るのは難しいですね。あえて言えば、時間あたりの生産性となりますが…。

 我々のお客さま、とくにオイルメジャー系のお客さまの要求は、常に時代の先端を走っており、これらの要求に応えるため、ITに投資せざるを得ないケースが多々あります。このような外圧により我々のITは進化していっているといっても過言ではありません。ある意味、我々のITはお客さまに育てていただいていると言えるかもしれません。

【次ページ】1度はIT部門を経験して欲しい

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