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  • 【合同会社コンテクチュアズ インタビュー】『思想地図bis』が打ち出すビジョン

  • 2010/06/30 掲載

【合同会社コンテクチュアズ インタビュー】『思想地図bis』が打ち出すビジョン

東 浩紀氏、村上裕一氏、李 明喜氏、浅子佳英氏インタビュー

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2010年6月5日、「ニコニコ生放送」の番組「東浩紀とニコニコ生編集!~思想地図bis編集会議×新批評研究会~」にて、批評家の東 浩紀氏が主宰する私設研究会がリアルタイム配信された。中継されたのは、東氏が中心になって立ち上げた「合同会社コンテクチュアズ」から創刊される予定の新思想雑誌『思想地図bis』の誌面企画に関係する2つのプレゼンテーションと討論。公開シンポジウムと新創刊誌の編集会議の性格を併せ持つという、前代未聞の試みだ。2010年代の思想・批評を牽引すべく、コンテクチュアズが『思想地図bis』に期するものとは? イベント直後の熱気の中で、東氏以下、同社メンバーであるインテリアデザイナーの浅子佳英氏、空間ディレクターの李 明喜氏、批評家の村上裕一氏の4名にお話を伺った。

「新批評研究会」から「コンテクチュアズ」へ

――先ほどの「ニコニコ生放送」の番組「東浩紀とニコニコ生編集!~思想地図bis編集会議×新批評研究会~」、大変お疲れさまでした。読者に向けて、改めて今回の試みの概要と反響をお聞かせいただけますか?

 東 浩紀氏(以下、東氏)■今回のイベントは、僕が以前から2か月に一度くらいのペースで開いていた「新批評研究会」という、若い書き手に思想・批評系のテーマでの発表をさせる定例会の特別編という位置付けでした。とくに今回は、僕たちが今年晩秋に刊行を予定している『思想地図bis』の誌面向けに準備している企画のプレゼンをして、宇野常寛さんや市川真人さんといったベテランの書き手や編集者に意見をもらうという、編集会議を兼ねた形で行ったと。発表のテーマは「ショッピングモーライゼーション」と「MMD――生成力の最前線」の2つで、ここにいるメンバーがそれぞれ担当したというわけです。

 李 明喜氏(以下、李氏)■はい、第1部の「ショッピングモーライゼーション」は、ライター・編集者の速水健朗さんと浅子さんと僕の3人で共同発表しました。これは要するに、ゼロ年代の日本では「郊外化」を経て、今全国に巨大なショッピングモールが次々と出現して各地の風景を変えているわけですが、そこには従来の都市論を越える新たなパターン生成の原理や公共性が見出せるのではないか、という議論です。

 村上裕一氏(以下、村上氏)■第2部「MMD――生成力の最前線」は、僕が昨年「東浩紀のゼロアカ道場」で競った坂上秋成さんと峰尾俊彦さん、それにプログラマーのtokadaさんの4人での共同発表です。こちらの方は、「MikuMikuDance(MMD)」という、「初音ミク」などのキャラクターにダンスをさせられる3Dムービーの作成ツールがプラットフォームとして普及することによって、ニコニコ動画などのネットサービス上で独特のコンテンツとコミュニケーションが生成している事態を、いろいろな側面から考えてみたという話ですね。

photo
東 浩紀氏
 東氏■で、イベントの手応えですが、放送中から大変な反響で、PV累計が1万5,000人くらい集まりました。後で説明しますが、番組で告知した「コンテクチュアズ友の会」への入会希望もすでに200人近く殺到しています。これは本当に凄いことで、土曜日の昼間にこういうタイプのコンテンツを数千人が観てるというのは、数年前では考えられないことでした。単に『思想地図bis』一誌に対する期待ということではなくて、世の中の言論に対するニーズの高まりを象徴していると思います。時代が新しい節目を迎えている感じがします。

――イベントの母体となった「新批評研究会」の概要と、「合同会社コンテクチュアズ」との関係について教えていただけますか?

 浅子佳英氏(以下、浅子氏)■新批評研究会は、2009年の春から始まっています。きっかけとしては、ちょうど「ゼロアカ道場」の第五次関門を経て突破者が絞られていく段階になったときに、せっかく新しい書き手候補のネットワークができたのだから、NHK出版から刊行されていた第1期の『思想地図』でデビューした黒瀬陽平さんとか入江哲朗さんといった人たちを集めて、若い人たちが発表する機会を定期会の形で作ろうということでした。僕自身も、この研究会の立ち上げから参加させていただいて、発表の機会をいただきましたし。ここに、例えば宇野さんの紹介で加わった李さんをはじめ、参加者の紹介で次々と新しい人脈が生まれて、コンテクチュアズのメンバーが集まりました。ですから、事実上この新批評研究会がコンテクチュアズの母体だったわけです。

 東氏■もちろん、初めから出版社を立ち上げようという目的があったわけではなく、いろいろ面白い人が集まるサロンになればいいなというくらいの気持ちだったんです。ただ、僕は前々から、出版社に新人を育てる機能がなくなっているのが問題だと思っていたので、この会には出版社横断的な新人発掘機能を持たせたかった。批評家が研究会を運営するというと、どこか出版社の会議室でというのが多いのですが、もしこれが特定の出版社が後見する会だったら、やはり成果はその出版社で、ということになってしまうと思うんですね。しかし、そうではない自由な場が欲しかった。むろん大学の研究会とも違う在野の場として。とにかく、若い面白い人と出会え自分も刺激を受けられる場がなかなか存在しないので、自分で作るしかないと思って始めたんです。

――そこに参加した若い村上さんの立場からは、新批評研の存在はどんなふうに見えていたんですか?

 村上氏■今って、例えば文学でも新人賞の意義が失墜していて、運良く受賞してもその後何のケアもなく消えていくような世界になっていて、全然人材が継続的に育たなくなっていますよね。あるいは学閥みたいなものもないし、若者が一緒に戦う仲間とか組織的な連帯を得られずに孤独になってる時代だと思います。新批評研究会は、まったくそれとは別の論理で動いていて、ほとんど口コミと人づてのみで新しい才能とかやる気のある奴が集って、才能を覚醒させたり努力を触発される場になっているんじゃないでしょうか。実際、20代半ばの若い奴らがこれだけ集まって真剣勝負の機会を持てる文筆関係のサロン的なものは、なかなかほかにないと思います。ジャンルの分かれ方にしても、例えば社会政策系の西田亮介さんとネットサービス研究の濱野智史さんと現代美術の黒瀬陽平さんが一緒にいるという空間はとても貴重だと思いますし、そこにサブカルチャーに傾倒した僕たち「ゼロアカ」出身者が入るのもとても不思議な話で、そういう場こそが若い人が世に出てくるために必須なんじゃないかと思いますね。

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