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  • 2010/09/01 掲載

中堅・中小企業のシステム担当者が心掛けるべき4か条:中堅・中小企業市場の解体新書(19)

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金科玉条のように言われてきた「企業の情報システム部門は“本来の仕事”をすべきだ」という主張、これは企業のIT担当者が、企業の本業に直結するITシステムを提案、構築することに専念すべき、という意味で使われている言葉である。しかし、兼業で定型化した業務をこなすことが責務と思っている中堅・中小企業の情報システム部門担当者に、売上や収益に直結するようなITシステムの設計や構築を委ねても、極めてハードルが高いと言えるだろう。今回は、こうした中堅・中小企業のIT運用でヒントになる4か条をご紹介したい。

ノークリサーチ 伊嶋謙二

ノークリサーチ 伊嶋謙二

ノークリサーチ 代表取締役社長
ノークリサーチ代表。大手市場調査会社を経て,98年にノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。



第1条 部分最適で安さを基準に購入先を変えるべきでない

 企業にとって、コスト削減は非常に重要なスローガンとして掲げてでも取り組まなくてはならないことに異論はない。その場合、経費削減のためにまず行うのは安い製品、サービスの選定だろう。

 個別の製品、サービス単位であれば、安さを軸に最適な購入を考えること自体に問題はない。しかし、購入後の運用面までを考えた場合、そこには安さ以上に重要な要件が存在する。また、ITのようにネットワーク上で絡み合い、互換性や標準化などが輻輳(ふくそう)する要素を含む場合は、ネットワークの運用管理、クライアントサポートなどのルーチン業務だけでも相当な仕事量となる。

 部分最適はわかりやすく心地よいが、部分最適に偏重すると、その数だけ情報システム部門はその後のサポート作業を抱えることになり、結果的にITではないコスト(人件費)として跳ね返ってくることになるだろう。

 ITサービスベンダーから営業トークを聞くと、必ずどこかで価格をお題目に掲げる行為にあたるだろう。同じ機能、内容、サービスレベルならば安いほうが良いという心理的な欲求にアピールする営業だ。

 具体的な営業電話はこうだ。「ファイルサーバを預かるサービスはいかがでしょうか?安いし、安全です」、「電話回線が今ご利用になっているものよりもお安くする、リセールサービスはいかがでしょうか?」などなど、いきなり電話がかかってきて、飛び込み営業を希望することも多くなっている。これらは確かに安いのかもしれないが、全体最適の視点はなく、業務や利用している特定のサービスや機器などを今よりも安く提供する、という単純なセールスである。

 確かに単一の製品やサービスだけを見ればコストは安くなるだろう。ところが、企業全体では、業務システムはメーカー系販売店から、電話回線は固定と携帯で異なるキャリアから、事務機は別の販売店、保守はまた別のサービス会社、Webサイトはホスティング会社、とそれぞれ安いからといってまったく別々の業者に委託していたのでは、全体として統治、把握するのは相当に困難になる。しかも扱い業者が今後もきちんとサポートしてくれるかどうかの保証もないし、数が多くなればそのリスクも増すことになる。中堅・中小企業の少ない情報システム部門が、こうした煩雑な業務を担う負担は相当に大きいはずだ。

 その意味でも、部分最適で安さのみを基準に購入先を変えるべきでないだろうし、情報システム部門は全体最適の視点を持つ必要があるだろう。

第2条 少ない人数で運用する意味を理解する

 企業の人材は大きく2つに分けられる。1つが現場部門で、もう1つはスタッフ部門だ。そして多くの企業では、利益をあげる現場部門を少数のスタッフ部門が支える(ここでのスタッフ部門とは総務、経理、人事などが想定する)。

 業務部門に与えられるミッションは、正しく、早く、的確に定型化された業務を遂行することである。販売管理などの伝票発行、売掛金の回収処理、在庫の把握、財務処理のための月次決算情報の作成、社員の給与振り込み、人事情報の更新、把握などを行う。

 ITはかつてのO/A(オフィスオートメーション)化の流れの中で、主にこのスタッフ部門の業務のサポートのために用いられてきた。現状ももちろん業務システムは不可欠なツールとして活用されている。ただし、小さな企業ほど役割や機能、組織は未分化であり、兼任になっている。ひとりで複数の業務を行うことが常態であり、●●担当という機能別の人員配置にはなっていない。つまり絶対的なスタッフ不足の小規模な組織、企業において、職能別の人員を持つこと自体が難しい。いわんや専門の情報システム部門を持っていない小規模企業において、その専任の担当者を持つことが大変なことは言うまでもない。

 こうした問題を解決するうえで、今クラウド・SaaSに期待が集まっている。実際の効果がどうかはまだ実績が少ないため、検証されていないが、IT投資の削減効果は高いとみられているが落とし穴もある。

 確かにサーバやアプリケーションを購入して、作りこんだシステムを自前で運用管理するのはコストも人的な労力はそれなりに必要になる。

 しかし、だからこそ当然コストは必要なものとみなされる。一方で、クラウド・SaaSでは、コスト削減と同時に、情報システム部門自らが対応するべき負担は増す可能性がある。

 第1条でも述べたが、少ない人数で情報システムを管理、統括することを考えれば、単純にコスト面だけを考慮してITシステムを導入するのは細心の注意が必要となる点はクラウドを活用する際も肝に銘じておくべきだろう。

【次ページ】システム担当者が心掛けるべき第3条、第4条

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