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2010年09月16日

【CIOインタビュー:東京証券取引所グループ 鈴木義伯氏】4年間で大きく変わったミッション、CIOに求められる変化への対応力(前編)

日本で最大の金融商品取引所である東京証券取引所。ニューヨーク証券取引所、ロンドン証券取引所と並んで「世界三大市場」と称され、文字どおり世界経済の中枢を担うが、昨今は新興国の台頭や日本経済の停滞に伴い、そのプレゼンスが希薄化しているという指摘もある。こうした現状を懸念し、就任当時から危機感を持ってITの面で企業改革に取り組んでいるのが東京証券取引所 専務取締役(CIO)の鈴木義伯氏だ。グローバル化対応とIT改革の現状、そして今後の課題やIT投資動向について、鈴木氏に伺った。

ITの使い方1つ、工夫1つで、ビジネスが決まる

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東京証券取引所グループ
専務執行役 最高情報責任者(CIO)
鈴木義伯 氏

──まず、東京証券取引所という企業としての事業概要についてお教えください。

 東京証券取引所は、会社が発行した株式を市場を介して流通させることで、フェアバリュー(企業の適正価値)を発見し、成長産業への適正な資金配分に貢献する企業(株式会社)です。また、これらを維持するために、上場された株式に関する情報の開示や不公正な売買の排除に積極的に取り組み、信頼性の高いマーケットを提供しています。

──公共性の高いサービスだと思いますが、証券取引所という事業には顧客や競合などは存在しているのでしょうか。

 以前は、株券を売りたい人と買いたい人が1つの「場」に実際に集まって、取引をしていました。いわゆる“場立ち”です。つまり、「場」に参加される方々が我々にとってのお客さまですね。現在では、その「場」がコンピュータ上に形成されています。また、IT化に伴って、取引に参加する個人投資家の皆さまやファンドマネジャーの方々が、世界各地の証券取引所で売買できるようになりました。そのため、どの取引所で売買を行うのかを選択できるようになり、取引所のサービスの質が問われるようになってきています。実際に、東証での取引の半分以上は海外投資家によるものです。

──まさに、ITがビジネスそのものですね。

 そのとおりです。ITの使い方1つ、工夫1つによって、存在意義が決まるといっても過言ではありません。従来は、取引所に上場されている株式の質、時価総額、出来高で評価されてきたのですが、現在はそれに加え、取引システムの高速性、信頼性も、取引所を評価する尺度になってきました。

CIOというポジションの創設とその意義

──2006年、外部からCIOに就任されていますね。その経緯についてお聞かせいただけますか。

 東証は、2005年末から2006年の頭にかけて、大きく3つのシステムトラブルを起こして、市場関係者にご迷惑をおかけしました。それで体制を立て直さなければいけないというので、当時の西室社長が、NTTグループに対して「CIOを出してくれ」と要請し、私がCIOに就任することになりました。

──それまで、東証にCIOはおられたのでしょうか。

 CIOというポジションはありませんでした。もともとの話をすると、東証は10年前には既にすべてのシステムをITに置き換えるという決断をしており、ITへの依存度というのはかなり高くなっていました。今から振り返れば、それに合わせた体制づくりを行うべきだったのですが、当時はそれでも問題はありませんでした。というのも、いわゆる“ITバブルの崩壊”で日本の株式市場も沈滞しており、積極的な投資は行われず、ITを高度化させたり、競争力をつけるといったことがあまり求められていませんでした。

 ところが、2004年から2005年頃から日本経済が活況になるとともに、個人投資家がインターネット環境を使って自分のパソコンから売買注文発注して、ほぼリアルタイムでトレーディングシステムに注文を出すという状況になりました。すると、少し市場が動くと、一斉に注文が出されて、その時間集中率が非常に高くなります。必然的に、それをさばくコンピュータには高い処理能力が必要になります。市場が沈滞していたころは目立たなかったのですが、市場が活性化したことで、瞬間的なトラフィックは加速度的に増え、それがシステムのボトルネックの誘発につながってしまったのです。

 とはいえ、システムをいきなり刷新することはできません。そこで急いで増設したのですが、間に合わずキャパシティ・オーバーでシステムを停止させたり、ソフトをキャパシティ対応のために改修する過程でエラーを起こす、そういった問題で悪循環を起こしてしまいました。

 東証のIT高度化が停滞している間に、東証の「外」のITは大きな変化を遂げており、そのスピード感に完全に後れをとっていたのです。こうした課題を克服するには、きちんとマネジメントする人間が必要で、CIOという立場の人間を用意することになったのです。

【次ページ】業務部門がITを見ることの難しさ

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