1分:巷にあふれる「無自覚のビジネスアナリシス」
最近、まったく異なる分野の商品やサービスを組み合わせて、従来では考えられなかった新しいサービスや製品を生み出し、大ヒットを飛ばす事例が増えている。こうしたものの中にはITの発展によって実現されたものも多く、既存の考え方だけではとても生まれそうにないサービスも多い。
筆者から見ると、これらの事例はまさに「ビジネスアナリシス」によって、もたらされたものに他ならない。
しかし、当事者の方々はビジネスアナリシスという言葉すらご存じないかもしれない。たとえ言葉は知っていたとしても、その意味を理解し、明確にそれに従って実行されたかどうかは不明だ。こうしたケースを筆者は「無自覚のビジネスアナリシス」と呼んでいる。ビジネスアナリシスや、本連載でご紹介するBABOKを知らずに、「試行錯誤を繰り返しながら成功に至った」ケースのことである。
各々の事例は一見、お互いの関連が何もなく、一定の法則に則っているわけでもない。そのため、成功を導くために、試行錯誤を繰り返し、成功へと導かれたのではないかと思う。
しかし、もし共通のメソドロジーや知識体系が存在すればどうだろうか?成功を何度も繰り返すことが可能になるかもしれない。少なくとも成功へと近づく道のりは短くすることができるだろう。
成功事例の羅列は、同じ業界の企業の刺激剤にはなるだろうが、主要成功要因(クリティカルサクセスファクター)の抽出にまでには至っていなければ、なかなか「再利用」できないのである。
そこで、注目を集めているのが、ビジネスアナリシス、およびその知識体系であるBABOKである。ビジネスアナリシスとBABOKをしっかり身に付けることができれば、よりシステマチックにビジネスニーズからソリューションの定義(要求定義)まで、モレやムダなく、さらに効率よく新しいビジネスを具現化できる。
加えて言えば、今ユーザー企業において、CIOや情報システム部門に求められていることは、ビジネスに貢献するITの創出である。そのための方法論として有効なのがビジネスアナリシスということになるのである。
2分:ビジネスアナリシスとは何か
では、このビジネスアナリシスについてもう少し詳しくみていこう。端的に言うと、ビジネスアナリシスとは、ビジネスを成功に導くために必要なタスクやテクニックを集めたものである。具体的には下記の4つがポイントになる。
- 組織のゴール(および目標)を明確にし、ビジネスニーズを定義すること
- ステークホルダー(利害関係者)の真のニーズを引き出すことの責任をもつこと
- ソリューションを定義し、それを開発側に伝えること
- ソリューション構築後に、その妥当性を確認すること
ビジネスアナリシスは、ITの世界で「超上流工程」とか「経営とITとの架け橋」などと言われる。つまり、ビジネス(業務)とITの両方に精通している人材が行う仕事、まさに日本の情報システム部門に求められている仕事である。
念のために申し上げておくと、ビジネスアナリシスはもちろんITに限ったものではない。実際、IT以外にも、組織のゴールを達成する手段はいくつもある。しかし、現実にはあまりにも多くの選択肢があり、さらにその選択肢の網羅性が担保されているかどうか、といったことはなかなか把握しきれないものだ。こうした数ある選択肢の中から、要求を具体化することで、絞り込むためのスキルがビジネスアナリシスで、それを実行するのがビジネスアナリストだと言えるだろう。
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