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2010年09月27日

【米国レポ特別編】異例なほど不確かな経済情勢とIT投資の確かな動き:篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(22)

リーマン・ショックによるグローバルな経済の混乱からちょうど2年が経過した。ITによる「仕組みの見直し」について議論を深める前に、今回は特別編として、不透明感がなかなか払拭できない今の経済情勢の中でIT投資にどのような動きがみられるか、経済危機の震源地となった米国の現地調査(注1)もふまえながら取り上げてみよう。

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠ア彰彦

異例なほど不確かな経済見通し

 この連載は、リーマン・ショックによって、グローバル経済が大波乱となる中で始まったが(キックオフの特別インタビューは2008年9月25日掲載)、あれから2年が経過した現在も、景気の見通しには不透明感が漂っている。今年7月には、グリーンスパンの後任者であるバーナンキFRB議長が、「米国経済は今も異例なほど不確かな状況にある(the economic outlook remains unusually uncertain)」と議会で証言したほどだ(注2)。

 米国のGDP成長率を四半期でみると、2009年7-9月期に5四半期ぶりに増加に転じ、10-12月期には年率換算(以下同)で5.0%成長に加速したが、2010年に入ってからは、1-3月期は3.7%、4-6月期は1.6%と減速感が強まっている。さすがに、垂直落下(フリー・フォール)と呼ばれるほどの急激な落ち込みからは立ち直ったものの、底這いの状況が続いており、持続的な反転上昇の軌道には乗りきれていないようだ。好景気に沸いた10年前には4%を切ったこともある失業率が、現在は10%近い水準で高止まりしており、2年前と比べても3.5%ポイント悪化した状況にある。

 このように依然として厳しい経済環境が続く中で、かすかに希望の動きも観察される。そのひとつが民間企業設備投資(Private Nonresidential Fixed Investment)の回復だ。企業部門の設備投資は、2008年4-6月期以降7四半期連続でマイナスとなっていたが、GDP成長率の減速とは対照的に、2010年に入ってから増勢に転じ、4-6月期には17.6%増となった(図表1)。もちろん、消費とは異なり、投資の動きはかなり変動が大きいため、四半期ごとの数値はある程度幅を持って読み取る必要があるだろう。そこで、設備投資の中身を慎重に吟味してみると、2009年4-6月期から5四半期連続で二桁程度の増加を続けている項目があることに気がつく。それがIT投資だ(Information processing equipment and software)。

図表1 米国経済の動向(GDP主要項目)
(年率%)
2007200820092010
 IIIIIIIVIIIIIIIVIIIIIIIVIII
GDP0.9 3.2 2.3 2.9 -0.7 0.6 -4.0 -6.8 -4.9 -0.7 1.6 5.0 3.7 1.6
個人消費2.4 1.5 1.7 1.4 -0.8 0.1 -3.5 -3.3 -0.5 -1.6 2.0 0.9 1.9 2.0
設備投資6.8 11.1 9.4 5.7 2.0 -1.6 -8.6 -22.7 -35.2 -7.5 -1.7 -1.4 7.8 17.6
(IT投資)(18.2)(2.7)(8.5)(16.9)(9.6)(6.0)(-5.3)(-13.2)(-6.7)(10.4)(14.7)(22.4)(8.4)(15.1)
住宅投資-16.4 -12.0 -24.1 -29.3 -27.9 -14.0 -22.6 -32.6 -36.2 -19.7 10.6 -0.8 -12.3 27.2
(資料)U.S. Department of Commerce, NIPA Tableより筆者作成。


【次ページ】IT投資の回復は続くか

注1 2010年9月3日から13日にかけて、ボストンおよびニューヨークで実施した現地調査(Conference Board, ITeconomy Advisor’s Inc., Northeastern University, CITI Investment Researchなどでのディスカッション)に基づくが、本稿で判断に関する部分は筆者の個人的な見解である。
注2 Bernanke (2010)参照。

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