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2011年02月24日

父が息子に贈るコンサルティング講座(1)〜「説得の設計-1」親父、母さんの説得を試みる

僕は、リビングのソファーに座って、腕組みをしていた。このままだと、例の企画は進まなくなる。やっと念願がかなって、コンサルティング・グループのチームリーダーになれたのだ。何とかしなければならない。

執筆:アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

これまでの連載

「説得の設計」


「なんだ、啓太。まだ起きていたのか」

 親父が、風呂上がりの濡れた頭をバスタオルで拭きながら、リビングに入ってきた。冷蔵庫からビールを取ると、向かいのソファーにドカンと座った。50をとうに過ぎているのに運動マニアで、今でも週2日のジム通いを欠かさない。まるで、プロレスラーのような体をしている。名前は、吉川寅蔵という。僕は、これだけ名前と外見が一致している人物を、他に知らない。

「もう寝るところだよ」

 ここでつかまると、しばらく話は終わらない。

「新しい企画、うまく進んでないんだろう」

 なぜわかる?親父は、時々鋭く僕の心を読む。その時だけは、母親に頭が上がらないダメ親父も、経営コンサルタント会社を率いるトップコンサルタントの顔になる。僕は、立ち上がりかけた体を、もう一度ソファーに沈めた。仕事のことで親父に相談して、うまくいく確率は6割というところだ。

「話してみろ」

 こういう時の親父の声には、有無を言わさない迫力がある。僕は、観念した。

「営業関連のシステムのフェーズ2の企画なんだけど、フェーズ1で作ったシステムが一部のユーザーでしか使われていない。効果のあるシステムなんだけど、ちょっと社内のごたごたもあってね。このままフェーズ2の提案をしても、事業部長は認めてくれない」

 僕は、ハイテクメーカーの情報システム部に在籍している。今回の人事で、コンサルティング・グループの、A事業部担当チームのリーダーになった。30そこそこでリーダーになったのは、同期の中でも早いほうだ。そしたら、リーダーとしての初仕事で、いきなり引っかかってしまった。

「効果があるシステムと、どうして言い切れる」

 親父は、例によって、話の裏を取ろうとする。

「A事業部の営業部は5つある。フェーズ1のシステムは、営業1部の部長が中心となって開発した。営業1部では、このシステムを使って、他の営業部よりも営業成績を伸ばしている。だけど、営業1部の部長はまだ若くて、他の営業部はやっかみ半分、このシステムを使ってないんだ」

「では、説得の設計だな」

 「説得の設計」という言葉に、僕はビビッときた。自分に今必要なものを、言い当てられた感じだ。

「なんだよ、説得の設計って」

 親父の、コンサルティング・テクニック講座が始まった。

【次ページ】「説得の設計」とは?

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