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  • 2011/03/17 掲載

【対談インタビュー】CIOに聞く情報システム部門の自己改革<第7回>協和発酵キリン 中山嘉之氏

CIO・システム部長に聞く、対談インタビュー連載

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ユーザー部門の業務改革を期待される情報システム部門の中には、自部門の改革も着実に進めているところがある。彼らは、どのような自己改革を成し遂げたのだろうか。本連載では、情報システム部門のトップに自ら語っていただこう。第7回は、協和発酵キリン 情報システム部長の中山嘉之氏に話をうかがった。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

大手コンサルティング会社を経て、現職。
製造業、情報サービス業などの、事業戦略、IT戦略、新規事業開発、業務革新、人材育成に関わるコンサルティングを行っている。
公益財団法人 大隅基礎科学創成財団 理事。
関連著書『正しい質問』アマゾン、『イノベーションのリアル』ビジネス+IT、『ダイレクト・コミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる 研究開発革新』日刊工業新聞、等

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

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 協和発酵キリンでは、データ中心型アプローチやリフォーマブルシステムといった、「基本的な考え方」を大切にした組織運営を行っている。ブレずに基本を維持することで、システムのコストパフォーマンスを高めるのだ。システム部門の自己改革でも、部員に基本的な考え方を徹底している。これによって部門の能力を向上させ、提供価値を高めている。

基本を徹底することでコストパフォーマンスを高める


 協和発酵キリンは、世の中にERPが現れた頃に、情報システム部門の役割を議論した。そして、「実装独立」の考え方に基づき、実装は外部に委託しても、情報資源管理は社内で推進することを決めている。その後、データ管理グループを作り、組織的に情報資源管理を進めてきた。

 これによって、たとえばERPの導入では、ビッグバン方式を行わず、マスターを自社で維持管理し、必要なプロセスに適材適所のパッケージを採用している。データ管理という基本を徹底していれば、ビッグバンでなくても、複数のERPを用いても、確実なデータ連携ができる。その結果、自社の強みがシステムに組み入れられている場合、それを捨ててまでパッケージに合わせるということをせず、強みを活かしたシステム化を進めている。またM&Aでは、現場システムの統合において、マスターとデータ定義を明確化していることで、早期統合を実現している。現在は、トランザクションとマスターを統合したエンタープライズハブを構築し、すべてのアプリケーションが、このハブを通してつながるようにしている。

 今後のクラウド化でも、インターフェイスの疎密やデータの意味を明確に定義しているため、疎結合中心のクラウドを、広く、データの整合性を維持しながら活用することができる。

 これからは、作り上げたシステムの的確な運用の時期にきている。ここでも、運用品質という基本的な考え方を進めている。ここで言う運用品質には、マスターのコンテンツの品質まで含んでいる。マスターの中にごみが入らないように、コンテンツの品質が維持できるような仕組みを確立していく。これによって、作ったシステムを長く安定的に使い、本当に変える必要があるプロセスのみ置き換える「リフォーマブル」なシステムを作り上げることができる。この場合、ハードはクラウドで対応することで、老朽化のリスクをコントロールし、さらにコストパフォーマンスを高めようとしている。

基本的な考え方の徹底によってシステム部門の自己改革を進める

システム部門の自己改革でも、基本的な考え方の徹底を重視している。中山部長は、部長就任以来、月に2回、1回2.5~3時間かけて、マネージャーやリーダーを集めた「開発会議」を推進している。すでに140回以上開催している。この会議は、プロジェクトの進捗や高額案件の審議の場であるが、この中で中山部長は、基本的な考え方を何度も何度も繰り返し、部員に伝えている。ここで伝える基本的な考え方とは、たとえば以下である。

1. アーキテクトたれ
やっつけ仕事でシステムは作らない。永続性のある資産としてシステムを完成させよ。最初からスパゲティー状態など、もってのほか。システムは自分の作品と考え、自信が持てるようになるまで、アーキテクチャーの完成度を高めよ。

2. ベンダーに中立になれ
新規案件は、ベンダー選定ルールにのっとり、厳格に評価して決めよ。有名な会社だから、などという理由は許されない。そのために重要なことの1つは、RFP。RFPがよくなければ、良い提案は得られない。そのために、Whatを書く。Howは書かない。Howでプロに勝てるわけがない。良い提案を引き出せ。そのために、何をすべきか、Whatを追求せよ。

3. 要求は開発せよ
ユーザーの要求を、そのまま要件にしてはならない。ユーザーはシステム化の素人。要望を聞き、これにITのシーズを組み合わせ、イノベーションを起こせ。要求は、開発するもの、創造するものだ。そのために、常にITを学べ。そしてユーザーにHowは聞くな。Whatを追求せよ。

4. 既得権益と戦え。しかし使ってもらえるシステムを作れ
ビジネスに貢献するシステム化のためには、ユーザーに迎合してはならない。個別最適や既得権益を打破し、企業全体としての価値を高めなければならない。かといって、使われないシステムでは、何の意味もない。ユーザーの現場が使ってくれるシステムを作れ。そのためには、必要ならユーザーにNoと言え。「それではビジネスに貢献しない」と。経営者にも、必要ならNoと言え。「それでは誰も使いません」と。


 中山部長は、部下の説明が上記の基本的な考え方を守っていなければ、たとえ成功しても厳しく指導する。また、結果が出なくても、この考え方を実践すれば褒める。これを繰り返すことで、部員の考え方を変え、気を許すと陥りがちな問題が発生しないようにし、情報システム部の能力、提供価値を高めている。

 では、次ページより、中山部長との対談インタビューの全体を紹介しよう。

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