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2011年09月22日

スマートフォンの特許戦争を理解する(1)

特許・意匠・商標の違い、5分で理解する知財の基礎用語

今、世界中で「スマートフォン特許戦争」とでも呼ぶべき状況が起きている。アップル、グーグル、サムスン、ノキア、マイクロソフトなどの巨大ITベンダーがお互いを訴え合っている。グーグルがモトローラを約1兆円という巨額で買収しようとしているのも、特許ポートフォリオの拡充を狙ってのことと考えてよいだろう。さらには、自らが持つ特許権を侵害している可能性のある企業を見つけて、巨額の賠償金やライセンス料を得ようとする「パテント・トロール」と呼ばれる「特許ゴロ」行為が、日本企業や開発者にもおよぶ可能性が出てきている。このような複雑な状況を理解するためには、特許をはじめとする知財制度への理解が不可欠となる。そこで本連載では、できるだけ今起きていることを事例にして知財制度の基本を解説するとともに、スマートフォン分野における特許戦争の動向分析、そして、ユーザーの考慮点について紹介していくこととしよう。

執筆:栗原 潔

知財とは何か?

(1)知財とは何か?
(2)特許権とは何か?
(3)意匠権とは何か?
(4)商標権とは何か?
(5)著作権とは何か?
 まずは、本質的に複雑な知財の世界をできるだけ簡略化して解説していこう。

 そもそも「知財(知的財産)」とは何なのか?最も単純に言えば知財とは「価値がある情報」のことである。最近ではあまり使われないが、無体財産あるいは無形財産という言い方のほうがわかりやすいかもしれない。知財には、特許、意匠(工業デザイン)、商標、著作物、ノウハウ、商品化権(パブリシティ権)、データベースなど、多様なものがある。

 今回は、スマートフォン市場におけるベンダー間の争いを理解するうえで重要な知財の基礎について見ていこう。まずは、当然ながら最も重要なのが「特許」だ。

特許権とは何か?

 「特許権」とは、発明を一定期間独占できる権利のことである。ここでいう発明とは、簡単に言えば「技術的なアイデア」のことだ。「一定期間」とは多くの場合、20年である(例外もある)。そして、「独占できる」とは他者の実施(使用、生産、販売、輸出、輸入)を禁止できるということ。この禁止権という特性が特許権をきわめて強力なものにしている。

 特許制度のポイントは、発明の保護と利用のバランスを取ることにある。特定企業しか発明をできない状況は独占を招き、イノベーションを阻害する。かと言って、だれでも自由に他人の発明を実施できるのであれば苦労して技術開発をするよりも他人の苦労にタダ乗りしたほうが得になるので、だれもイノベーションを行わなくなってしまう。

 この両極端のバランスを取り、権利者に一定期間の独占を与えることで、イノベーターにインセンティブを与えつつ、独占の弊害を防ぐことが特許制度のポイントなのである(このバランスが本当にうまく機能しているかについては議論の余地があるが…)。

 特許については、次回以降でも詳しく説明していくので、以降は先に特許以外の知財について簡単に解説しよう。「特許戦争」とは言え、実際には特許権以外の権利に基づいて、ベンダー間が争うケースも多いからだ。

意匠権とは何か?

photo

オランダにある
European Patent Office(欧州特許庁)
(2011年6月24日)

(Photo by iStock)

 「意匠」とは、工業デザインのこと。「意匠権」とは、斬新な工業デザインを一定期間独占できる権利である。たとえば、2011年8月にアップルの訴えによりドイツにおいてサムスンのGalaxy Tabの販売禁止の仮処分命令が出されたが、これは意匠権が根拠になっている。欧州特許庁においてアップルが登録したiPadの元となった意匠とGalaxy Tabの工業デザインが似ていることが問題とされたのだ。

 ここで、メディアの記事を読む際に注意が必要な点を挙げておこう。米国においては意匠のことを“design patent(デザインパテント)”と呼ぶ(これに対して特許のことは“utility patent(ユーティリティパテント)”と呼ばれる)。これは、米国においては意匠権と特許権がひとつの法律で扱われているためだ。翻訳記事などでは“design patent”を「デザイン特許」と訳してしまっている場合があるが、これは正しくは意匠権のことを指しているので注意が必要だ。「デザイン特許」とは言ってもいわゆる発明(技術的アイデア)の話ではなく製品の外観デザインの話なのである。

【次ページ】アップルが米国でサムスンの販売差し止める「トレード・ドレス」とは?

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