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  • 2011/11/04 掲載

【CIO対談:旭化成 山添勝彦氏】情報システム部門の自己改革~IT投資をジャッジできる力、サジェッションできる力を養う

旭化成[CIO・システム部長に聞く、対談インタビュー連載]

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ユーザー部門の業務改革を期待される情報システム部門の中には、自部門の改革も着実に進めているところがある。彼らは、どのような自己改革を成し遂げたのだろうか。本連載では、情報システム部門のトップに自ら語っていただこう。第11回は、旭化成 常務執行役員の山添勝彦氏に話をうかがった。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

大手コンサルティング会社を経て、現職。
製造業、情報サービス業などの、事業戦略、IT戦略、新規事業開発、業務革新、人材育成に関わるコンサルティングを行っている。
公益財団法人 大隅基礎科学創成財団 理事。
関連著書『正しい質問』アマゾン、『イノベーションのリアル』ビジネス+IT、『ダイレクト・コミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる 研究開発革新』日刊工業新聞、等

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

これまでの連載

 旭化成は、現在、SAPの統合やセキュリティ強化、グループウェアの再構築など、重要なプロジェクトを進めている。合わせて、事業会社を超えたIT投資レビューなど、システム部門の自己改革を推進している。IT投資レビューでは、事業会社の自主独立の経営を生かしながら、グローバルグループのムダをなくす仕組みを作り上げようとしている。

経営構造改革に対応するためSAPを統合する

 2009年、経営トップからの指示に基づき、SAP統合に向けた検討を開始した。これは、今後のグローバルな経営構造改革に、情報システムが遅れることなく対応することを狙いに開始された。それまでSAPは、グループ内に10個以上あり、事業会社で各社各様のシステムとなっていた。これを統合していく。まず、事業会社を巻き込んだ1年間の予備検討を実施し、3つのパターンに分け、SAPを統合することにした。たとえば住宅事業は、B2Cで事業を行い、B2Bの他の事業会社と運営方法が異なる。そこで、販売物流からの統合は行わない。つまり、それぞれの事業特性や組織運営方法に基づいて、SAPへのデータ入力を、販売物流から行うか、生産からか、あるいは会計から行うか、パターン化したのだ。

 SAP統合は、現在開発に着手しており、2015年に完了予定である。SAP統合によって、経営トップが狙った経営構造改革への迅速な対応に加えて、運用保守のコスト、人員の削減や、事業会社を超えた情報の迅速な把握が可能となる。

 これ以外に旭化成では、セキュリティの強化、グローバルグループウェアの再構築、DRPの推進などを進めている。たとえばグループウェアは、グローバル対応、多言語化、セキュリティ強化を進めている。DRP推進では、グループのデータセンターサービス会社「旭化成ネットワークス」を活用し、データ二重化を進めている。旭化成ネットワークスは、旭化成発祥の地 延岡にあり、グループ所有の発電所を利用して安定した電力供給ができる。また、立地場所は地震発生予測確率が低く、原子力発電所からも100Km以上離れている。

自主独立の事業経営を支えるIT投資レビューを進める

 このような重要プロジェクトの遂行と並行して、旭化成では、情報システム機能、情報システム部門の自己改革も着実に進めている。

 一つは、事業会社のIT投資を、持株会社の情報システム部でレビューし、無駄を排除し、投資効果を向上させることだ。旭化成の事業会社は、資本まで分割し、自主独立の経営を進めてきた。IT投資にしても、自ら稼いだキャッシュを、新たな利益を生み出すために投資してきた。そのため、各事業会社は積極的に要望を出し、それぞれの会社でベストな形でIT投資を進めてきた。一方で、各社ごとのIT投資は、ハードや開発サービスをそれぞれが別々に購買していたり、各社に類似するIT資産が構築されていくといったムダがある。今後、IT予算を潤沢に増やすことは難しい中で、これらのムダをなくし、集中購買やIT資産共有を進めることで、投資効果を高めることが必要になる。

 つまり旭化成で推進していくIT投資レビューは、事業会社の自主独立のシステム化を尊重しながら、事業会社を超えた投資の無駄をなくし、限られた予算で最大の効果を上げるために行うのである。今年、いくつかのテーマでIT投資レビューの試行を行い、その成果を見て、仕組み化していく。

 人材面での強化も同時に進められている。ポイントは、技術力の強化である。

 旭化成は、情報システム関係会社AJSにシステム開発を任せてきた結果、システム部員にシステム開発の経験がなくなってきた。経験者は限られていて、彼らもやがてリタイアする。このままでは、システム開発における難易度や、妥当な開発期間、成功のためのツボやリスク対策などの押さえどころを知らない情報システム部になってしまう。

 そもそも、情報システムの使い勝手を良くする提案や、ITを使ってやりたいことを企画するだけなら、ユーザーでもできる。プロとして情報システム部は、要望を確実に実現できる力を持つべきだ。そしてこの力は、連綿と受け継がれる必要がある。そこで旭化成では、システム関係会社AJSとシステム部門の間で人材交流を行うなどの施策を用いて、技術力の強化に取り組んでいる。

 では、次ページより、山添氏との対談インタビューの全体を紹介しよう。

【次ページ】10個以上のSAPを国内1つに集約

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