• 会員限定
  • 2011/10/25 掲載

父が息子に贈るコンサルティング講座(9)~「フレームワークを創造する-1」 親父、家庭内の組織改革を断行する

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
昼過ぎに、石津が我が家を訪ねてきた。「吉川さんち、むちゃくちゃカッコいいっスね!」彼は、甲高い声で叫んだ。黄色のジャケットに、紫色のズボン。トレードマークのべっ甲のメガネが光っている。今日は、親父は格闘技のジムに、幸恵は買い物で、母さんは友達とイタリア旅行に行っている。不幸中の幸いだ。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

大手コンサルティング会社を経て、現職。
製造業、情報サービス業などの、事業戦略、IT戦略、新規事業開発、業務革新、人材育成に関わるコンサルティングを行っている。
公益財団法人 大隅基礎科学創成財団 理事。
関連著書『正しい質問』アマゾン、『イノベーションのリアル』ビジネス+IT、『ダイレクト・コミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる 研究開発革新』日刊工業新聞、等

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

これまでの連載


僕は、石津が玄関先で騒ぎ出す前に、彼を家の中に入れた。これから休日返上で、谷川事業部長に提案する、グローバル業務改革体制についてまとめるのだ。

「北米やヨーロッパの競争相手の組織体制、わかったか」

リビングのソファに石津を座らせて、まず頼んでおいたことを聞いた。彼は、へー、すごいーと言いながら、部屋中をキョロキョロ見回している。

「え。あ、はい。ネットを丹念に調べると、それなりのことはわかりますね。それと、ウチの経営企画部に行ったら、定期的にやっているベンチマークの資料を見せてくれました。これらを合わせると、北米やヨーロッパの競争相手の中には、吉川さんの言っていた組織が、かなり前にでき上がっているところがあることがわかりました」

「どんな組織だ」

「本社のバイスプレジデントクラスが、グローバルな業務改革責任者になっていて、スタッフがついています。スタッフには、IT担当もいるようです。この業務改革責任者は、マーケティングや営業、生産、サプライチェーンなど、組織機能ごとにいます。そして、現地法人の企画部門が、業務改革責任者の配下になってます。たとえば各国の営業企画部長は、本社の営業業務改革責任者の部下です。彼ら企画部長は、当然、現地法人の社長の部下でもあるんですが、いわゆるマトリクス型ですね」

「人事権とか、どうなってる」

「本社の業務改革責任者が、各国の企画部幹部の人事権を持っている企業があります。だから各国の企画部では、業務改革責任者の指示で、国を越えて色々な現地法人をローテーションしてるみたいです。それで、世界の様子や、各国の事情を知っていて、自国の課題も良く見えるみたいです」

「本社の業務改革責任者は、何をしてるんだ」

「グローバルグループの業務改革とIT化に責任を持っていて、各国現地法人ごとの個別最適になることを防ぎ、グローバル全体最適を達成しようとしています。業務変更権限も、IT予算も、本社の業務改革責任者が持っています。現地法人に予算があると、勝手にIT化して業務もバラバラになりますからね。現地法人の定期監査では、標準化された業務プロセスが徹底されているかどうか、チェックされます」

「なるほど。そうすることで、グループのベストプラクティスを世界各国に普及させたり、IT投資を世界でまとめてコストダウンできるんだな。だけど待てよ、各国で商習慣がちがうじゃないか」

「そうなんですよ。だから、代理店販売や直販など、パターンごとに標準化がされています。でも、国による法規制などに対応するため、一部の業務は例外とか、ある程度自由度が効くようです。どこまで自由度を認めるか決めるのも、本社の業務改革責任者の仕事です」

「確かに、国や地域で顧客や市場は違うが、営業企画部門が脆弱な国だと、かえって本社で優秀なスタッフが考えて、その後でいろいろな国や顧客で試された業務プロセスが使えるというのは、いいことかもしれないけどな」


しかし僕は、何かしっくりとこなかった。

「今回は、営業でやるんだから、原部長を本社営業業務改革責任者にして、各国営業企画部門を、原さんの配下に置く組織になるんじゃないですかね」

「いや、すぐにそんな組織の大改革はできないだろう。やっぱり、まず地域ごとにまとめて最適化して、その後でグローバル全体最適するのがいいんじゃないか。地域別に業務改革責任者を置く」

「そうですよね。それが順当ですよね」

僕は、何だかうれしくなってきた。今僕らは、会社のグローバル組織を作っているんだ。

「でも、吉川さん。組織ってどうやって作るんでしょうね」

「それはだな。まず、ミッションを考えて、組織機能に展開する。そして、KPIと管理サイクルを決めて。また、関連組織とのコミュニケーション方法や……」

「本で、一夜漬けで勉強したって感じですね」


図星だ。

「とにかく。結論は谷川事業部長が出すんだから、僕らは言いたいことを言えばいいんだ」

「言いたいことって?」


突然、後ろから声が聞こえた。


【次ページ】「フレームワークは作るもの」

関連タグ

関連コンテンツ

オンライン

~P&G・マクドナルド・レノボ出身のFP&Aアドバイザーが語る~ 自社に合ったFP&Aの始め方

明日から取り掛かる、FP&Aの始め方 このような方におすすめ ・P&G/マクドナルド/レノボ出身のFP&Aプロフェッショナルによる事例解説に興味のある方 ・明日から取りかかれるFP&Aの始め方を知りたい方 ・グローバル基準のFP&Aを自社に合った方法で取り入れたい方 ・直近5年間で、日本企業においてもFP&Aや経営管理体制の構築の重要性についての理解が深まっています。 一方でその実行となると、「全社を巻き込むのが難しい」「どこから取り組めばよいか分からない」「取り組み事例を知りたい」といったお声を多く頂戴しており、ロールモデルに対するニーズが高まってるのが現状です。 そこで、今回はP&G・マクドナルド・レノボといったFP&A先進企業で日本子会社のCFO・FP&Aをつとめ、現在はFP&Aアドバイザーとして数多くの日本企業のFP&A実装に尽力されている池側氏をお招きし、事例をベースに「明日から何に取り組めばよいか」をご理解いただけるセミナーを開催いたします。 当日のテーマは以下です。 ・P&Gなど先進欧米グローバル企業のFP&Aとは ・FP&Aを実装している日本企業の事例 ・自社に合った形でFP&Aを始めるには 他社のFP&Aのお取り組みを知りたい方、FP&Aの高度化を推進したいマネージャー・経営層の方にぜひご参加いただけますと幸いです。

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます