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  • 【常見陽平氏×沢田健太氏 対談:前編】 キャリアセンターが向き合うもの――人事、学生、そして就職難の現実

  • 2011/11/04 掲載

【常見陽平氏×沢田健太氏 対談:前編】 キャリアセンターが向き合うもの――人事、学生、そして就職難の現実

『就活の神さま』常見陽平氏×『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』沢田健太氏

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これまでに舌鋒鋭い就活関連の書籍を多く著し、先日は初の小説『就活の神さま 自信のなかったボクを「納得内定」に導いた22の教え』(WAVE出版)を上梓した人材コンサルタントの常見陽平氏。そして、キャリアセンターの内情に精通しており、内側の観点から学生や人事、保護者に向けて就活を論じた『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話 知的現場主義の就職活動』(ソフトバンク新書)の著者、沢田健太氏。このお二人に、今どきの大学、学生の問題、就活ナビサイトのメリット/デメリット、企業における人事の変質などについて大いに語っていただいた。

就職氷河期を背景に誕生したキャリアセンター

――そもそもキャリアセンターというのは一体何なのでしょうか。

 沢田健太氏(以下、沢田氏)■成り立ちの背景には、就職氷河期と呼ばれた90年代の就職難があります。バブル崩壊以降の求人数の減少だけではなく、在学中に職業を選べるほど成長できない大学生が増えてきたという側面が大きいんです。そのため、3~4年次からの就職支援では間に合わず、低学年の段階から将来のキャリアを見据えた教育の必要性が出てきた。従来の就職課の出口支援では足りないという問題意識から、2000年前後より日本中の大学でキャリアセンターが作られるようになったわけですね。

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『就活の神さま』

 常見陽平氏(以下、常見氏)■元々、就職課には就職難民のためのセーフティネットという役割が期待されていましたが、キャリアセンターになったことで攻めの姿勢に変わったなと感じます。求人の開拓から卒業後のアフターフォローまで活動の幅が広がっている。不安定な時代だからキャリアセンターの重要性は増えているように感じます。でも、一方で「キャリア教育が大学の授業の邪魔にならないようにしなきゃいけない」とか「大学は就職予備校じゃないんだ」って主張する教授がいたりもします。そればかりか、キャリアセンターが何なのかを知らない人が、学生だけじゃなく教授や他の職員にもいたりして、まだまだ課題も多い。

 沢田氏■単位化したキャリア教育の導入については、最初の頃は学内から猛反発を受けることも多々ありました。キャリア教育ができる教授は滅多におらず、経営学や心理学など隣接する領域の方にお願いするしかなかった。それだと結局、各専門の講義が展開されてしまい、キャリア教育科目を名乗っておきながら、学生に広くキャリアを考えてもらう機会になりにくかったんです。ここ数年ようやくそういった関連する学問を踏まえながら、人が生きていくこと、あるいは自立した職業人生活について教えられる広義のキャリア教育に発展してきました。

 学生の質については、入学方法の多様化が問題です。一般入試突破の苦労をしないで済むルートが増えた結果、高卒後の進路が見いだせず、それを先送りするために入ってくる大学生がボリュームゾーンになってきています。そういう子たちがキャンパスで漂流して、突然、就職活動を迎えると大変なことになる。キャリア教育の導入には、大学の4年間を考えさせるための初年度教育としての色合いも強くあります。

 常見氏■課題が多いですよね。例えば、不本意入学の問題は非常に根深いと思います。中堅校以下になると不本意入学者が凄く多い。そういう子たちが大学生活にやりがいを見いだせなかったりする。それをずっと引きずったまま3年生になり、就活をむかえる。その時にもついつい大学のせいにしてしまう……。あるいは、推薦やAO入試(アドミッションズ・オフィス入試。学力試験を行う一般入試とは異なり、書類審査や面接を通じて合否を判断する入試)枠の増大。悪いばかりの傾向ではないのですが、同じ大学の学生間の能力差が顕著で講義についていけてない現実がある。

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『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』

 沢田氏■圧倒的に一般入試の入学率が低下していて、文科省のデータでは50%を切ったといわれています。高校の進路指導教員の中には、本当に優秀な子には一般入試で大学を受験させ、そうでない子たちを推薦で進学させようとするところもあると聞きます。彼らを受け入れた大学では、20~30人のクラス運営も難しくなる。講義の水準を上の子に合わせると付いていけない、中間に置くとつまらないと言われる。論文の回し読みをしたところで理解できるのが極少数なんてことも起きるんです。

 元々、学業にコミットしていなかった層が、4年間大学の授業についていくのは難しい話です。かつての学生は勉強が嫌いでも友達がいるから大学に行っていたんですが、今の学生は一人ぼっちで授業にだけ出席しているようなケースも少なくない。そういった子たちがポロポロやめていってしまうのは本人にとっても大学にとっても大きな損失。だからこそ大学教育に意義を見出してもらうためにもキャリア教育が必要だと考えています。

――実際、就職課からキャリアセンターに移行して以降、訪れる学生は増えているんでしょうか?

 沢田氏■学生の声としてよく聞くのは、「怖い」「入りづらい」「何を聞けばいいのかわからない」と、及び腰になっている例です。あと、やはり低学年生だと、まだ進路のことを考えられない人が多い。利用者数は増えているはずですが、大学内の一組織としては発展途上にあります。

 現場としては、お金とマンパワーの圧倒的な不足がしんどいですね。大学側が大学教育という本丸の改革を避けながら、小手先のキャリア教育だけでなんとかしようとしているのが構造的な問題で、2月や3月の繁忙期というかトップシーズンだと、就職相談だけで学生が2時間も待たされるような事態が起きています。

 常見氏■就活ナビサイトを見ることが就職活動だと思い込んでいる学生はそもそも来なかったりするし、最後まで決まらないのはそういう子だったりもする。キャリアセンターには企業から「〇〇大学さん、あと1人追加でどうでしょうか?」なんて話が届いていたりもするのに。

 沢田氏■追加求人は企業が初めから大学のレベルで選別しているんじゃないかと思っているんですが……?

 常見氏■その通りだと思います。企業からすると、またマスから集めるのは大変だし、その時期に残っている子はなかなか厳しい。MARCH(明治、青山、立教、中央、法政などの大学群を示す通称)、日東駒専(日大、東洋、駒沢、専修)程度以上のレベルの大学に求人を出すことが多いみたいですね。

 沢田氏■そこに企業の本音が見えますよね。新卒の1回目の採用はターゲットの大学階層に分厚いコロモをつけた採用活動になっている。コロモの下位大学の学生が選ばれる余地もあるけど、そもそも選考の対象とされていない多くの学生たちに誤解を与えてしまう余地でもある。だから、そのあまりオープンにされない第2募集を吟味すると企業の本質が見えてくるんじゃないでしょうか。

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