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  • 2012/01/19 掲載

Amazonの激安タブレットがもたらすもの:○○はビジネスになるか

ショッピングカート戦略をひも解く

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2011年末の米ホリデー商戦では、Amazon.comのタブレット「Kindle Fire」が売れに売れまくって、大きな話題になった。Appleの「iPad」が圧倒的なシェアを持つタブレット市場に、199ドルという激安で挑むAmazonの戦略商品だ。調査会社の分析では、その販売価格は原価割れしており、売れるだけ損失がかさむ。一見、市場シェアを奪うために無茶をしているように見えるが、背後にはAmazonの明確なビジネスモデルがある。

行宮翔太

行宮翔太

ローカルTV記者、全国紙記者を経て、ITやビジネス分野のライティングを手がける。NTTPCコミュニケーションズ運営時のCNET、(株)ガリレオの「Infostand」などで執筆。四半世紀以上前に数年間住んだインドが“IT先進国”になったことを、どうしても信じられない。

一挙にタブレット2位に躍り出る

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AmazonのKindle Fire
 Kindle Fireは、大ヒットした電子書籍リーダー「Kindle」のブランドを受け継ぎ、電子ペーパー(Eインク)の代わりに7インチのタッチパネル型液晶ディスプレイを搭載したタブレット端末だ。OSにはカスタマイズしたAndroidを採用し、Wi-Fi経由でインターネットにも接続できる。Amazonの電子書籍のほか、Amazonが販売している音楽や動画・テレビ番組の再生が可能。また、Webブラウジングにも対応しており、Amazon Appstoreから購入・インストールしたアプリが利用できる。

 一方で他社のタブレット端末が通常持っているような機能を省略してあり、カメラもGPSも持たない。Android Marketからのアプリ購入もできない。Amazonは昨年11月14日、当初の予定から1日早くKindle Fireの出荷を開始した。12月半ばには、販売台数が毎週連続で100万台を突破したと発表している。

 正確な販売台数は公表されていないが、投資銀行のモーガン・キーナンのアナリストの推計では、昨年末からのホリデーシーズン(11月2日~12月27日)の販売台数は400万台から500万台にのぼり、AppleのiPadの販売を100万台から200万台は“食った”という。iPadの10-12月期の推計販売台数は減少後でも1300万台と、依然トップの座にあるが、Kindle Fireは、さまざまなAndroidタブレットを尻目に、一挙にナンバー2の位置に躍り出たのだ。

 一方、Kindle Fireはメディアの製品レビューなどでは、iPadと比較して、厳しい評価を受けている。たとえばニューヨークタイムズのテクノロジー担当コラムニスト、デビッド・ポーグ氏は「Kindle Fireは、iPadのような洗練さも速度もまったく持ち合わせておらず、指でスワイプ(画面に触れた状態で指を滑らすこと)するごとに、200ドル(という格安)の値札を実感することになるだろう」と酷評している。

 しかし、Kindle Fireは多くのユーザーの支持を得た。とにかく売れまくっているのだ。投入第一段階は大成功といっていいだろう。ちなみにkindleは「火を付ける」意味なので、その名の通り、燃え上がったというところだろう。

売るほど赤字の出血販売

 Kindle Fireの人気の最大の要素はとにかく価格だ。199ドルという値付けは、エントリーモデルのiPad(Wi-Fi対応のiPad2の16GBモデル:499ドル)と比較しても、半値以下になる。多くのユーザーは、Kindle Fireは安いのだから、少々のことは気にしないと言う。Amazon.comのカスタマーレビューには年明けで1万超のレビューが寄せられているが、平均評価は四つ星(五つ星が満点)と、この種の製品では異様に高い。大半のユーザーが「多少の問題はあるが、価格と機能を考えれば満足」と書いている。

 この安さの裏には売値よりも高い原価がある。Apple製品の分解レポートで定評のあるIHS iSuppliは発売前の段階で、Kindle Fireの総部品コストを191.65ドル。製造コストと製造受託企業の利益を加えて1台当たり209.63ドルと試算した。販売コストを別としても1台売るごとに10~11ドルの損失を出すことになる。

 その後実機を入手して、分解調査を行った結果、部品コストを185.60ドル、製造コストを7.10ドル、製造受託企業の利益9.00ドルに下方修正し、製造原価を201.70ドルとはじき出した。それでも売値より高く、さらにこれには販売経費なども含まれていない。売るほどに赤字になるはずだ。だが、Kindle FireはAmazonに早くも利益をもたらしつつある。

【次ページ】ショッピングカート戦略

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