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2012年04月11日

技術的にも法律的にも可能な放送と通信の融合

NHKオンデマンドはどのように著作権問題を乗り越えたか :篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(41)

過去四半世紀のIT分野をリードしてきた企業を思い浮かべると、IBM、アップル、マイクロソフト、インテル、アマゾン、グーグル、フェイスブック、ツイッターなど米国企業が勢ぞろいする。だからといって、放送と通信の融合や著作権をめぐる問題などで、米国型の諸制度をそのまま模倣してもうまく事が運ぶとは限らない。なぜなら、現実の経済社会を動かすのは、法律などのフォーマルなルールだけでなく、長年にわたって積み上げられてきた業界慣行などのインフォーマルなルールでもあるからだ。

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠ア彰彦

これまでの連載

繁栄のオアシスを目指したアメリカ化?

 IT導入によるイノベーションの大波は世界各国に及んでいる。こうした「創造的破壊」の時期には、新しい発想による果敢な挑戦が迅速に実行できる柔軟な仕組みをうまく整えることが大切だ。

 前々回前回で触れたように、2000年前後には制度改革があわただしく進められたが、それは、ITへの投資とともに経済再生を実現した米国をひとつのモデルとして、その「明示的な」法制度を日本にも移植しようとした傾向が強い。

 この点は、明治以来法制度の面で日本が模範としてきたドイツなどヨーロッパ諸国の動きとも共通していたようだ。当時の国際社会では、米国は最新技術のICTで輝く「繁栄のオアシス(oasis of prosperity)」とみられていた(注1)。1999年5月に開催されたOECD閣僚理事会では、欧州や日本は米国の情報技術革命を見習うべきという趣旨の発言が、米国からではなく、ドイツやフランス側から発せられたという(注2)。

 商法学者の岩原(2000)は、「このような変化は、単に〔法的〕制度のアメリカ化というに止まらず、経済・社会の在り方が一九世紀ないし二〇世紀ドイツ的ないしはヨーロッパ大陸的な、官僚が主導する、組織を中心とするかちっとした仕組みから、アメリカにおけるような、市場および司法制度を中心とする、フレキシブルな仕組みに変化する一過程といい得るかもしれない」と述べている(注3)。

スピード重視で安直な制度輸入のワナ

 その一方で、岩原(2000)は、旧来の法制度に固執しそれをいたずらに墨守するような姿勢を戒めつつも、「外国の法制の背後にあるインフラとしての司法制度や経済・社会の在り方の違いに配慮せず、外形的に外国の法制を模倣するようなことは、避けるべきである」と安直な制度輸入に警鐘を鳴らしている(注4)。

 これは重要な警鐘といえそうだ。というのも、仮に法律などのフォーマルなルールを体系性と整合性を保って全面的に移植したとしても、米国流の制度が直ちに日本でうまく機能するとは限らないからだ。

 ノーベル経済学賞を受賞したダグラス・ノースが指摘するように、現実の制度は「仕上がった法律」のように人為的操作が比較的容易で移植可能なフォーマルなルールばかりでなく、業界慣行や関係者の行動規範など過去の経緯で累積的に形成されてきた暗黙のルールからも成り立っている(North[1990])。さらに厄介なことに、制度全体の実質的な運用には、「思考習慣としての制度」というべき後者が強い影響力をもっているのだ。

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図表1 市場の二重性と制度の多層姓


【次ページ】著作権法の壁を乗り越える現実解は何か

脚注
注1 当時の良好な米国経済を示す際にこの表現が用いられている。例えばMann(2002), Kliesen(1999)参照。
注2 日本経済新聞1999年5月27日付夕刊参照。
注3 岩原(2000)参照。〔〕内は引用者による加筆。
注4 岩原(2000)参照。

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