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  • 2012/04/27 掲載

「値上げすれば、儲かる」 : 二代目社長の“値上げ”マーケティング(1)

利益をアップさせたいとき、値上げしますか?値下げしますか?

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刈谷修平は悩んでいた。ケーキ店の経営を父親から継いで2年後、赤字に転落してしまったからだ。悩む修平に父親が紹介したコンサルタントは「値上げ」の重要性を教える「値上げコンサルタント」だった。

幸本陽平

幸本陽平

JASISA|一般社団法人日本中小企業情報化支援協議会 会員
幸本陽平事務所 代表

製造業やIT関連業、地方自治体などに対し、マーケティングを中心としたコンサルティングを行うほか、研修およびセミナーの講師として活動している。外資系高級ブランドのマーケティング・販売促進・経営企画を長年担当した経験を生かし、企業がすぐに取り組めるマーケティング施策の導入提案を得意とする。特に社会の問題解決と事業の収益化を同時に目指す「社会問題解決(SIR)マーケティング」を提唱・推進している。中小企業診断士。

「値上げすれば、儲かる」

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「こんにちは、修平さんですか?」

 そうだ、今日は、父親から紹介された「値上げコンサルタント」の幸田陽一と店で会う約束をしているんだった。

 刈谷修平は千葉県にケーキ店「KARIYA」を6店舗展開する、有限会社刈谷洋菓子の二代目社長である。もともとは父親である刈谷康がケーキ職人として起こした会社であり、修平が2年前から引き継いだ。現在、創業者である父の康は会長になって業務からは退いている。

 修平の目下の悩みは、自分が経営を引き継いでから2年で赤字に転落してしまったことである。そこで父親から経営コンサルタントの幸田陽一を紹介されたのだった。以前、父が役員を務める洋菓子組合が幸田に講演をしてもらったことがあり、その講演のタイトルは「値上げすれば、儲かる!」だったという。修平は多忙を理由に欠席したが、心の中では「値上げをしたらお客さんは離れてしまうに決まっているじゃないか。ばかばかしい」と思っていた。

 紹介された幸田というコンサルタントは、父親の知り合いだと聞いていた。そのため修平は年配の男性を想像していたが、実際には自分と同世代の40歳前後のようだ。背が高く、恰幅もいい。修平は幸田を店内の奥の席に案内し、現在の経営状態を簡単に説明すると、早速話を切り出した。

「あの、以前の講演では確か、値上げで儲かるという話をされたとうかがったのですが。えっと、それで…ウチは値上げするべきなのでしょうか。教えてください」

 店の苦境を何とかしたい一心で、いきなり本題を切り出した。

「まあまあ、そんなに肩の力を入れずに…。ところで修平さん、あなたは売上をアップさせたいとき、お店の商品を値上げしますか?値下げしますか?」

 唐突に質問され、修平は返答に詰まった。

「えっと…売上アップ、ですか…。普通、値上げをするとお客さんは離れちゃいますよね。高いよりも安いほうがいいですから。ほら、値下げをすれば、バーゲンセールになってお客さんがたくさん集まりますし。だから値下げしたほうが売上もアップするのかなー、と思うのですが」

 幸田は「値上げすれば、儲かる!」と言っているくらいだから、おそらく逆の答えなのだろう。しかし値上げをすれば客が離れると考えるのが普通だ。

「なるほど。わかりました、それではもう一つ質問です」

 幸田は続けた。

「それでは売上ではなく“利益”をアップさせたいときは、値上げしますか?値下げしますか?」

 修平は面食らってしまった。

「え?それってさっきの質問とは違うんですか?」

「先程私は“売上のアップ”について聞きました。今度は“利益のアップ”です。どうです?値上げした方がいいと思いますか?それとも値下げすべきですか?」


 売上と利益?大きな違いがあるのだろうか。普通、売上が上がれば自然と利益も上がるはずだ。

「あの、値下げすればお客さんもたくさん集まるので、たくさん売れるから、売上と同じく利益も上がるのかな、とは思うのですが」

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「なるほど、わかりました。修平さん、経営者は“売上”と“利益”はまったくの別物であることを理解する必要があります。詳しくご説明したいところですが…ちょっと私はお店のケーキをいただくので、その間、『売上と利益の違い』について考えてください。そして後ほど、考えたことを私に教えてください。では、30分後に」


 幸田は席を立ってケーキを注文し、おいしそうに頬張った。食べっぷりから見ると、甘いものが相当に好きなようだ。

【次ページ】利益が出ない理由とは

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