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  • 2012/06/22 掲載

【産業技術総合研究所 フェロー 浅島誠氏】日本が誇るフェロー・CTOに学ぶノウハウ定義書~ 「教養とバイタリティーと熱情を持って真の科学者を目指す」

産業技術総合研究所フェロー、幹細胞工学研究センター長、東京大学大学院総合文化研究科特任教授 [フェロー・CTOインタビュー 第4回]

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フェロー、CTOの高い業績の背景には、独自の考え方、思考・行動の原則=ノウハウがある。これらのノウハウには、企業の創造力、イノベーション力を高めるパワーがある。そして、日本を元気にするヒントがある。本連載では、フェロー、CTO自身に、自らのノウハウを語っていただく。第4回は、産業技術総合研究所フェロー、幹細胞工学研究センター長、東京大学大学院総合文化研究科特任教授、浅島誠氏に聞いた。浅島氏は、世界中の生物学者が50年以上かけて実現できなかった、未分化細胞に作用する「誘導物質」アクチビンを同定。さらに研究を進め、未分化細胞を用いて試験管内での人工器官形成などで最先端の業績を上げている。ジーボルト賞(ドイツ政府)、学士院賞、恩賜賞、紫綬褒章、東レ科学振興賞、上原賞、比較腫瘍学常陸宮賞、文化功労者など、数々の賞を受賞されている。

アクト・コンサルティング 取締役 野間彰(R&Dダイレクトコミュニケーション推進会議)

アクト・コンサルティング 取締役 野間彰(R&Dダイレクトコミュニケーション推進会議)


野間 彰
アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

1958年生まれ。大手コンサルティング会社を経て現職。
製造業、情報サービス産業などを中心に、経営戦略、事業戦略、業務革新、研究開発戦略に関わるコンサルティングを行っている。主な著書に、『ダイレクトコミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる研究開発革新』(日刊工業新聞社)、『システム提案で勝つための19のポイント』(翔泳社)、『調達革新』(日刊工業新聞社)、『落とし所に落とすプロの力』(リックテレコム)、『団塊世代のノウハウを会社に残す31のステップ』(日刊工業新聞社)、『ATACサイクルで業績を150%伸ばすチーム革命』(ソフトバンク クリエイティブ)などがある。


R&Dダイレクトコミュニケーション推進会議

Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp/rd_dc.html

「R&Dダイレクトコミュニケーション推進会議」は、対面型コミュニケーション、ITを用いた遠隔地間の双方向コミュニケーションを活発化させ、研究開発部門の知的生産性を高める活動を推進しています。ダイレクトコミュニケーションは、研究所の、風土改革、オフィース改革、研究所の新設・改造を通じて達成します。

<推進会議メンバー>
株式会社コクヨ、日揮株式会社、株式会社アクト・コンサルティング

これまでの連載


教養とバイタリティー、熱情を高めることが急務である


――世界の生物学者が挑戦して、誰も成し遂げられなかった、細胞の分化を誘導する物質「アクチビン」を同定されました。このような高い業績を得るために、日ごろ常に意識して実践してこられたことはあるのでしょうか。

photo
産業技術総合研究所フェロー
幹細胞工学研究センター長
東京大学大学院総合文化研究科特任教授
浅島 誠氏
【浅島 誠氏(以下、浅島氏)】
その話に入る前に、最近感じている問題を最初にお話したいと思います。ご質問の答えにもなると思います。いわゆるゆとり教育(平成18年度以降大学に入学)を受けた学生と、それ以前の学生で、学生の質が違っていると感じています。一般にゆとり世代は、言われたことはうまくこなしますが、自立的に考えない傾向がある。また、グローバル化の中で重要になる、日本や世界について、基本的なことを知らない。歴史や地理や文化の観点で、日本のことを、また世界の中での日本の位置づけを知らない。

――初等中等教育の問題ですか。

【浅島氏】
それも大きいです。古い話ですが、私はドイツに留学していた時に、川端康成さんが亡くなったニュースが届きました。その時研究所の教官や同僚たちは、川端康成の業績から始まって、日本の文化や武士道の話まで聞いてきました。私が自分の持っている知識と、自分なりの解釈を伝えると、それ以降、同僚の私を見る目が明らかに変わりました。家庭に呼んでくれる人もいました。家族に、日本のことを話してほしいというのです。ドイツを初め、海外には、異国の文化に対する知識欲や、それを家族で話し合うという豊かな時間を持っているところがあるのです。これに対応するには、日本のことを知り、自分のアイデンティティーをしっかりと持つことが必要です。いわゆる、教養の問題です。

――先生の解釈では、教養とは何でしょうか。

【浅島氏】
教養は、「生きる力」または「人間力」だと思います。すなわち、どうしたらいいかわからないときにどうすべきか考えること。失敗を怖がらず挑戦し、これを乗り越える知恵と英智と勇気を得て、判断する能力。これが教養だと思います。ですから、どうしていいかわからないからやらない、成功が見込めることしかしないのでは、教養はつきません。日本には特に、本人も周りも、失敗したらもうおしまいといった感覚がある。それは間違いです。

――昔は、もっと教養が重視されていたのでしょうか。

【浅島氏】
時代が変わったことは一つあるでしょう。かつては、憧れの先生がいた。土日に生徒と一緒に野山を歩き、生き物のおもしろさを教えてくれた。今は、怪我をしたら誰が責任を取るんだなどといって、そんなことが自由にできない。しかし、人と人が接して体で実体と感性を学ぶことは、教養を得るために重要です。ケネディー家は、息子に新聞配達をさせた。世間を見せるためです。「おはよう」と声をかけてくれる家もあれば、何も言わない家もある。そのような経験から、何が良いことか、何を目指すべきか、働くことの尊さ、おのずと学ぶことができたでしょう。人間関係は、教養を高めるために極めて重要です。人と会って話し、考えを引き出し、自分の考えを説明し、互いに議論することが必要です。そしてそこから、自分なりに解釈したり判断する。

――そういう意味で、ゆとり世代に対し、教養に対する危機感を持っておられるということですか。

【浅島氏】
これまでお話した教養があれば、こうしたらこうなる、とわかっていることではなく、わからないことに興味をもって挑戦するはずです。こうしたらこうなるはずだがそうならない場合、落ち込まず「おもしろい」「何かそこに新しいものがある」と感じて、原因を探求するはずです。

――教養をつけるには、まず教養は何かと言うことをしっかりと認識しないといけないということですね。

【浅島氏】
それともう一つ。バイタリティーと熱情が必要です。私が1972年に、ドイツ・ベルリン自由大学分子生物学研究所に留学した時、日本から来た実績のない若者には、実験用の卵が回ってきませんでした。そこで、実験後に誰かの卵が余ればそれをもらって実験をしていました。研究所には朝6時半に行き、研究所の人たちと夕食まで研究します。その後、卵が余るとわかるのは夜の8時くらいです。それから自分の研究をする。しかし、私は佐渡の田舎に生まれ、早朝から牛乳配達をやった経験もあり、このくらいのことは平気でした。研究が常にベストな環境で行えるはずがありません。逆境でも教養を高め研究を進めるには、バイタリティーと熱情が欠かせないのです。

――日本人のバイタリティーはいかがですか。

【浅島氏】
問題があります。一般に1980年代まで、海外の研究所で一番遅くまで残って実験しているのは日本人でした。今は、台湾、韓国、中国、その他アジアの新興国などの若手が、夜遅く最後まで残っています。もちろん彼らは、本国に帰れば、それなりのポジションが待っている。その点、日本にはポジションが少なくなっていることも一因でしょう。しかしこのままでは、日本の国力が失われていくのではないかと思います。次世代の若者が自由な発想のもとで、熱情をもって取り組む姿勢と環境が必要だと思っています。

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