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  • 2012/09/24 掲載

広がりを見せる地理情報活用型統合モバイルBCP、今こそコミュニケーション手段を見直す

【連載】変わるBCP、危機管理の最新動向

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これまで行政機関から地域住民に対して、緊急情報を伝達する手段として、行政無線や有線放送が使われていた。しかし、こうした伝達手段は一方通行のものに過ぎない。インターネットやソーシャルメディアなど、多様な伝達手段が広がりを見せる中で、災害時のインフラやコミュニケーション手段は見直す時期に来ている。今回はNTTデータやウェザーニューズ、マップル・オン、NECなどの取り組み事例を見ていこう。

ストラテジック・リサーチ 森田 進

ストラテジック・リサーチ 森田 進

ストラテジック・リサーチ代表取締役。各種先端・先進技術、次世代産業、IT活用経営、産学官連携に関するリサーチ&コンサルティング活動に取り組む。クラウド、仮想化プラットフォーム、エンタープライズ・リスクマネジメント/BCP、モバイル・プラットフォーム、情報化投資の各分野において研究およびエヴァンジェリズム活動を展開し、実績を積む。
URL:http://www.x-sophia.com/

 前回に引き続き、ソーシャルテクノロジーとモバイル・プラットフォームという2つの新しいBCPテクノロジーを軸に、次世代BCPの可能性をレクチャー形式で点検してみよう。

時代遅れのBCPインフラをどのように見直すべきか

連載一覧
講師S氏:これまで、行政機関から地域住民に対して緊急情報を含めた地域密着の情報を伝達する手段として、防災行政無線や有線放送が使われていました。しかし、こうした伝達手段は、あくまで伝達という一方通行のものでした。

 しかも、どのような情報を地域住民が望んでいるのか、どのような手段で伝わることを要求しているのかについてはあまり踏み込んで確認されることのないまま今日に至っています。そのため、非常時・災害発生時の住民に対する緊急情報の伝達・確認手段のインフラは不十分な状態であるのが現実です。

 既にインターネット、電子行政サービス、ソーシャルメディアなど、多様な伝達・情報交換メディア、双方向通信技術が日進月歩で発展し、その可能性を広げているなかで、こうした時代遅れのインフラやコミュニケーション手段は見直すべき時期にきているといえるでしょう。

 災害時に、緊急情報を伝達することにはいろいろな意図が込められています。単に被災状況を知らせ、避難誘導することだけが目的ではありません。被災状況を関係者に知らせ、相互に確認を取ることで迅速かつ適切な対処が可能となり、被災の程度を軽減する=減災することと密接につながっているのです。

受講者C:何か具体的な取り組み事例があれば1、2点紹介してもらえますか?

講師S氏:地域クライシス・コミュニケーションをターゲットとしたさまざまな取り組みが始まっています。この分野では、電子自治体などでノウハウを持つ業者が一日の長をもっているようですね。

 具体的な事例でいえば、NTTデータは比較的早期に災害発生時および平常時に市町村など行政機関と住民とを結び、情報のやり取りをする「減災コミュニケーションシステム」(注1)を開発して取り組みを開始しています。また、ネットワーク・サービスのアシュアランス向上を売り物に計測器事業を展開する大手電子計測器会社のアンリツは、このNTTデータとの協業で災害発生時の各種コミュニケーション用途に対応する情報通信システムを提供しています。

注1 NTTデータ 「減災コミュニケーションシステム」

 これまで全国の市町村で活用されてきた防災行政無線は住民への情報提供を屋外拡声器からの音声主体で行うアナログ波の同報系システムがほとんだったが、この背景には、対象エリア全体をカバーするネットワークシステムの構築には専門のノウハウが必要であり、相応のコスト負担がネックとなっていた。

 NTTデータが開発・提供する減災コミュニケーションシステムでは、これまで防災行政無線では免許を要する電波を使用しなければならなかったのを、役所に設置するセンタ装置と家庭に置く端末装置の両方の間に中継装置や制御装置などを適切に配置したことで、免許負担(免許にかかわる申請料や利用料などランニングコスト等)を不要としていることや、特定小電力無線の採用、中継装置や制御装置を介することによる距離の延長で対象エリアのカバーを実現した点に特徴がある。

photo
双方向型減災コミュニケーションシステム全体イメージ

 同社公開資料によると、この減災コミュニケーションシステムのおおまかな特徴は次のとおりである。

1.法律で定められた施策課題を安価により確実に実現するシステムであること。
2.無線免許不要な特定小電力無線を採用していること。
3.行政からの問いかけに住民が応答することにより、避難概況、被害概況、復旧概要が容易に把握できる「双方向通信」であること。

 2番目に挙げた特定小電力無線の実装により、双方向通信や家庭から市役所などへの情報送信を可能とするというメリットをもたらすという。住民への一方的な避難勧告に加え、行政からの問いかけとそれに対する応答で住民の安否確認ができること、水道、電気等ライフラインの被害・復旧概況などを把握することが可能となったことなどを特長としている。また、役所側では、住民からの応答をディスプレイに映し出し、地図やグラフや表で視覚で確認することで被災時における地域住民の状態監視(モニタリング)の応用も可能としている。双方向通信の機能と拡張用のオプションボタンを活用することで、今後、災害時・緊急時ばかりでなく平常時における独居老人への声掛け・見守りサービスなどにも応用させることが可能であろう。

画像
ウェザーニュースタッチの画面
 また、東日本大震災以降、自然災害情報をいち早く提供することに加え、迅速な避難行動へつなげるための支援システムの重要性が改めて認識されてきました。そうした要請に応え、たとえばウェザーニューズではこの被災体験を機に、自然災害・気象情報提供サービスならびに関連アプリケーションのバージョンアップに取り組んでいるようです。

 津波や自然災害に備え、同社のスマートフォンアプリ「ウェザーニュースタッチ」に、「津波Ch.(チャンネル)」、「注意報・警報Ch.」、「雷Ch」を追加していますから、スマートフォンならではの機能を活かした自然災害情報サービスの事例といえるのではないでしょうか。

 このサービスは東日本大震災以降、震源・最大震度・登録地点の推定震度・強い揺れが到達するまでの秒数に加えて、地震の発生した時刻・震源の深さ・規模を表示できるように改善を加えているようですし、津波の可能性がある場合や津波情報(津波注意報・津波警報・大津波警報のいずれか)が発表されている場合は音声とともに通知できるようにしている点が特徴のようですね。

【次ページ】広がりを見せる、地理情報活用型統合モバイルBCP

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