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  • 2012/12/21 掲載

日本が誇るフェロー・CTOに学ぶノウハウ定義書 「強みを生かして経営にインパクトを与える」日本IBM

日本IBM 執行役員 研究開発担当 久世和資氏

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フェロー、CTOの高い業績の背景には、独自の考え方、思考・行動の原則=ノウハウがある。これらのノウハウには、企業の創造力、イノベーション力を高めるパワーがある。そして、日本を元気にするヒントがある。本連載では、フェロー、CTO自身に、自らのノウハウを語っていただく。第5回は、日本IBM 執行役員 研究開発担当 久世和資氏に聞いた。久世氏は、東京基礎研究所長、大和システム開発研究所長、サービス・イノベーション研究所長などを歴任され、現在日本IBMの研究開発全体を率いている。

アクト・コンサルティング 取締役 野間彰(R&Dダイレクトコミュニケーション推進会議)

アクト・コンサルティング 取締役 野間彰(R&Dダイレクトコミュニケーション推進会議)


野間 彰
アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

1958年生まれ。大手コンサルティング会社を経て現職。
製造業、情報サービス産業などを中心に、経営戦略、事業戦略、業務革新、研究開発戦略に関わるコンサルティングを行っている。主な著書に、『ダイレクトコミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる研究開発革新』(日刊工業新聞社)、『システム提案で勝つための19のポイント』(翔泳社)、『調達革新』(日刊工業新聞社)、『落とし所に落とすプロの力』(リックテレコム)、『団塊世代のノウハウを会社に残す31のステップ』(日刊工業新聞社)、『ATACサイクルで業績を150%伸ばすチーム革命』(ソフトバンク クリエイティブ)などがある。


R&Dダイレクトコミュニケーション推進会議

Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp/rd_dc.html

「R&Dダイレクトコミュニケーション推進会議」は、対面型コミュニケーション、ITを用いた遠隔地間の双方向コミュニケーションを活発化させ、研究開発部門の知的生産性を高める活動を推進しています。ダイレクトコミュニケーションは、研究所の、風土改革、オフィース改革、研究所の新設・改造を通じて達成します。

<推進会議メンバー>
株式会社コクヨ、日揮株式会社、株式会社アクト・コンサルティング

これまでの連載


コミュニケーションとコラボレーションが求められる


――巨大なグローバル企業において、日本の研究所を率いて、グローバルグループに、そして世界中の顧客に貢献する技術やサービスの開発をされてきました。このような高い業績を上げる組織を作るために、日ごろ常に意識して実践してこられたことはあるのでしょうか。

photo
日本IBM
執行役員 研究開発担当
久世和資氏
【久世和資氏(以下、久世氏)】
2004年から、日本IBM東京基礎研究所長を務めました。当時、米国のIBMワトソン研究所で開催されているIBMリサーチの定例戦略会議に出ていたのですが、そこで、日本は素晴らしい仕事やプロジェクトをいくつもやっているのに、それらを十分アピールできていないと痛感しました。中国やイスラエルなど海外の研究所は、成果が完成する前から、上位マネジメントや経営層に強力にアピールし、経営層や会社全体からのアテンションを獲得し、そして有言実行していく。実力では、日本の研究所は決して負けていないのですが、もっとコミュニケーション力を高め、経営層や社外により積極的にアピールしなければならないと思いました。

――なるほど。それで、どうやったのですか。

【久世氏】
まず、コミュニケーションの頻度や密度を高めました。たとえば所定の会議だけでは十分なコミュニケーションが出来ませんから、それ以外の時間でも出来る限り各分野のグローバルの責任者やリサーチのトップに時間をとってもらい日本の技術やプロジェクトの価値や重要性を理解してもらうことを心がけました。せっかく日本に強みがあっても、上位マネジメントのアテンション、理解が得られなければ、会社や社会に対して大きな貢献はできません。コミュニケーション力は、大変重要です。また最近では、大きな成果を一つの研究所だけで達成することはできません。グローバルの関連組織と緊密なコミュニケーションを行い、お互いに戦略や重要性を共有した上で、コラボレーションを進めることが必要です。

――日本企業のコミュニケーション力、コラボレーション力はどうでしょう。

【久世氏】
他社の状況は分かりませんが、たとえば、国際標準化の活動などにおいて、日本や日本人は技術力だけでなく、コミュニケーションやコラボレーションの能力をさらに強める必要があると感じています。IBMにおいて基礎研究所つまりリサーチは、これまでダイナミックかつ大胆に変革してきました。IBMリサーチは、会社にとって、車のヘッドライトのような役割を担っています。ビジネスモデルの変革を支援する技術やサービスも、先を見通す視野も、研究所から提供できるはずです。ですから、経営層へのアピール、コミュニケーションはとても重要なことです。

――経営にアピールして、アテンションやリソース、関連部門の理解協力を得るコミュニケーション力は、先ほど紹介された上位マネジメントや経営層との密なコミュニケーション以外に、どのようなポイントがあるのでしょうか。

【久世氏】
重要なことは、個人が持っている強み、グループやチームの強み、日本の強みを把握し理解することです。かつてC++のプログラム開発支援ツールをIBMの海外の開発研究所と数年間にわたって共同開発していた時期があります。拡張性が高いC++プログラムデータベースやツールのユーザー自身がレイアウトやインタフェースを定義できるといった機能を開発するにあたり、海外の研究者や技術者と協力し、そこで各メンバーやチームが有している経験や技術力の高さを感じました。個人個人が、そのような強みをしっかり理解し、それを他のメンバーが理解することによって、本当の意味のコラボレーションやイノベーションが生まれます。また、日本の鉄鋼業のお客様が、世界で初めての先進的な取り組みとして、製鉄現場の製造管理システムをオブジェクト指向開発を適用して、アプリケーションの再利用性、汎用性、拡張性を格段に高めるというプロジェクトがあり、基礎研究所も1年以上にわたり参画しました。お客様の現場では、高炉、転炉、圧延機といった大型装置を、非常に緻密なスケジューリングにより、人と装置が一体になり、制御されていました。まさに、日本でしか実現できない現場の力、物を作る力、巧の力を、強く実感しました。日本にはこのように独自の技術やスキルを有する企業が数多くあります。我々の研究所が、高い技術を持っていることも大切ですが、日本のこのような強力かつユニークな価値を持たれている企業と事業を視野に入れた協業を推進することにより、グローバルのビジネスや社会に、より高い貢献できると考えます。

――確かに、日本の研究所の強み、日本という国の強み、そしてグループの底力を合わせようとすると、経営へアピールするコミュニケーション力や、他の研究所あるいは顧客とのコラボレーション力が必要ですね。

【久世氏】
ただし、コミュニケーション力とコラボレーション力だけがあればいいということではありません。大きなインパクトのあるテーマを決定し推進すること。さらに、そのテーマをサステイナブルに推進できる仕組みが不可欠です。たとえば、会社の経営者が投資に値すると判断できるようなインパクトのある壮大な挑戦に値するようなテーマの実現には、研究テーマの選択と集中が必要です。インパクトの大きなテーマは、難易度も高い訳ですから、確実なテーマとリソース配分のバランスが重要です。また、どのようなテーマを重視するかという、研究所としての方向性が重要になります。

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