IDC Japanは12日、国内通信事業者が提供するソリューション/マネージドサービス市場における2012年の市場規模見込みと、2017年までの予測を発表した。これによると、2012年における国内通信事業者のソリューション/マネージドサービスの市場規模は、前年比7.2％増の9,858億円だった。

　内訳は、iDC（インターネットデータセンター）サービスが4,697億円、セキュリティサービスが3,200億円、SIソリューションサービスが962億円、ネットワーク運用保守サービスが999億円。また同市場は、2017年には1兆2,518億円に達し、2012年～2017年の年間平均成長率（CAGR：Compound Annual Growth Rate）は4.9％になるとIDCでは予測している。


　2012年は2011年に引き続き、iDCサービス市場が前年比成長率10.9％と大きく成長した。この背景としては、2011年3月の東日本大震災以降、BCP/DR対策のためにデータセンターを活用する企業の動きが2012年も活発だったことが挙げられる。

　IDCの企業ユーザー調査でも、iDCサービスを利用する企業が、2011年～2012年にかけて顕著に増加したことが明らかになっているという。

　今後についても、iDCサービスが、通信事業者が提供するソリューション/マネージドサービス市場全体をけん引するとIDCでは予測している。

　成長の大きな要因として、今後のスマートデバイスやクラウドの普及が挙げられるという。コンシューマー市場では、スマートデバイスの普及とともに、iDCで提供されるクラウドアプリケーション利用の増加が見込まれる。

　また企業の情報システムも、社内でのシステム構築からiDCで提供されるクラウドサービス利用へのシフトが見込まれ、このような動きが、iDCサービス市場の拡大に継続的に寄与するとIDCではみているという。特に、クラウドIaaSは、ソーシャルアプリケーション分野などに加え、一般企業でも、クラウドIaaSとオンプレミスのシステムなどを連携させる「ハイブリッドクラウド」の形で基幹業務の一部などに利用する動きも見られるようになっており、今後同様の動きが広がるという。

　さらに、BCP/DR対策のためにデータセンターを活用しようという動きも継続的にiDCサービス市場を底上げするとIDCでは予測している。

　セキュリティサービスでは、特定の組織を狙った標的型攻撃の増加が、セキュリティシステムの脆弱性診断や情報漏えい対策、セキュリティ監査などの分野を中心に、需要拡大につながっている。さらに、スマートフォンやタブレット端末の普及によって、これらのエンドポイントセキュリティ需要が顕在化しており、対策を講じる必要があると考える企業が多いことなどもセキュリティサービス需要を押し上げる要因になるとIDCではみているという。

「通信事業者は、企業向けにハイブリッドクラウドのオファリングを強化すべきである。企業の中には、基幹業務用途でクラウドIaaSの採用を始めるところが出てきており、今後、クラウドサービスの需要拡大が見込まれる。ただし、一企業の中でも情報システムに対する要件は多様で、その多様なニーズを受け止めるソリューションやサービスポートフォリオの広さが今後の競争優位性の1つになる」（IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリスト 小野 陽子氏）

　今回の発表はIDCが発行したレポート「国内通信事業者のソリューション/マネージドサービス市場　2012年上半期の実績と2013年～2017年の予測」（J13030101）にその詳細が報告されている。

　本レポートでは、国内主要通信事業者に対するインタビューやユーザーサーベイなどを通じ、国内通信事業者のソリューション/マネージドサービスにおける2012年の実績や問題点の提示、今後の見通しについて明らかにしているという。