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  • 2013/07/01 掲載

9社のスマートフォン決済ソリューションを比較、米Squareも三井住友カードと日本参入

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米国のカード決済に革新をもたらしたスマートフォン決済サービスの先駆者「Square」がいよいよ日本市場に参入する。三井住友カードと提携し、2013年5月23日からクレジットカード決済サービスの取り扱いを開始。三井住友カード 島田秀男社長は、約190万といわれる個人事業主や中小企業のスモールビジネスのマーケットの開拓、カード会員や加盟店に対するサービス強化に期待を寄せる。先行してSME(中小加盟店)向けのサービスを展開するペイパルとソフトバンクの「PayPal Here」、楽天の「楽天スマートペイ」が手数料率を3.24%に改定するなど、加盟店開拓競争が熱を帯びている。今回は、これまでの関連企業への取材や記者会見などでの担当者の声を参考に、SMEからPOS向けソリューションまで、国内のスマートフォン決済ソリューションを紹介する。

TIプランニング代表取締役 池谷 貴

TIプランニング代表取締役 池谷 貴

編集などの仕事を経て、カード業界誌の版元において、雑誌編集、プランニング、セミナー、展示会などの運営に携わる。電子決済、PCI DSS/カードセキュリティ、ICカード、ICタグなどのガイドブック制作を統括。2009年11月にマーケティング、カード・電子決済、IT・通信サービスなどのコンサルティング、調査レポート・書籍の発行、セミナー運営、ポータルサイト「payment navi(ペイメントナビ)」「PAYMENT WORLD(ペイメントワールド)」などのサービスを手掛けるTIプランニングを設立した。

Squareは約190万のスモールマーケットを開拓へ

1.Square(三井住友カード+Square)

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Squareのジャック・ドーシーCEO(左)と三井住友カード 島田秀男社長(右)
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Squareによるカード決済のイメージ
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iPadによる決済にも対応している
 スマートフォン決済の先駆者と言われるSquareが、2013年5月23日から、国内でスマートフォンおよびタブレット端末を活用したクレジットカード決済サービスの取り扱いを開始した。Squareは、米国で1日の取扱高4,100万ドル(約40億円)、年間取扱高150億ドル(約1.4兆円)を誇る。2012年11月時点では年間取扱高が100億ドルだったため、半年間で50億ドルの売上を上乗せしているように現在も成長を続けている。

 加盟店は、「Squareレジ」と呼ばれる無料アプリとクレジットカードを読み取る無償の「Squareリーダ」を導入するだけで、カード決済が可能となる。決済金額は、指定の銀行であれば翌営業日、そのほかの銀行の場合は一週間以内に振り込まれる。利用者は、決済時にスマートフォンやタブレットにサインを行い、テキストメッセージやメールでレシートを受け取ることが可能だ。

 米国での決済手数料は、手数料2.75%+トランザクションフィー(決済件数に応じて徴収される手数料)1件につき$0.15(約12円)だが、国内では3.25%で提供する。後ほど紹介する競合サービスよりも手数料はかなり安価に設定されており、トランザクションフィーも不要だ。

 また、Apple Storeでは、Squareリーダを980円(税込)で販売する。購入者には、Squareのアカウント登録後、特典(ボーナス)として1,000円が付与されるため、実質無料で手に入れることが可能となっている。

 三井住友カード 代表取締役社長 島田秀男氏によると、今回のSquareとの提携により、約190万といわれる個人事業主や中小企業のスモールビジネスのマーケットの開拓、カード会員や加盟店に対してのサービス強化を実現できるサービスとして期待を寄せる。

「PayPal Here」、「楽天スマートペイ」、「Coiney」が競合

 国内でスクエアに近いサービスと言えば、ペイパルの「PayPal Here」、楽天の「楽天スマートペイ」、コイニーの「Coiney」が挙げられる。

2.Paypal Here(ソフトバンク+ペイパル)

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「PayPal Here」は、飲食店、美容関連サービスなどでの導入が加速。ジュエリーを販売している「アクアリリス」では9割の顧客がPayPal Hereで決済を行うようになったという
(出典:ペイパル)

 PayPal Hereは、ソフトバンクとペイパルが2012年5月に戦略的提携を発表後、両社による合弁会社を設立し、2012年9月からソフトバンクショップで販売を行っている。2013年3月からは全国約2,700のソフトバンクショップやソフトバンクモバイルの法人営業ネットワークを通じて本格的に販売を実施。決済手数料は従来5%だったが、Squareや楽天スマートペイに対抗し、7月1日から3.24%に大幅に引き下げた。

 ペイパルによると、PayPal Hereを導入している店舗は、特に個人事業主が営む小売業、サービス業が多く、中でも飲食店、美容関連サービス(ネイルアーティストやサロンなど)での利用が多くなっているそうだ。

3.楽天スマートペイ(楽天)

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「楽天スマートペイ」は、リーダの製造や加盟店の開拓、入金処理をすべて楽天が実施する
 楽天スマートペイは、初期費用2,980円、決済手数料は一律4.9%から3.24%に引き下げた。リーダの製造や加盟店の開拓、入金処理などはすべて楽天自らが行っているのが特徴だ。

 サービスへの申し込みは、個人および法人での契約が可能だが、最短3営業日で利用がスタートできる。また、「入金サイクルの早さはもっともアピールできる」と楽天 スマートペイ事業 事業長 小林重信氏が語るように、回収期間については、振込先口座として楽天銀行を指定した場合、カード決済取引の翌日に入金が可能だ。さらに、KDDIでも、 4月1日から、法人向けに楽天スマートペイの取り扱いを開始している。

4.Coiney(コイニー)

 コイニーでも「Coiney」を中小企業や個人事業主など一部の加盟店に対して提供している。4月10日からは、クレディセゾンと提携し、加盟店開拓を開始。また、申込みから登録までの完全オンライン化を実現することで、従来加盟店申込みから利用開始まで1カ月半の期間を要してきたところを最短1週間までに短縮している。さらに、開発者に向けてはSDK「CoineyKit」を無料で提供し、Androidにも対応するなど、企業努力も重ねている。

JCBカードの利用は不可、利幅の少なさも課題

 ただし、SME向けの決済ソリューションが国内で成功するためには、課題があることも事実だ。

 現状、VisaやMasterCardといったクレジットカードブランドの利用は可能だが(PayPal HereはAmerican Expressも利用できる)、国内で多く普及しているJCBブランドのカードは原則利用できない。

 どこでも持ち運びが可能なスマートフォンを活用することや既存のCATなどに比べ審査が簡易になることで、場合によっては不正利用の温床になりかねない。実際、米国では、SquareやPayPal Hereなどのソリューションが広がっているが、その一方で不正利用も大幅に増加したと国際ブランドの担当者は指摘している。

 また、米国では、SME向けのソリューションが広がる一方で、大手のPOSベンダーとして参入したベリフォンが撤退している。これは数の広がりに比べて、手数料収入が柱となるため、SME(中小企業)では利幅が少ないためだと言われている。そのうえ、最近では競合に比べ、手数料率を引き下げる事業者も出ており、その流れが続けば、各企業の収益を圧迫することにもなりかねない。

 国内でもこれまでカード決済を未導入だった個人事業主への開拓で一定の成果は生まれると思われるが、1店舗平均の取引額は決して多くはないと想定される。そのため、ある程度の加盟店を獲得しないと収益を確保するのは難しいだろう。また、楽天では、楽天スマートペイ加盟店で楽天会員が決済すると、楽天スーパーポイントが2倍(100円で2ポイント付与)貯まるキャンペーンを7月末まで展開しているが、このように加盟店での利用を高める地道な努力も必要になると思われる。

 それと同時に、アクワイアリング時の加盟店審査についても、従来のモバイル端末などと同様に厳しい基準で審査を行うことが求められるだろう。

 日本は、米国などに比べ、現金決済の占める割合が高く、日本の民間最終消費支出に占めるカード決済の割合は約14%程度に過ぎない(米国は35%、中国は41%)。まだまだクレジットカード決済においては後進国であり、300万店舗以上はクレジットカード決済が未導入の状態だ。

 Square, Inc. CEO ジャック・ドーシー氏は、こうした日本市場の特性を踏まえ、「日本市場で成功するのは難しい」と語るが、「それを実現できれば多くのことが立証できる」と意気込みを見せている。いずれにせよ、中小加盟店の開拓という意味では有益なソリューションであることは間違いないため、安全性を保った形で健全にサービスが利用されている実績を築くことが今後の普及に向け求められそうだ。

【次ページ】J-Debit、電子マネー、銀聯カード、クレジットカードを一台で

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