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  • 2013/07/18 掲載

イノベーションは企業存続の危機につながる!?コスト4割減につなげたリコーのIT改革

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複合機やプリンターなどの設計から販売、サービスまでを一環してグローバルに展開するリコー。2012年3月期の連結売上高は1兆9,034億円で、うち海外比率が53.4%と半分超を占めている。厳しい国際競争を戦っていくために、同社はITを活用して、高効率経営と事業の創造を目指している。近年では、同社元副社長の遠藤紘一氏が政府CIOに就任したことでも知られている。設計・製造ソリューション展で登壇したリコー IT/S本部 本部長の石野普之氏が、リコーでの取り組み内容とその成果について明かした。

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

筋肉質の経営体質を作り、新たな事業の拡大を目指す

photo
リコー
IT/S本部
本部長
石野普之氏
 現在リコーは約200の国と地域で事業を展開しており、グループ全体で231社、連結従業員数は約11万人にのぼる。冒頭でも触れた通り、連結売上高に占める海外比率は53.4%と半分以上だ。

「我が社は、かなりの部分を海外に依存してきている。国内では直販体制だが、これまで海外では現地のディストリビュータに販路を広げてもらい、日本からは良い製品を届けて売ってもらうというビジネスモデルを採ってきた。」

 その戦略を2000年に大きく変え、海外でも直販体制を採ることにしたという。複写機の強みは、設計から販売、サービスまでを一気通貫で提供することだと考えたからだ。

「当社の場合、海外ディストリビュータを支えるシステムは、直売を支えるシステムに比べて5~6倍も難易度が高く、コストも場合によっては10倍かかっていた。そんなシステムをグローバルに展開していたということ。」

 従来、オフィス内でのコピー枚数に課金するビジネスを展開していた時には業績も好調だったが、ユーザー企業にコスト削減の意識が高まり、値下げの要求が増えてきた。それに伴い、利益率もどんどん下がってきたという。

「今までのようなビジネスのやり方をしていては、もう利益が出ない。そこでとことん“体質改造”をして、コストを抑えていこうと考えた。」

 またデジタルカメラの登場によって銀塩カメラが一気に存在感を無くしたように、一たびテクノロジーのイノベーションが起これば、企業は存続の危機に見舞われる。

「もし複写機に画期的なイノベーションが起これば、我々の将来はない。そこで新しいビジネスを探していこうということで、同時に“成長”も事業の基本戦略とした。」

経営者/業務スペシャリスト/ITスペシャリストの三位一体で臨む

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 高効率経営の実現と事業の創造を同時に掲げたリコー。この2つを達成するためには、ITの利活用が必要不可欠となる。

「それまでIT部門はどちらかといえば受身で、ユーザーからの要求を忠実にシステム化し、その後は障害が発生しないよう滞りなく運用するというのが価値だった。しかし今の時代、それではもうダメだ。我々はITが前に出て、ビジネス側と一緒に業務改革を進めることを志向した。それによって我が社の競争力を高めていく。」

 また石野氏は、リコーの経営層がITに対して非常に期待をし、ITを戦略的な武器として使おうと考えてくれていることは、非常にラッキーだと強調する。

「だからこそ、経営者、業務スペシャリスト、ITスペシャリストの三位一体という構想が出てきた。」

 たとえば組織のミッションを変えることは、組織内部の人間にではできない。やはり経営者が判断すべき事柄だ。そこに経営と業務を繋ぐ業務スペシャリスト、経営とITを繋ぐITスペシャリストが加わり、さらにこの両者が業務とITとのかけ橋になる。

「システムをただ入れれば業績がよくなるという時代はもう終わった。今は業務プロセスを変えたり、仕事の仕組みを変えたり、場合によっては組織の役割を変えたりという全社的な変革を推し進める中でITをうまく活用しなければ、効果は挙げられない。」

 ただしIT活用の面では、1990年代から“ITはお金ばかりがかかって、いつになっても効果を出してくれない”と言われてきた。

「そこで我々もプロジェクトを始める前には必ず、どういう効果を生み出すかを一所懸命考えるようになった。」

 当初はその効果を、人月で計算していたという。たとえば1000人いるセールスマンの生産性を1日5分上げると、全社では1日5000分の生産性アップになる。1か月20営業日とすれば、月間で10万分の大きな生産性向上が実現できる。

「しかし現場のセースルマンに5分の余裕ができれば、せいぜい煙草を1本吸うか、コーヒーを1杯飲むかのこと。結局この計算は仮想効果にしか過ぎない。それが経営者のフラストレーションの元になっていた。」

 そこで現在リコーでは、“仮想効果を実効果で刈り取る”ことを考えているという。たとえば実際に生産性が向上したなら、外部の人件費を減らして社内のリソースで行うとか、あるいは新たな業務を割り当てるといったことだ。そうでない限りは、効果とは呼ばない。

「言うのは簡単だが、実際には非常に苦労を要する取り組みだ。しかしシステムを作る時も、運用する時も、こういうマインドをメンバーの一人一人が持って臨んでいる。」

 参考までに、現在リコーでITに携わっている社員はグローバルで約1600名、外部スタッフまで含めれば4000~5000名のメンバーがITに従事しているという。

【次ページ】10項目に及ぶグローバルITガバナンスのフレームワークを作成

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