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  • 2013/08/12 掲載

ANA岡田圭介副社長が語る、グローバルでの生き残りをかけた業務プロセス改革

「お客さまのほうが変化が早い」にどう対応するのか

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航空業界における国際競争が激化する中、全日本空輸(ANA)グループではさまざまな業務プロセス改革に取り組んでいる。たとえば今は国境を超えた他社との協業が必須だ。その一方で、日本の高い品質を維持し続けることも非常に重要だ。SoftBank World 2013で登壇したANA 取締役副社長の岡田圭介氏は「お客さまのほうが変化スピードは速い。気が付いた時には、我々は取り残されてしまっているのではないか。その恐怖を認識した」という。こうしたことから行われた「顧客に焦点を当てた業務プロセス改革」とはどのようなものだったのか。岡田氏が語った。

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

必須だったグローバルへの転換

photo
全日本空輸
取締役副社長
岡田 圭介 氏
 ANAが国際線事業に進出したのは1986年のことだ。1999年にはスターアライアンス(1997年に設立された世界最大の航空会社ネットワーク。現在28社が加盟)への加盟を決定、2004年には黒字転換を果たし、2012年度における国際線旅客数は627万6000人、うち外国人旅客は188万人で、約3割を占めるようになった。

 こうした現状を踏まえ、岡田氏は国際線ビジネスと国内線ビジネスとの大きな違いについて、次のように説明した。

「国際線では1つの航空会社でお客さまのニーズを全て満たすことができない。たとえば宮崎在住の人がラスベガスに行こうと思えば、まず宮崎から羽田に飛び、羽田からロサンゼルスに飛び、さらにロサンゼルスからラスベガスに飛ぶことになる。こうした旅程は単独ではこなし切れない。」

 ANAが「そんな簡単なことを理解したのは、スターアライアンスへの加盟を決めた1999年頃のこと」(岡田氏)で、そこから懸命にグローバルへの転換に取り組み始めたという。

 世界に目を向けた時、日本人顧客だけを見ていてはダメで、現地の外国人顧客を取り込む必要がある。また顧客には異なる2国間を日本経由で移動するニーズがあることや、出発地(=Origin)と目的地(=Destination)の双方を睨んだ“O&D”のマーケティングも重要になる。

 このO&Dのマーケティングでは、たとえば予約のリクエストが殺到してくる時には、顧客の出発地/目的地の両方を考慮に入れ、マーケティングツールを使いながら、収益性がより高くなる顧客あるいは自社へのロイヤリティが高い顧客に優先して利用してもらうというアプローチが重要になってくる。

 一方で、日本の高い品質を維持することも非常に重要だ。

 岡田氏は年に100日間、海外に赴くというが、世界中の人に会えば会うほど、日本人の持っている高いサービスの品質や人間の持つ温もり、もてなしが極めて重要であることを改めて認識するようになったという。

「グローバルへの転換は、過去の経験を全て捨てて違う方向に進むということではない。日本人の持つ素晴らしいところは十分評価しながら、一方で従来の固定的なやり方は捨てて、新しいやり方に変えていくというチャレンジのこと。」

グローバル展開を果たすには、ITの下支えが必要不可欠

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 先にも少し触れた通り、スターアライアンスには2013年7月現在、全世界で28社が加盟している。就航地は194か国、1日当たりの就航便数は2万1900便で、これは約4秒に1便、飛行機が飛んでいる計算だ。一方の利用者には、スターアライアンスに加盟する航空会社を利用することで、飛行距離に応じたマイレージの積算/利用ができるというメリットがある。

「こうした仕組みを実現する時に重要となるのは、実はITインフラだ。お客さまのマイレージをしっかり計算して積算する、あるいは予約を間違いなく管理するというオペレーションは、ITツールの支えがなければ実現できない。」

 そのために岡田氏は、国際アライアンス業務とIT業務の両方を兼務しているという。

 また最近のアジアで、中東エアラインのGulf 3社(エミレーツ航空/エティハド航空/カタール航空)やLCC(Low-Cost Carrier:格安航空会社)が台頭してきており、“これまで見ていた景色”がどんどん変わってきているという。

「こうした環境下でどのように戦略転換をすればいいのか。グローバル市場での1つのテーマだ。」

 そこでANAは、さらなるアライアンスの強化と顧客の利便性向上を目指して、複数の航空会社と個別にジョイント・ベンチャーという形でより深い企業提携の関係を構築した。たとえば太平洋ではユナイテッド航空と、欧州ではルフトハンザ航空とのジョイント・ベンチャーを立ち上げて、顧客の利便性を重視したダイヤの設定や共同運賃の提供などを実現している。

 こうしたスターアライアンスやジョイント・ベンチャーへの取り組みを進めていくためには、当然システムもグローバル化を図っていかなければならない。

「我が社のITインフラは歴史的に自前主義で、これまではお金と時間をかけて、予約システムや空港でのチェックインシステムなどを構築してきた。しかし2015年には、アウトソーシングやクラウドサービスなど、ITの新しいトレンドを臆することなく採り入れて生産性を高め、年間10億円以上のコスト削減を目指す。そして一番重要なのは、仕事の仕方をグローバルスタンダードに変えていくことだ。今、それにチャレンジしている。」

【次ページ】ANAの業務プロセス改革

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