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  • 2014/01/16 掲載

工業デザイナー奥山清行 氏の考えるプロフェッショナル像、今後100年をデザインする

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現代の環境は目まぐるしいスピードで変わりつつあり、まさに今は時代の大きな転換期にあると言える。その中でこれから先の100年を見据え、世界や日本でのモノ作りを考える上で必要とされる力とは、一体どのようなものなのか。イタリア人以外で初めてフェラーリのデザイナーとなったことでも有名な工業デザイナーで、KEN OKUYAMA DESIGN 代表の奥山清行氏が“これからの100年をデザインする”をテーマに語った。

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

“ITの力”を駆使して、実物大の模型を作ることなく新車をデザイン

photo
工業デザイナー /
KEN OKUYAMA DESIGN 代表
奥山 清行 氏
 カーデザイナーとしての奥山氏は、米ゼネラルモーターズのチーフデザイナーや独ポルシェのシニアデザイナーなどを経て、伊ピニンファリーナでデザインディレクターを務めた経歴を持つ。フェラーリでは、イタリア人以外で初めてフェラーリのデザインを手掛けた人物として大きな注目を集めた。

 またそのデザイン領域は自動車だけに留まらず、鉄道や船舶、ロボットやテーマパークなど多岐にわたり、現在では自らが立ち上げたオフィスで企業コンサルティング業務のほか、自身のブランドで自動車やインテリアプロダクトなどの開発から販売までを行っている。2013年4月にはヤンマーホールディングスの社外取締役にも就任した。

 米PTC社の日本法人であるPTCジャパン主催の「PTC Live Tech Forum」で登壇した奥山氏は冒頭、「皆さまにぜひご紹介したいのは、世界あるいは日本でモノを作る上で必要とされる力だ」と切り出し、東京モーターショー2013でワールドプレミアを飾った自身のデザインによる新型クーペ「kode9」の写真を会場に提示した。

「この車はPTCのソフトウェアをフルに使って、2か月という短期間で製作した。それが成し遂げられたのは、現在のネットワークとソフトウェア、そして優れた日本の職人さんたちのおかげだと考えている」

 kode9の製作に当たっては、1分の1の模型は一度も作っていないという。奥山氏がスケールモデルをミリ単位で作り、それをスキャンしてデータ化し、コンピュータ上ですべての開発を行った。

「私自身がこの車を実物で見たのは完成した時が初めてだ。なぜそれが可能なのかといえば、ビジュアリゼーションの道具がしっかりしており、なおかつソフトウェアの完成度が非常に高いからだ」

 また実物大の試作品を作らずに済むことで、開発費も大幅に抑えることが可能となった。

「kode9は年間 20台ほどの少量生産で販売する計画で、低コストで製作できることは極めて重要な要素となる」

“破壊する力”と“開拓する力”で生み出されたロボットトラクター

 また2013年4月にヤンマーホールディングスの社外取締役にも就任した奥山氏は、今後、全商品のデザインを刷新していく計画であるという。

「今の日本の農業を根本から見直して初めて、ヤンマーのこれからの100年がある」

 そこで同氏が考えたのが、次世代の担い手となる農家の人たちに興味を持ってもらい、儲かる農業、楽しい農業、格好いい農業を一緒に作っていくことだ。そのために必要となるのが、破壊する力と開拓する力だ。

「ヤン坊、マー坊にはちょっとお休みしていただき、新しいイメージを、かなり奇抜な方法で、農家の方たちではなく、まずは世の中の一般の人たちの脳裏に植え付ける必要があると思った」

 そうして作ったのが、コンセプトトラクターだ。一人の人間が2台のトラクターを操作できるもので、後ろの1台に人が乗り、前の1台が自動走行をする。

「代かき(=田植え前の田んぼに水を入れて整地する作業)をする時の田んぼには水が張ってあり、どこを走ったのか分かりづらい。経験のある農家の方でも、Uターンしてきて、今作業が終わったばかりの場所と数センチと開けずに次の場所に移ることはほぼ不可能だ。だからこそロボットが非常に有用となる」

 あるいは畑を耕し、種を蒔くという作業を一人の人間でやれば、農作業は飛躍的に効率化できる。コンセプトトラクターを利用すれば、前の1台で畑を耕し、後ろの1台で時間をおかずに種を蒔いていくということが将来的には可能となる。

「ある意味で、1台の大型トラクターを買うよりも、2台のコンセプトトラクターを買っていただくほうがコストを抑えることができるだろう。農作業に費やされる人件費に比べれば、トラクターの値段は実はそれほど高いものではない。2台のロボットトラクターを利用して大幅な効率化を図れば、より大きなコストメリットを得ることが可能となる。こうした製品を作ったことで、多数のメディアにも取り上げていただけた。コンセプトトラクターを通して日本の農業の未来を一般の方々にも考えていただくいい機会になったと思う」

インターネットの時代だからこそ重要となる“現場主義”

 ヤンマーのブランディングについては、ユニクロやセブン-イレブンなどのイメージ戦略で有名なクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏を招いて新しいロゴを共に作り、さらにはかつてイッセイミヤケのクリエイティブディレクターだったファッションデザイナーの滝沢直己氏に依頼して、農業のためのファッションをデザインしてもらった(ヤンマープレミアムブランドプロジェクトのサイト)。


 兼業農家の孫であり、子供の頃は長靴を履いて田植えもしていたという奥山氏は、滝沢氏と一緒に農業現場を訪問した際、農家の人が白いスニーカーを履いていたことに驚いたという。

「スニーカーですね、というと、それはそうですよと言われた。僕たちはトラクターに8時間も12時間も乗っている。時には隣に子供を乗せ、音楽を聴きながら、エアコンをかけながら1日中仕事をしている。ここは僕らにとって家の中以上に長くいる空間で、心地よくなければいけない。スーツを着ることもあるし、綺麗なジーンズを履いて、白いスニーカーで仕事をする。それで作業の効率が上がるんですよと。目から鱗が3枚ぐらい落ちた。農機具に対する考え方がどんどん変わっていった。この例からも、これからの産業がどれほど変わっていくのかをよく理解していただけるのではないかと思う」

 その中で大きな鍵を握るが“現場主義”だ、と奥山氏は強調する。

「必ず現場に行くこと。足を使い、手を使い、それから頭を使う。ネットで検索して安易な情報を得られるインターネットの時代だからこそ、現場主義が非常に重要になってきている。私もトラクターや耕運機にはすべて乗ってみた」

【次ページ】“クリエイティブな人”とはどういう人か

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