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  • 2014/01/15 掲載

ウェアラブルデバイスで決済、API経済圏、フリクションレス…リテールITの新潮流

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いまや「モバイルファースト」という概念も生まれ、リテールITは新局面に入った。スマートデバイスやソーシャルの普及は、生活者を取り巻く環境を激変させ、新しい技術やサービスや経済圏が生まれつつある。野村総合研究所 先端ITイノベーション部 上級研究員の藤吉栄二氏は、2013年11月22日に開催されたITロードマップセミナー AUTUMN 2013で「リテールITの新潮流~モバイルファースト時代の顧客サービスと新技術~」と題した講演を行った。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

スマートフォンの出荷台数はPCを超え、モバイルファーストの時代が到来

 総務省によれば、国内のスマートフォンの世帯保有率は約50%を超えた。この勢いを保てば、数年後には90%を超えるとの予想もある。いまやリテールIT(コンシュマーIT)の世界はモバイルが主流となり、「モバイルファースト」の時代が到来している。モバイルファーストとは、アプリケーション開発を、まずモバイルでの利用を第一に考えてWebサイトの設計やデザインを行うという概念で、ルーク・ウロブルスキー氏が提唱した言葉だ。

 これに伴って生活者のライフスタイルも大きく変化している。たとえばショッピング段階で商品情報を得る手段に、約3割の所有者がスマートフォンを活用しているという報告もある。また、ネット通販市場が成長するのとともに、実際の店舗では、商品を手に取って確かめるだけで購入をしない「店舗のショールーム化(ショールーミング)」も進展している。

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(出典:野村総合研究所)


 またモバイルと親和性の高いソーシャルメディアは、コミュニケーション・チャネルとしてだけでなく、Eコマースや金融チャネルとして利用され始めている。

 たとえばアメリカン・エクスプレス(AMEX)は「CardSync」というサービスを提供している。これは自社のTwitterに商品の特売情報を流し、会員がツイートすると商品を購買できる仕組みだ。AMEXとTwitterのアカウントをヒモ付け、ECサイトに行かなくてもSNSで買い物が行える。またオーストラリアのコモンウェルス銀行では、Facebookのアカウント同士で送金できる「Kaching」サービスを提供している。

海外で動き出したフリクションレス・コマース

 スマートデバイスの機能も急速に進化を遂げている。現在、スマートデバイスは、「バーチャルキーボードの装備」「GPSやWiFiでの測位」「NFCによる決済」など、リアルとネットをつなぐ多くの機能を具備している。

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(出典:野村総合研究所)


 しかし、こうした機能が消費者の日々の活動に浸透しているかといえば必ずしもそうではない

「これらの機能をいざ使おうとすると、端末の操作が面倒であったり、利用できる場所ではなかったりする。海外では、機会損失につながる端末操作の手間やサービス間の断絶を“フリクション”(もとの意味は「あつれき」や「摩擦」)と呼んでおり、このフリクションを解消するための取り組みが活発化している」(藤吉氏)

 店舗で商品を購入しようとして、お財布ケータイをかざそうとしても、レジが対応していなければ機会損失につながる。店舗内ではGPSの位置情報も使えないし、クーポン券も店舗では自動適用されない。このようなフリクションを改善しようという動きが始まっている。

 たとえば、スマートデバイスのバーチャルキーボードによりユーザー登録をするのは手間がかかる作業だ。ならばとカメラ機能を利用し、IDカードを撮影することで、本人証明として自動登録するワンストップサービスが海外ベンダーからで出ている。日本でも同様の動きとして、auと三菱東京UFJ銀行による「じぶん銀行」が口座開設アプリで免許証を撮影することで自動登録を実現しているとのことだ。

 位置情報については、GPSだけでは屋内での精度が出ないため、特定スポットに発信機(Wifi、Bluetooth、超音波、可視光など)を置いて接近検知する方式が注目されている。屋外で受信した電子クーポンを店内で利用したい場合、レジでクーポン画面を見せるのは非効率だ。そこで、モバイルアプリにクーポンを組み込んで一気に清算する動きがある。

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(出典:野村総合研究所)


「iPhoneのiOS7からiBeacon機能が搭載され、これを利用したサービスが海外で登場した。メジャーリーグのショップでは、iBeaconが発するBluetoothの電波をキャッチし、球場でのチェックインやクーポン配布の実証実験を行った。アプリケーションによってはモバイル決済にも使える可能性がある」(藤吉氏)


 こういった機能はスマートデバイスの「モバイルウォレット」と呼ばれるアプリケーションによって実現される。モバイルウォレットに明確な定義はないが、決済、クーポン・ポイントの授受、プロモーション情報の提供など、さまざまなサービスを実現できる仮想財布のことだ。

 すでに日本国内では「おサイフケータイ」が浸透しており、モバイルウォレットのサービスを提供している企業も出ている。また海外ではNFC機能を利用し、店舗からの情報とモバイルウォレットを組み合わせ、リアルなサービスに付加価値をつけようというアイデアも出ている。ただし、リアル店舗での決済利用の状況は国内外ともに普及途上であり、本番はこれからという。

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(出典:野村総合研究所)


【次ページ】ウェアラブルデバイスでコンタクトレスな決済も登場

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