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  • 2014/05/14 掲載

クーポン利用率は驚異の70%!テスコに学ぶ、流通業のパーソナライズO2O

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消費者の間にスマートフォンが普及し、さらにビッグデータ活用の環境が整ってきたことで、企業は一人一人の顧客に対して、限りなく「One to One」に近い、パーソナライズしたアプローチを採ることができるようになってきた。たとえば、クーポンを使った施策では従来、クーポンを顧客全員に送ると、全体の売上は伸びるがコストも非常にかかるという問題があった。しかし、今は「パーソナライズO2Oによって、利益やROIを改善しつつ、顧客の買い回り商品を増やして優良顧客に育てていくことができる」とSAS Institute Japanの原島淳氏は説明する。

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

優良顧客を育成/維持していくためのフレームワークとは

photo
SAS Institute Japan
ソリューションコンサルティング第一本部
CIグループ マネージャー
原島 淳 氏
 今、流通業界を取り巻く環境が大きく変化している。小売市場規模の縮小やECの拡大、ショールーミング化、さらには買い手へのパワーシフトが起こっており、顧客との関係構築、維持、育成が喫緊の課題となってきている。

 一方で技術も進化しており、個人単位のデータを大量に補足し、また分析できるテクノロジーも登場した。さらにスマートフォンの普及によって、個人ごとにパーソナライズしたマーケティングが可能になってきている。SAS Institute Japan主催のAnalytics 2014 - SAS FORUM JAPANに登壇した原島氏は次のように語る。

「現在の流通業には顧客との密接な関係作りが求められており、またそれを実現できる技術も既に存在しているということ」

 それではどうやって優良顧客を育成していくかということだが、たとえば世界2位の小売業の英テスコでは、顧客のポイントカードのデータを元に、その顧客がよく購入する商品のクーポンを提供して、さらに来店を促進するとか、あるいはまだ買ってはいないが、買いそうな商品のクーポンを提供することで、リピートを促しながら、買い回り商品を広げる、といった取り組みを行っている。


「まず顧客データを分析し、顧客の購買活動からライフスタイルまでを理解した上で、その顧客に適した商品を薦めていく。また実店舗では、客層に合った品揃えを準備し、ECサイトでは顧客の好みに合いそうな商品をレコメンドすることで、販売を伸ばすことを考える。

 またベースとなる商品も重要だ。そこで新商品を開発してレジ単価の向上を図ることや、商品構成を最適化していくことも検討する必要がある。

 そして実際に顧客が育成できたのかを検証するために、KPIを決めて効果を測定し、施策をブラッシュアップしていく。こうした一連の取り組みは、優良顧客を育成し、維持していくためのフレームワークだということができる」

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(出典:SAS Institute Japan講演資料,2014)


顧客セグメンテーションで、クーポン利用率70%を達成

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 次に原島氏は、顧客を育成するための適切なアプローチ方法を考えるためには、顧客の“顔”を把握しておく必要があると強調した。

「顧客育成においては、来店頻度のアップや買い回り商品の幅を広げることが、重要なポイントになる。そのためには顧客を理解する必要があり、最初に求められるのが顧客のセグメンテーションだ」

 先に紹介した英国テスコでは、顧客を、“ライフステージ(=学生、独身、若者など)”、“頻度(=毎日、週に何度か、毎週など)”、“ライフスタイル(=価格に敏感、健康志向、高級志向など)”という3つの軸でセグメント化し、顧客の嗜好に基づいたマーケティングを実施している。

「この中で特にライフスタイルを分析するために行われているのが“商品DNA”という分析手法だ。食品スーパーなら、商品1つ1つに、斬新、容量大、健康志向、といったその商品の特徴を表わすタグを付けていく。これによって、たとえばある顧客が50個の品物を買った時、“斬新”というタグを持つ商品が22%を占めていたということを把握し、それによって顧客のプロファイル情報を作っていく。そしてプロファイルが類似している顧客をグルーピングしていくことで、顧客をセグメント化することができる。ここでのポイントは、顧客のライフスタイルを表わす商品DNAを、商品1つ1つに当てはめていくことにある」

画像
(出典:SAS Institute Japan講演資料,2014)


 しかし多くの企業では、提供している商品数は膨大な量になる。その1つ1つに手動で商品DNAを振っていくためには多大な手間がかかり、メンテナンスも非常に大変だ。そこでテスコでは“ローリングボール”というデータ分析手法を使って、商品DNAを自動で付与していったという。

「たとえば“お買い得”というタグを持つ商品を始めにいくつか集め、それらを元に関連する商品をどんどん集めて、それらに対し“お買い得”というタグを付与していく。こうしてテスコでは、2万点以上の品目に対して商品DNAを付与した」

 こうした顧客セグメントに基づくマーケティングを行うことで、テスコでは顧客に提供するクーポンをパーソナライズすることができ、なんと70%の利用率(回収率)を達成したという。あるいはダイレクトメールに反応しそうな顧客を的確に選び出すことで、販促の効果を高め、販促コストを約半分に削減した。

 また“価格に敏感”な層がリピートする鍵になっている商品を見つけ出し、それを重点的に値引きすることで、値引きコストを削減。さらにはセグメント別の品種の売上を分析し、自社では購入されていない商品を洗い出して商品ラインナップを改善することで、プライベートブランドを5年間で大幅に成長させるという成果も獲得したという。

【次ページ】パーソナライズO2Oで優良顧客を育成する

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