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  • 2014/05/15 掲載

グーグルのIoT戦略とは?アジア発イノベーション企業はモバイルで世界を変えるか

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世界の中で最も人口の多いアジア太平洋地域は、破壊的なイノベーションの発信地となり、世界を変えていく可能性を秘めている。モバイルが普及し、インターネットで誰もがつながる時代。それは人からモノの世界へ、すなわちIoT(Internet of Things)の時代に移り、再び革新的な技術やサービスが生まれようとしている。中国SNS大手のRenren(人人網)の創業者でCEOのジョセフ・チェン氏、カカオトークの共同CEOであるイ・ソクウ氏、そしてグーグル アジア地域社長のカリム・テムサマニ氏と、いまアジアで破壊的なイノベーションに取り組む企業のトップが新経済連盟・NES2014で集まり、熱弁を奮った。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

Renren、WeChat、Xiaomi~中国における破壊的イノベーション企業

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Renren Inc.
会長 兼 CEO
ジョセフ・チェン 氏
 まず、アジア発となる破壊的な先進企業のイノベーション事例として、中国ネット界のパイオニアとして知られるジョセフ・チェン氏がプレゼンテーションを行った。

 ジョセフ氏は、中国最大のSNS「Renren」を立ち上げた人物。Renrenは、現在2億人ほどのアクティブユーザーを抱え、オンラインゲームも充実し、大学生の9割が利用している。また近年、マイクロソフトと提携したり、大手の動画サイト「56.com」を買収するなど、積極的な動きを見せている。

 ジョセフ氏は、「我々は、破壊的な状況を起こしているだけでなく、破壊的な状況に影響を受けている」とし、その状況について説明した。まず影響を受けたSNSは、同社のビジネスの柱となるものだが、Renrenの前身となる大学用の電子掲示板で試行錯誤を続け、オンライン・コミュニティ開発の経験を積んできた。2010年ごろからモバイルメッセージからの影響を受け、2012年には日本のDeNAと提携して「モバゲー」もスタートさせた。

 次に同氏は、中国における3つの破壊的なイノベーションについても紹介した。

 まず1つ目はRenrenの競合となる「WeChat」の例だ。WeChatは電子財布(WeChat Wallet)の仕組みを取り入れ、その上でバーチャルマネーを獲得できるソーシャルゲームを展開することで、ユーザーのエンゲージメントを獲得。同氏によれば、「モバイルデバイス決済における垂直統合の好例であり、アリババもWeChat Walletの影響を受けている」。

 2つ目の革新的な事例がモバイルフォンのプレイヤーであるXiaomi(シャオミー)だ。

 創業者は中国最大のソフトウェア企業、キングソフト(金山軟件)を設立した大学のクラスメートであった。3年前にAndoridが出たタイミングで大きな資金調達に成功し、Xiaomiを立ち上げた。

 同社のモバイルフォンがユニークな点は販売方法にある。リテールに流通させず、広告は一切なく、SNSや口コミのみで、インターネットでしか購入できない。

「それでもユーザーに支持された理由は優れた価値提案があるから。 エントリー製品を購入すると、もっと良いものが欲しくなる。かつてスマホのDell版と呼んでいたが、クラウドサービスもスタートさせ、それ以上の存在になった」(ジョセフ氏)

 3つ目の事例はジョセフ氏自身のRenrenだ。音声付の写真をアップロードできる業界初のサービスを2013年に提供。写真を撮影し、アップロード時に音声を付加することで、その内容を説明できるというものだ。「Renrenのビジョンは人間の記録を残すこと。特に中国人の歴史を残すことだと考えている」(ジョセフ氏)。

優れたサービスさえ提供すれば必ず収益につながる

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Kakao Corp.
共同CEO
イ・ソクウ 氏
 お隣の韓国からは、カカオトークの共同CEOであるイ・ソクウ氏が、同社の破壊的なイノベーションについて紹介した。カカオトークは2010年にリリースされたスマホ向け無料通話・SMSアプリの先駆けで、ユーザーは現在1億3000万人を突破。230ヵ国、14言語で展開。日本ではヤフーと提携したことでも知られている。

 いまでこそ有名になったカカオトークだが、やはりヒット前は一連の失敗があった。3年間ほとんど利用されなかった厳しい時期を乗り越え、モバイルに切り替えたところ、韓国で成功できた。

「もともと創業者やエンジニアはNHNの出身者だったので、優れたサービスさえ提供すればビジネスモデルを心配しなくてもよいという考えがあった。Naverが登場したときも検索の収益モデルはなかったし、ハンゲームでも同様だった。あとから必ず収益につながったからだ」(イ氏)

 カカオトークは、最初はメッセージングサービスだったが、いまはモバイルSNSへ発展。音楽、写真、ソーシャルコマースも伸びているという。

 韓国の人口は5000万人。うち73%がスマートフォンユーザーで、その90%がカカオトークを利用している。収益のメインはゲームだ。1年半に9つのゲームで2000万、2つのゲームで2000万超のダウンロードがあった。ゲームのトップ10のほとんどがカカオのもので占められ、10億ドルの収益を得ている。またボイストークという音声通話サービスを開始し、そちらでも注目を浴びている。

 イ氏は「韓国ではスマートフォンへ急速にシフトが始まっている。カカオトークの収益源はゲームだと思われているが、出発点に過ぎない。今後はソーシャルグラフの重要性がクローズアップされるだろう。そこから、ユーザーの相互作用が見える。モバイルゲームの成長スピードはゲーム業界を破壊的に変える。いまはゲーム業界だけだが、これからどんな業界に影響を受けるか分からない。さらにコマースなど、いろいろな分野が派生していくはずだ」と述べた。

グーグルのIoT戦略

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グーグル
アジア太平洋地域担当 社長
カリム・テムサマニ氏
 インターネット業界の破壊的な企業といえば、やはりグーグルが筆頭に挙げられるだろう。そのグーグルで、アジア太平洋地域における戦略の指揮をとってきたのが、カリム・テムサマニ氏だ。

 同氏は、かつてファッションや自動車の出版業界にいたが、その当時の最大の通信手段はFAXであった。その後インターネットが登場したが、現在は状況がまったく違っている。

「我々は従来からのネットユーザーだと思っているが、次世代ユーザーは最初からモバイルでインターネットにアクセスしている。モバイルはネットを様変わりさせるだけではない。利用形態がさらに変化する」(カリム氏)

【次ページ】未来を見据えたグーグルのIoT戦略

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