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2014年07月17日

参入障壁が高い農業分野を“負けない戦い”で開拓する、久松農園のイノベーション

1999年より茨城県土浦市で有機農業を営む久松農園は、毎年50種類以上の野菜を作って、顧客に直送している。同農園 代表の久松達央氏は、「方針は非常にシンプルで、おいしい野菜でお客様を喜ばせたい」と語り、「どんなに技術を駆使して作った野菜も、旬のものには敵わない」と強調する。opnlab主催のイベント「農家×林業家が語る:一次産業の新たなビジネスモデルとソーシャルメディアマーケティング」で登壇した久松氏が、同農園の取り組みについて語った。

執筆:西山 毅

“畑から玄関まで”が農業である

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久松農園
代表
久松 達央氏

 久松氏は慶應義塾大学卒業後、大手繊維メーカーの帝人に就職して4年間の勤務の後、「本当に何の脈絡もなく農業に興味を持ち、何の準備もせずにいきなり農業の世界に飛びこんだ」という。そして茨城県の農業法人で1年間の研修を受けた後、独立して就農した。

 現在、久松農園の畑面積は4ヘクタールで、ビニースハウスなどの施設を全く使わずに屋外で育てた“露地野菜”を年間50品目以上も作り、顧客に直販している。農園に携わる人員としては久松氏以外に農場スタッフが3名、出荷スタッフが3名で、販売先は個人客が6割、飲食店が4割とのことだ。

「最初に申し上げておくと、私は何か事業戦略があり、それに沿って農業をやってきたわけでは全くないです。今日お話する内容も、理由は全て後付け。ただ本当に必死になって、生き残るためにずっと頑張ってきたことが、振り返るとあたかも1本の道になっていました。生き残っているものには、何か理があるのだろうと感じています」

 冒頭でも触れた通り、久松農園の方針は非常にシンプルで、“おいしい野菜でお客様を喜ばせたい”ということ。それではおいしい野菜とは、一体何か。

「私の経験上、生鮮野菜の味を決めるのは3つの要素。まず栽培の時期でつまり“旬であるかどうか”、次に品種、そして鮮度です。この3つの要素で野菜の味の8割は決まってしまう。別の言い方をすれば、土作りや農法はどんなに寄与しても最大2割まで」

 さらに久松氏は、とても技術のあるほうれん草農家が夏に作るほうれん草よりも、素人が冬に作るほうれん草のほうがおいしい確率が、遥かに高いと強調する。

「野菜には、その生理に合った気象条件や温度が存在します。どんなに技術を駆使しても、元々持っていた遺伝的な形質から大きく逃れることはできず、旬のものにはかないません」

数十年間で、味の平均点が落ちてしまったワケ

 しかし日本の農業界はこの数十年間、“欲しい時に欲しい野菜が欲しい”という消費者ニーズによって、その旬を無くす方向に動いてきたと久松氏は指摘する。

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「消費者は便利になった反面、味の平均点は落ちてしまったのです。農家としても旬を外して作ったほうが儲かる、という構造になっているのです」

 また1990年代後半から、日本の冷蔵輸送技術が飛躍的に発展した。結果、野菜の流通網はかつてないほど広域化、長時間化している。久松氏によれば「生鮮野菜の鮮度とは、純粋に収穫してからの日数」で、それが長くなってしまったということだ。

「悪いというわけではないですが、私はそれをおいしいとは思いません。なぜなら我々がおいしいと感じる大きな要素は、舌で感じる味ではなく、実は香り。そして香りのほうが、味よりも時間による劣化が激しいからです。」

 おいしい野菜でお客様を喜ばせたい。それは旬に野菜を育て、おいしい品種を選び、鮮度よくお客様に届けるところまで実現しなければ成立しない。そういう意味で久松氏は「畑から玄関までが農業だ」と考えているという。

【次ページ】“農家仲間”ではなく“お客様”から褒められたい

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