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  • 2014/07/23 掲載

トヨタ自動車 加藤光久 副社長が語る「もっといいクルマづくり」を支える技術と仕組み

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トヨタ自動車 取締役副社長 加藤光久氏は、入社後の約16年間にわたり開発畑を歩み、2000年からチーフエンジニアとして12代目クラウン(通称:ゼロクラウン)開発の陣頭指揮をとった人物としても知られる。その後、トヨタテクノクラフトの社長に就任し、製品企画本部長などを歴任後、現職に至っている。そんな同氏が、いまトヨタが進めている安全・環境面での技術戦略と「Toyota New Global Architecture」(TNGA)の取り組みについて語った。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

トヨタの「もっといいクルマづくり」とは?

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トヨタ自動車
取締役副社長
加藤 光久 氏
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 トヨタは「もっといいクルマづくり」を合言葉に改革に取り組んでいる。この言葉は豊田章男氏が社長に就任して以来、唱え続けてきたものだが、リーマンショックを契機に、あらためてトヨタが持続的な成長するためのグローバルビジョンとなっている。

 第25回設計・製造ソリューション展の基調講演に登壇した加藤副社長は「トヨタは、趣味・感性に特化したスポーツカー、量販車・一般向けのクルマ、商用車、エコカーなどの次世代車やコンセプトカーにゾーン分けして“いいクルマ”を考えている。ゾーンごとに求められる要件は異なるが、いずれもお客さまに満足していただけて、常にトップにあり続けることが“いいクルマ”の条件だ」と説明した。

 グローバル展開するうえで、地域ニーズは多種多様であり、その声にも現地法人が的確に応えていかなければならないが、ベースとなる品質・環境・安全性能は基本的な項目であり、どのゾーンのクルマでも、どの地域でも共通する。

 この点での同社の方針は、クルマ自体の安全性と、交通安全維持、交通環境整備という3身一体の取り組みによって、より効果的な事故対策を施すことだという。実際の事故に学び、対策を考えて、クルマの開発サイクルに織り込む実安全の追及も求められる。

「我々は、駐車支援から、事故を未然に防ぐ予防安全、事故直前のプリクラッシュ、事故時の被害を軽減する衝突安全、事故後の救助に至るまで、最適な支援をする“統合安全コンセプト”に沿って技術開発を進めている。そのためには各安全システムが単独で機能させるだけでなく、相互の連携が求められる」

 国内の交通事故を見てみると、2013年の年間事故件数は約63万件にも上った。そのうち約7割が追突・出合い頭・歩行者事故で占められているそうだ。

 これらの事故対策のために、トヨタではさまざまな施策を凝らしてきた。追突事故では、衝突時のショックを和らげるシートや、自動ブレーキ・警報などのプリクラッシュシステム(以下PCS)の向上に努めてきた。

「たとえば、レクサスLSに導入した歩行者追突回避PCSでは、夜間でも歩行者を検出し、速度を40km/hまで減速させる自動ブレーキによって衝突を未然に防ぐ。今後は大幅なコストダウンを図り、これを幅広い車種に搭載していく予定だ」

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2013年10月の世界ITS会議でお披露目されたトヨタの自動運転車(筆者撮影)
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自動運転車で首都高を走行中。先導車との距離を一定に保ちながら走行している(筆者撮影)
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ダッシュボードのインタフェース。信号で停止中だが、車車間通信をしていることが分かる(筆者撮影)
 また加藤氏は、将来の安全技術についても触れた。出会い頭の事故や右折事故は、見通しの悪い交差点内で起きる。そこでインフラ協調型安全運転システムにより、事故を未然に防ぐ技術を開発。アナログ放送終了後に割り当てられたITS(Intelligent Transport Systems)の周波数を利用し、近づくクルマの存在を共有したり、道路インフラから検知した人やクルマの存在を知らせる仕組みを整えた。

「我々は2012年にITS実験場を設置し、運用を開始している。すべてのドライバーが熟練者のように運転できる高度運転支援システムを提供したい。さらに本システムを実現するために1990年後半から自動運転技術にも取り組み、数年前から米国で公道実験を行ってきた。現在ではフリーウェイでの自動走行や、交差点・分流・合流での対応も可能になった」

 加藤氏は、2010年半ばに実現する高度運転支援システムの事例として「通信利用レーダークルーズコントロール」(RCC)と「レーントレース・コントロール」(LTC)について紹介した。

 RCCは、ミリ波レーダーと車車間通信によって、先行車と走行レーンを認識・判断し、設定速度内で車間距離を保ちながら同期・追従するシステムだ。

 一方のLTCは、白線・道路形状の認識技術を応用したもので、高性能カメラとミリ波レーダーなどによって、適正な走行ラインを算出し、そのラインに沿って、ステアリング・アクセル・ブレーキを制御しながら、安定感のある走行を実現する。

「自動運転技術に代表される自律型技術だけでなく、ITSの通信技術を活用した“つながる技術”と合わせ、より安全な次世代交通システムに育てたい」

【次ページ】「Toyota New Global Architecture」(TNGA)の取り組み

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