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  • 2014/09/01 掲載

ギネス世界記録 小川エリカ氏インタビュー:「世界一」をマーケティングでどう活用するか

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1955年に英国で世界記録を集めた本としてスタートした「ギネスワールドレコーズ(ギネス世界記録)」。現在では20か国語に翻訳され、100か国以上で毎年刊行されており、これまでの販売累計は実に1億3200万冊にものぼる。この書籍を発行している組織が、英国に本社を置くギネスワールドレコーズで、2010年には日本支社となるギネスワールドレコーズジャパンが設立された。ギネスワールドレコーズといえば、まさに“世界記録を集めた本”という言葉がすぐに頭に浮かぶが、現在では企業や地方自治体などが、世界記録への挑戦をマーケティングキャンペーンなどに活用しようという動きが出始めている。ギネスワールドレコーズジャパンの活動内容と実際の活用事例について、同社 日本支社 代表取締役の小川エリカ氏に話を聞いた。
(聞き手は編集部 松尾慎司)

世界記録は“世界の今を映し出す鏡”のような存在

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ギネスワールドレコーズ
日本支社
代表取締役
小川 エリカ 氏
──はじめにギネスワールドレコーズの活動内容について、簡単にご紹介いただけますか。

 元々ギネスワールドレコーズは、“ヨーロッパで最も速く飛ぶ狩猟鳥はどれか?”という疑問をきっかけに、世界一の情報を集めた本をパブに置いたら、ビールを飲みながらの議論も進み、お客さまの滞留時間を長くすることができるのではないか、というプロモーション目的の本としてスタートしたものです。

 しかしその本自体が売れて、以来ベストセラーになり、英語圏の国ではギフトとして習慣化されているほどで、日本でもクリスマスシーズンにはギフトブックとして手に取っていただくようになりました。

 今では世界記録という知的好奇心を刺激するコンテンツを、本としてだけでなく、さまざまな媒体を通じて楽しんでもらう時代になり、テレビ番組やイベントなどでの世界記録への挑戦の場に出向いて、認定を行っています。

 その結果、世界記録を一方向的に集めるだけでなく、我々自身も世界記録に関わっていくというインタラクティブな関係が生まれてきています。

──本を起点にギネスワールドレコーズの在り方が変わってきているということですね。

 確かにその通りですが、ただ我々が主体となって変わっているというよりも、時代の流れと共に変わってきている、というほうが正しいと思います。

 ギネスワールドレコーズは皆さんの記録によって成り立っているもので、我々は自分たちを“世界の今を映し出す鏡”のような存在だと考えています。これまでは世界一の事実や事象を集めていることが多かったのですが、“すべての人に挑戦する場を提供する”ことをミッションに掲げており、先にも述べたように最近では参加型のイベントなどを通じて、世界記録挑戦への門戸を開いていくことに注力しています。

 記録はあくまでも厳正な事実に基づき審査が行われます。今ではホームページを介して世界中から挑戦申請ができるようになっていますが、各国の記録管理部から寄せられた世界記録は常に共有され、過去の記録の調査や審査などが行われます。申請される記録は時代時代のトレンドを色濃く反映しており、最近ではデジタル関連のものが非常に増えていますね。

 ちなみに日本では“ギネス”もしくは“ギネスブック”という言葉で覚えていただいているかもしれませんが、前者はギネスビール社の商標であり、後者の表現も今では使っていません。世界記録や本の表記としては、「ギネスワールドレコーズ」あるいは「ギネス世界記録」が正式のものになります。

ギネスワールドレコーズが提供する3つの“世界挑戦”パッケージ

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──日本支社の設立は2010年とのことですが、そのきっかけは何だったのでしょうか。

 私はその2年前の2008年、英国本社にビジネスデベロップメントマネージャーとして入社し、最初に与えられたミッションが“日本国内にギネスワールドレコーズの需要があるかどうかを調べる”というものでした。世の中の流れに沿ったものであるかどうか、やはり市場のニーズが大切です。

 そこでまずは日本企業をヒアリングして回り、グローバルに展開していた3つのパッケージを紹介して、“日本にはまだオフィスがありませんが、ぜひ一緒にやりませんか”という提案を行いました。その感触が非常によかったので、日本でも支社を立ち上げて本格展開しようということになったのです。

──その3つのサービスとは、具体的にどのようなものですか。

 まず1つめが世界記録の認定イベントで、1日がかりで、PRもしくは集客のために世界記録への挑戦を行い、話題性の高いニュースにしようというものです。

 たとえば2013年4月から私たちが主催している『町おこしニッポン』は地域活性化のためにご利用いただけるプロジェクトで、各地域の方がその土地の自慢や特徴などを生かし、皆で盛り上げていくためのイベントです。自治体や地域住民の方が参加されるだけでなく、地元を支えている企業が協賛されることもあります。

 最近では、商工会議所や青年会議所などからのご依頼が増えており、1つの組織での挑戦が口コミで近隣の組織にも広がっていくという動きが出てきています。

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熊本県天草市での「世界一長いちくわ」への挑戦の様子
(写真提供:ギネスワールドレコーズジャパン)


 2つめが一般参加型のチャレンジフェアで、その時、その場に立ち寄った人が世界記録に挑戦できるものです。

 具体的には、企業や地方自治体がその目的に応じて、商業施設のような場所に世界記録への挑戦を企画して準備するもので、たとえば東京ミッドタウンはかなり海外を意識されており、日本の文化をもっと発信していきたいという思いを持たれています。そこで自社の敷地内にある芝生広場をアピールしたいというご要望を受け、この場所を活かした記録への挑戦を我々も一緒に考えて、エンターテイメントを作らせていただきました。

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ミッドタウンでのチャレンジフェア・イベントの様子。1分間で挑戦できる記録などが多数紹介され、世界記録に気軽に挑戦できる
(写真提供:ギネスワールドレコーズジャパン)


 そして3つめが、企業が競合他社との差別化を図るためのマーケティングキャンペーンで、我々がライセンシングを行うものです。方向性としては大きくは2つあり、1つは企業の商品やブランドを訴求するもの、もう1つは話題性を獲得するものです。

 たとえばロート製薬は、国内では非常に有名な企業ですが、世界的な知名度も同様に高めていきたいとのご希望がありました。そこで今後のグローバル展開を図っていくという戦略を考えた時、世界的なプレゼンスを上げていく必要があり、ギネスワールドレコーズのブランドを活用しようとお考えになったようです。具体的には2014年6月に、最新年度において最も売上の高いOTCアイケアブランドの記録を取得されています。

 日本企業が我々を活用する最大のメリットは、グローバルに情報発信ができることです。世界記録を獲得したという事実は全世界の誰もが驚くことで、その企業の存在感を強く示すものです。2011年以降は国内の申請件数が50%ずつ伸びてきており、1件1件の挑戦内容は様々ですが、それぐらい日本の世界に対する意識も変わってきているといえます。

【次ページ】日本から始まった、あるサービスとは?

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