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  • 2014/11/06 掲載

メルセデス・ベンツの自動運転への挑戦、125年前の歴史的ルートで再び

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日米欧において、クルマの自動運転技術の開発競争が激化している。ドイツの名門、メルセデス・ベンツも自動運転の研究・開発に熱心に取り組むメーカの1つだ。その走行システムは現在、ドライバーの運転をアシストする「S 500 INTELLIGENT DRIVE」として発表されている。「高速道路以外での自動走行は問題が山積」ながらも、同社が自動運転に取り組んでいる道は、125年前に同社が世界初となる自動車の長距離走行を敢行した「ベルタ・ベンツ」(カール・ベンツの妻の名前)という歴史的なルートだ。同社法人のハルトムート・シェーファー氏がメルセデス・ベンツの自動運転の取り組みを明かした。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

自動運転が求めれる背景とメルセデス・ベンツの取り組み

photo
メルセデス・ベンツ日本
メルセデス・ベンツ R&D 川崎
シニア・エクスパート
工学博士
ハルトムート・シェーファー 氏
 10月14日から15日にかけて開催された「Telematics Japan 2014(主催:Telematics Update)」に登壇したシェーファー氏は「このルートは、路幅の細い場所から交通量の多い場所まで、いろいろな環境があり、自動走行を行う際に大きな挑戦となった。実際のデモでは、既存の交通インフラの変更も、特別な先導車も用いずに、可能な限りドライバーの介入を減らすことを目指した」と振り返る。

 実験目的は高速道路以外の場所、すなわち一般道や街中・郊外における自動走行のノウハウを蓄積することだった。「車体は量産車、または量産に近い形状のものとし、カメラやレーダなどのセンサーも市販品を活用した。さまざまなソリューションをシステムに組み込むために、技術的な課題を洗い出し、本格的な技術革新の準備をしようと考えた」(シェーファー氏)。



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 この自動運転の実験では、センチ単位の精密な位置情報を得る必要があった。周囲情報を毎秒10回の間隔で更新しながら、地図上の位置と照合し、すべての運転情報を把握した。あらゆる状況において信頼できる意思決定の判断をクルマに与えなければならないからだ。ベンツは本格的な自動運転実験を3年前から開始しているが、実は以前から自動化に向けた取り組みを行ってきた。欧州では1980年代から自動化プロジェクトが始動していたという。

 シェーファー氏は「当時は技術的にも未熟というだけでなく、法的な問題も含めて多くの問題に直面した。自動運転は違法とみなされており、ドライバーも自身で運転したいという意識が強く、メーカー側が市場投入するまで踏み込めなかった。まだ安全面では、人のほうが優れているという見方が大半だった」と説明する。

 それから20年以上が経ち、技術が進展した結果、人々や政府の考え方も変わり、メーカーも自動運転の開発に積極的に乗り出せる環境が整った。安全性に関してはドライバーをアシストするインテリジェントな自動システムが寄与し、既成概念も打ち破られた。一方、ユーザー側も自動運転に興味を持つようになった。その背景には、モビリティを取り巻く状況が大きく変わったことが挙げられる。

「都市部での慢性的な渋滞により、運転そのものに苦痛を伴うことが多くなった。駐車スペースも少なく、クルマの入出庫も難しい状況だ。社会的にも高齢者が増え、複雑なルートや夜間走行、悪天候での簡単な運転が求められている。また若い世代では、運転中でもデジタル世界と切れずにコネクションを保てるような自動運転が必要という考え方もある」(シェーファー氏)

 メルセデスベンツの「INTELLIGENT DRIVE」には2つの大きな目標がある。「まず事故のない運転を行えること。昔から“ABS”(Antilock Brake System)などが導入されているが、最新技術では危険な状態で緊急ブレーキが作動する“PRE-SAFEブレーキ機能”を搭載した。もう1つは自動運転中の快適性の追求だ。我々は自動化を中心に据え、ステアリング・コントーロール、高速道路走行、自動駐車などをステップバイステップで高めていく方針だ」(シェーファー氏)。

【次ページ】103kmにわたる「ベルタ・ベンツ」の走行実験の結果は?

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