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  • 2014/11/28 掲載

フルオープンの姿勢が信用を生み出し繁盛モデルにつながる:人を動かす極意

むかし話のネゴスターに学ぶ人を動かす極意

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テレビでよく見かける謝罪会見。経営陣がずらっと並んで深々と頭を下げる、あのシーン。どうしてそんなことになってしまったのか、現場でトラブル対処ができなかったのだろうか。経営者が謝罪をしなければならなくなった背景として、企業の隠ぺい体質がある。傷が浅いうちに手当てをし、公表をすれば良いものを、地位が危うくなることに恐れ、嘘をつく。最初は小さな嘘だったはず。しかし、コソコソ対応しているから、根本的な解決策ができず、傷口は大きくなるばかり。

中森 勇人

中森 勇人


中森勇人(なかもりゆうと)
経済ジャーナリスト・作家/ 三重県知事関東地区サポーター。1964年神戸生まれ。大手金属メーカーに勤務の傍らジャーナリストとして出版執筆を行う。独立後は関西商法の研究を重ね、新聞雑誌、TVなどで独自の意見を発信する。
著書に『SEとして生き抜くワザ』(日本能率協会)、『関西商魂』(SBクリエイティブ)、『選客商売』(TWJ)、心が折れそうなビジネスマンが読む本 (ソフトバンク新書)などがある。
TKC「戦略経営者」、日刊ゲンダイ(ビジネス面)、東京スポーツ(サラリーマン特集)などレギュラー連載多数。儲かるビジネスをテーマに全国で講演活動を展開中。近著は「アイデアは∞関西商法に学ぶ商売繁盛のヒント(TKC出版)。

公式サイト  http://www002.upp.so-net.ne.jp/u_nakamori/

photo
 内部告発やソーシャルメディアの書き込みで、ことが発覚したときはもう手遅れ。結局、経営者の謝罪は逃れられず、時には辞任に追いやられてしまうことになってしまう。

 時には総理大臣でさえ、議事録を隠ぺいしたとか、しなかったとかでやり玉にあがることさえある。

 これとは逆にすべてをオープンにして信用と支持を得ているトップもいる。

 先日、ビジネス+ITで取材をした村井嘉浩(よしひろ)宮城県知事は東日本大震災で現場が大混乱しているとき、災害対策本部の会議をフルオープンにした。それはマスコミに「すべて正直な情報ですよ」と伝えることが目的だった。その中には行政側にとって不都合なものもあったのではないだろうか。

 ところが、この行動により、マスコミがすべての情報を流したことで、復興に必要な物資や人材が次々と集結したのだという。

 インターネットの普及により、隠せばバレないという時代は終わりを迎えた。ならば、隠すのではなく、情報をオープンにしていくメリットを享受する方が得策ではないだろうか。

隠ぺいは古代ギリシア時代から戒められていた

 秘密を隠そうとして床屋に口止めをした昔話、「王様の耳はロバの耳」はあまりにも有名だ。実はこの話にはプロローグとエピローグある。まずは昔話の内容。

 王の耳がロバの耳であることを知ってしまった理髪師が、王から『口外をすれば命はない』と口止めをされた。ところが周囲から『王様のあの大きな帽子の中身は何だった?』と聞かれ言いかけた言葉を飲みこむ苦しさのあまり、お腹が風船のように膨らんでしまう。

 仕方がないので山中に穴を掘り、そこに向かって『王様の耳はロバの耳』と叫ぶとお腹がしぼんだ。

 ところが穴の中に種があり、育った樹木の枝を材料にして羊飼いが笛を作ったところ、「王様の耳はロバの耳」と奏でてしまう。面白がった羊飼いが城下で『王様の耳はロバの耳』と吹いて歩くものだから、皆が事実を知ることになる。

 しかし、王様は理髪師と羊飼いを殺すことはなく、『秘密を守る苦労がなくなった』と褒美を与え、『ロバの耳の方が皆の声が良く聞こえる』と喜んだ」とされている。

 この内容だけでも隠ぺいを戒めているが、話はそれだけではない。この昔話はギリシア神話の一部を引用したもので、モデルはプリュギア(Phrygia)の都市ペシヌス(Pessinus)のミダース王。触ったものを全て黄金に変える能力を持つことで有名な人物だ。

 ギリシア神話では前段が黄金を変える能力(Midas touch)について、後段が“ロバの耳”についての逸話となっている。

 つまり、この前段の部分がプロローグ、後段のエンディングがエピローグなのである。プロローグでは豊穣と葡萄酒の神、ディオニューソスの養父が酔っぱらって行方不明になっているのを見つけ、手厚くもてなし、その礼として「触れるものすべてが黄金に変わるように」と頼んだ。

 最初のうちは歓喜したが、食べ物や飲み水でさえ黄金になってしまうことに気づき、やがて最愛の娘も金の彫像にしてしまう。富に目がくらみ、破滅の道を選んでしまったことを悔い改めたところ、能力は消え去り、ミダース王は田舎に引っ越す。

 少し長くなるが、なぜこの後、ミダース王がロバの耳になったのかを解説する。

 田舎に住まいするミダース王は田園の神、バーンの支持者となり、その神が竪琴の神、アポローンに演奏技で挑む。このくだりが羊飼いの笛に変化したものと考えられる。試合の審判は山の神、トモーロスで、彼は言うまでもなくアポローンに軍配を上げる。理髪師が山中に穴を掘るのはこの部分からの引用だろう。

 トモーロスの采配に満足のいかないミダース王は周囲の意見に耳を貸さず、アポローンの逆鱗に触れ、「そのような乱れた耳はロバの耳にして良く聞こえるようにしてやる」となり、これを隠そうとターバンを巻いたとされている。ここからは先の昔話に戻り、アポローンは反省したミダース王の耳を元に戻す。これがオチ、すなわちエピローグである。

 富(地位)に目がくらみ、人の意見に耳を貸さず、トラブルを隠ぺいする。この全てが不幸の元凶となり、王自身を苦しめる。その都度悔い改め、許されようやく平穏を取り戻す。

 これは神話だけの話と言うなかれ、彼は紀元前709年に実在したミタ王(Mita)だと推測されている。つまり、古代キリシア時代から戒められているのにも関わらず、昔話になり絵本になっているにも関わらず、劇団四季で浅利啓太氏の演出でミュージカルになっているにも関わらず、ミダース王と同じ過ちを繰り返す。実に愚かな行為であることは言うまでもない。

【次ページ】包み隠さず出し切ることでV字回復を果たす

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