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2014年12月25日

正規雇用/非正規雇用の違いなど

「人を雇う」とは? 正規雇用、業務委託など他人に仕事を頼むときに覚えておくこと

「会社」は、法律による様々な規律が張り巡らされた、複雑な、そして極めて人工的な存在だ。この連載では、飲食業やサービス業、ITベンチャーなどの起業者から、同族会社などの経営者まで、いわゆる「大企業」とは少し違う、小さいけど小回りが利く、そんな会社の経営を考えている人や、現に経営を行っている人向けに、「会社」を巡る様々な法律問題を、小説形式で解説する『法律がわかる起業物語』。第8回は、アルバイトから正規雇用、業務委託まで、自分以外の人に仕事を頼むために押さえておくべき法知識について解説する。

執筆:弁護士 河瀬 季

連載バックナンバー
■登場人物紹介
神田友信
元・大手電機会社勤務の32歳独身。理系の大学を出て勤続10年、営業マン一筋でやってきたが、世界を変えるような商品を世の中に送り出したいと起業して1か月。法律のことはよく分からないが、うまく会社を経営できるだろうか?
新堂由起子
友信と同期入社の元同僚で法務部の叩き上げ。31歳。好きな食べ物はザッハトルテ。友信とは入社の頃から細く長く友人関係を続けており、起業の相談にも乗ってくれた。不思議と高い店によく行っているようだが…?
玉井真琴
友信が電車の中で出会った、発明が得意な謎の女子中学生。読書を趣味にしているようだ。「本を読んでいる間はおでこに貼っておける栞」という発明を、友信の会社で製品化することに同意してくれた。他にもまだ発明があるようだが……?
■前回のあらすじ
かつて発明家を夢見ていた営業マンの友信は、電車の中で見かけた女子中学生が持っていた自作の栞に衝撃を受け、その栞を製品化して世に送り出したい!……と、本気で起業に向けて動き始めた。会社設立の準備も整い、いよいよECサイトなど、実際の作業に入る段階だ。

会社の仕事を誰かに頼むには?

 枕元から小刻みな振動が伝わってくる。ぼんやりとしたまま、それをただ煩わしく感じていた友信は、はっと目を覚ましてシーツの上をまさぐった。スマートフォンの画面は、由紀子からの着信を知らせていた。

「あ、もしもし、由紀子……?」

「寝てたでしょ」

 間髪入れずに言い当てられて、思わず「うぐっ」となる。

「まったく、もう昼よ? 寝ぼけた声だしてるんじゃないわよ」

 確かに、ちらりと見た時計の針はもうすぐ1つに重なろうとしている。

「いやあ……日曜日だし、いいじゃないか。今日は久しぶりの休みだったもんだから。このところ、ずっと忙しくてさ」

 由起子、真琴との、3人でも初顔合わせから1か月余りが経っていた。

 友信のすべきことはたくさんあった。会社設立、特許出願。そして実際に栞を製造していくためには、工場への発注、販売店への営業も必要だ。そろそろECサイトも準備しなければならないし……。起業家の仕事は、思った以上に大変なものだった。

 友信の愚痴を、由紀子はいかにも気のない感じでふんふんと言いながら聞いていたが、

「誰か手伝ってくれる人いないかな……?」

 と漏らした言葉に「あ」と声を上げた。

「私の妹が仕事辞めたらしいんだけど、紹介しようか?」

「えっ、本当に?」

「言っとくけど、寝癖つきで現れるような人には紹介できないけどね」

 言われて思わず頭に手をやると、本当に側頭部の髪がぴょこんと跳ねていた。見えているような台詞に、苦笑いする。

いわゆる「業務委託」とは?

「ありがとう! 助かるよ」

「あ、ただ、妹……広美っていうんだけど、あの子、結婚して会社を辞めたところなのよ。Webとかはお手の物なんだけど、これからはフリーランスになりたいんですって。だからアルバイトじゃなくて、いわゆる業務委託とかで契約巻いてあげるのが良いと思うわよ」

「分かった。業務委託だね」肯きながら手近な紙にメモを取る。「……というか、妹さん、結婚したんだ?」

 「由起子は予定ないの?」というメッセージを込めて声に笑いを含ませると、由紀子はふんと鼻を鳴らした。

「文句ある? もう切るわよ」

「あ、ありがとう……」

 と言い終わる前に通話は切れていた。

「アルバイト」と「業務委託」は何が違う?

 1か月以上に渡って経営者として販売店への営業などを行っていた友信は、ある癖が付いていた。よく分からないキーワードを言われた場合には、とりあえず分かっている風を装い、家に帰ってから調べる、という癖だ。

(「アルバイト」と「業務委託」って何が違うんだっけ……?)

 ボロが出たりしたらマズイが、これも営業先の経営者に、対等の経営者としてナメられないための癖なのだ。しかし、由起子には妙な意地を張らずに聞いておけば良かった……と後悔しながら、関係のありそうな本を、自分の部屋の本棚から探した。

 会社の仕事を手伝い、代わりに対価を得る。

 非常にシンプルなのだが、しかし、こうした立場には、実はさまざまなバリエーションがある。

・正規社員
・非正規社員
・契約社員
・アルバイト
・派遣社員
・業務委託
・請負

 たくさんありすぎていまいちよく分からないところだが、法律的に言えば、これらは、まず3通りに分類できる。ポイントは、お金を貰う代わりにどのような労務を提供するか、ということだ。

表1■働く人が提供する労務には、法律上の分類として三種類がある
法律上の分類お金の代わりに提供する労務社会的実態として使われている言葉
委任・準委任自己の裁量で事務を処理すること業務委託契約
請負仕事を完成させること請負契約
雇用雇用者の指揮監督に従うこと正規社員・非正規社員・契約社員・アルバイト・派遣社員

社会的実態と法律上の分類は対応していない

 そしてもう1つのポイントは、社会的実態として使われている言葉は、必ずしも上記分類に対応していない……特に、「業務委託契約」は委任・準委任なのか請負なのか不明確な場合が多い、ということだ。なお、「委任」と「準委任」は微妙に異なるのだが、簡便のため、以下はすべて準委任に統一する。

 準委任と請負の間には、かみ砕いて言えば、前者は「頑張ること」を目的とするのに対し、後者は「完成させること」を目的とする、という違いがある。

業務委託契約書
第1条 株式会社シオリヤは、新堂広美に対し、Webサイト作成の業務を委託する。
第2条 株式会社シオリヤは、新堂広美に対し、金20万円を支払う。

 この契約では、果たして準委任なのか請負なのかがよく分からない。すると、「頑張ったけどWebサイトが完成しなかった」ということが起こった場合に、問題が生じる。「頑張ったのだから完成しなくても20万円を支払う(準委任)」のか、「頑張ったにせよ完成しなかったのだから1円も支払う必要はない(請負)」のかが明確でなく、紛争に繋がりかねないからだ。

【次ページ】トラブルにどう対処?正規雇用/非正規雇用の違いは?

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