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- 2015/01/30 掲載
おとぎ話のヒーローが地方経済を救う:人を動かす極意
むかし話のネゴスターに学ぶ人を動かす極意
中森勇人(なかもりゆうと)
経済ジャーナリスト・作家/ 三重県知事関東地区サポーター。1964年神戸生まれ。大手金属メーカーに勤務の傍らジャーナリストとして出版執筆を行う。独立後は関西商法の研究を重ね、新聞雑誌、TVなどで独自の意見を発信する。
著書に『SEとして生き抜くワザ』(日本能率協会)、『関西商魂』(SBクリエイティブ)、『選客商売』(TWJ)、心が折れそうなビジネスマンが読む本 (ソフトバンク新書)などがある。
TKC「戦略経営者」、日刊ゲンダイ(ビジネス面)、東京スポーツ(サラリーマン特集)などレギュラー連載多数。儲かるビジネスをテーマに全国で講演活動を展開中。近著は「アイデアは∞関西商法に学ぶ商売繁盛のヒント(TKC出版)。
公式サイト http://www002.upp.so-net.ne.jp/u_nakamori/
地方経済を活性化するヒーロー
一見、道徳を教え、諭すという寓話のようにとらえられがちだが、実はこの話、経済学の要素を持ち合わせているのだ。
ここで物語のおさらいをしたい。
ある雪深い地方に、貧しい老夫婦が住んでいた。年の瀬がせまり、おじいさんは新年を迎えるためのモチを買うために、自家製の笠を売りに町へ出かける。しかし、笠はひとつも売れず、吹雪いてくる気配もしてきたため、やむを得ず笠を売ることを断念。
帰路、吹雪の中で、おじいさんは7体の地蔵を見かける。心のやさしいおじいさんは、素通りすることなく地蔵の雪をはらい、商品だった笠を丁寧に被せていく。さらに、手持ちの笠が2つ足りないことから、自らが被っていた笠と手ぬぐいも地蔵に被せる。結果、手ぶらで帰宅したおじいさん。モチを待ちわびていたおばあさんはその行為を責めることなく、「良いことをしましたね」と絶賛。老夫婦は空腹のまま眠りにつくことに。
その夜、「ドスン、ドスン」と大きな音に目を覚ました老夫婦が扉を開けると、家の前に米俵やモチ・野菜や魚などの様々な食料と小判などの財宝が山と積まれていた。雪の降る中、遠くに目をやると手ぬぐいをかぶった1体の地蔵と笠をかぶった6体の地蔵が去っていく様子が見えたのだという。 老夫婦は地蔵からの贈り物のおかげで、良い新年を迎えることができたというお話。
どこが経済学だという声が聞こえてきそうだが、おじいさんの笠こそが流通経済の要なのである。
笠は地方のマニュファクチャーつまり地場産業から生み出された商品であり、これを都市部に運び貨幣に変え、さらにモチを購入することで流通経済が成り立つ。
しかし、物流の近代化やスーパーマーケット、量販店の進出で地方経済は冷え切ってしまい、もはや笠ではモチが買えない時代。まさに「笠地蔵」の前篇と同じ状況に追い込まれているのである。
ここで後編の山となる“7体の地蔵”が登場し、ヒーローとして活躍するわけだ。
【次ページ】地蔵になることの特典
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