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2015年04月17日

熊本県人吉市のハラール対応による地方創生の試みから何を学ぶか:篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(61)

4月の統一地方選を前にして地方創生が活発に議論されている。人口減少時代を迎えて、地域経済の再生は待ったなしの状況だ。もちろん、これは選挙が終われば下火になってもいいという話ではなく、腰を据えて取り組んでいく問題といえる。情報化とグローバル化の環境をどう活かすか、具体的な取り組みをもとに考えてみよう。

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠ア彰彦

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(Photo:kazoka303030 - Fotolia.com)

過去を省みて今後の潮流を読む

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 昨年5月に日本創生会議が出した、いわゆる「増田レポート」で、地域別に将来の人口が予想され、消滅しかねない自治体がいくつもあるとの内容に衝撃が走った。この流れを受けて、昨年の夏以降は「地方創生」が大きな政策の柱として議論されている。

 地域経済の活性化は、以前から長く議論されてきたことであり、重要なことは、一時的な効果ではなく「持続可能な」具体策に着手することであろう。高度成長期は、企業や産業を誘致することに力点が置かれ、低成長に入ってからは、公共事業によるテコ入れが盛んに行われてきたが、現在の企業戦略や財政事情に鑑みて、こうした方策は、以前ほどの効果は期待できそうにない。

 なぜなら、従来の路線では、人件費や土地代の安さ、あるいは、税金の低さを競い合ったり、国の計画をもとに画一的な事業が各地で展開されたりしがちで、必ずしも、それぞれの地域が長い時間をかけて、地理的・歴史的に築いてきた特性を充分に活かしきれなかった面があるからだ。

 たびたび語られてきた活性化策を「絵にかいた餅」で終わらせないためにも、過去の反省に立ち、時代の潮流を読み取ることが大切だ。今後は、地元の特徴や個性とその強みをよく再認識したうえで、「グローバル化と情報化」の波にうまく乗ることが欠かせない。

内なるグローバル化をキャッチした戦略

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熊本県人吉市を訪れる観光客

(写真提供:人吉市)

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2月には食肉加工処理・販売のカミチクが「ハラール」対応の食肉センターを人吉市に建設すると発表。処理能力は1日50頭で、海外輸出に向けてハラール認証取得も進めるという

(写真提供:人吉市)

 熊本県南部の山あいに位置する人吉市の戦略は、興味深い取り組みの一例だ。現在の人口は約3万5000人で、過去約30年間人口減少の傾向が続く地方都市だが、近隣の町などと連携して、東南アジアや中東から来日する外国人をターゲットにした地域振興を図ろうとしている

 前回解説したように、このところ訪日外国人旅行者が大きく増加している。今年の春節には、中国人旅行者の“爆買”が注目されたが、実は、この他にも、インドネシアやマレーシアなど、世界で最もイスラム教徒が多い地域の東南アジアから来日する旅行者も増えている。

 周知のとおり、イスラム圏では、豚肉とアルコールはタブーであり、食材は「ハラール」という特殊な手順の処理で提供する必要がある。ところが、日本には「ハラール」対応できる食肉加工施設が実はあまり多くない。

 国内には、約200か所の食肉加工工場があるとされるが、そのほとんどは、豚肉と牛肉の両方を処理していて、牛肉だけの加工施設は10か所程度といわわる。しかも、ハラール対応の施設はほんのわずかで、そのひとつが人吉市の隣町の錦町(人口1.1万人)にある。

 人吉市はそこに着目し、関連する企業などと連携してハラール対応の食材を提供する拠点にしようとしているのだ。

【次ページ】地方創生に向けた3つのインプリケーション

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