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  • 2015/04/16 掲載

5フォース分析とは何か?ポーター教授考案、競争戦略フレームワークの基本

事例や図版でフレームワーク解説

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皆さんは『競争の戦略』という本をご存じでしょうか。この本は、経営学者のマイケル・E・ポーター氏が1979年に発表したもので、世界中で非常に大きな反響を呼びました。ポーター氏が当時35歳という若さ、史上最年少でハーバード・ビジネス・スクールの教授となるきっかけにもなった本です。そして、ここで語られているのが、今回ご紹介する「5フォース(ファイブフォース、5つの競争要因)」であり、それを活用した5フォース分析です。身近なビジネスの具体的な事例などを交えて詳しく解説します。

佐倉 優子

佐倉 優子

大手メーカー等にてマーケティングを担当。その後、事業再生コンサルティングに従事。

5フォース分析とは何か
5フォース分析とは、外部環境分析のうち「事業環境」の分析を行うためのフレームワークです。これを考案したマイケル・E・ポーター教授は、経営戦略を考えるうえで、「業界の競争状態」=「競争要因」を知ることが重要であると説いています。その「競争要因」には、以下の5つの競争要因(5フォース)があり、これが業界の収益性を決めることになるのです。

  1. 新規参入者の脅威
  2. 売り手(サプライヤー)の交渉力
  3. 買い手(顧客)の交渉力
  4. 代替品や代替サービスの脅威
  5. 既存企業同士の競争(競争業者)

ポーター教授を一躍有名にした「5フォース」

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マイケル・E・ポーター教授
 35歳という若さで、最年少でハーバード・ビジネス・スクールの教授となったポーター。そのポーター教授は、業界の競争状態を左右するものには、「5つの要因」があると考え、それを「Five Forces」と呼びました(日本では、「ファイブ・フォース」、「5フォース」「5Forces」などと表記されます)。

 ポーター教授の理論は、経営戦略の中で、競争が持つ重要性が強調されており、今日の「競争戦略」の礎となっています。5フォースは、経営に不可欠なツールとされ、企業戦略策定や競争戦略策定に活用できます。なお、企業の環境分析を行う際には、外部環境と内部環境に分けて分析をしますが、5フォースは外部環境の中のミクロ環境分析を行う際のフレームワークと位置付けることができます。

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企業をめぐる環境分析の流れとフレームワーク

異業種の企業が競争相手になる時代

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 ポーター教授は、「業界」の競争状態が企業の戦略に大きな影響を与えると考えました。「業界」というと、製造業、小売業などを思い浮かべるはずですが、それは必ずしも正しいとは言えません。近年、かつては競合と認識されていなかった他業界の企業も競合となっているからです。

 たとえば、かつて持ち運べる音楽プレーヤー、ウォークマンで市場を席巻したソニーは、業界としては家電業界でした。しかし今や、IT業界にいたアップルのiPodが登場したことで、音楽はダウンロードして聞く、という文化が創出されました。このようにITが進化・複雑化した現代では、業界という定義があいまいになっています。

 それゆえ、ポーター教授は、業界とは「『互いに代替可能な製品』をつくっている会社集団」と定義しており、製品そのものではなく、その「価値」や「効用」に注目して「業界」を考えるべきであると説いています。

 また、ポーター教授は「業界」=「収益を奪いあう場所」であるとも説いています。一般的に競争というと、同じ業界の競合と競いあうことばかりを想像してしまいますが、それ以外にも、新規参入企業、売り手、買い手、代替品、そして競争相手、この5つ=5フォースが、業界の収益を争う相手となるのです。

 ポーター教授は、「競争戦略とは業界に働く5つの競争要因からうまく自社を守り、自社に有利になるように競争要因を動かせる位置を業界内に見つけること」としています。5つの競争要因は、業界の中長期的な収益性に大きく影響するため、要因を分析していくことで、現在の業界の収益性の構図がわかり、経営戦略策定時には大変役立つのです。

画像
5フォース分析

 それでは、5つの競争要因(5フォース)について、具体的な事例などを交えて詳しくみてみましょう。

競争要因1:新規参入の脅威

 市場参入について、先行企業が優位なのか、後攻企業の方が有利なのか論じられることがありますが、一般的には、先行が優位と言われています。しかし、これには条件があります。その条件とは、「大きな参入障壁を築けているか」という点です。参入障壁とは、具体的に下記のようなものを指します。

  1. 規模の経済(生産量増大による単位あたりのコストの低減、固定費の分散等)
  2. ブランド・知名度の浸透
  3. 資金力
  4. スイッチング・コスト(他の商品に切り換える際の、金銭・手間・心理的なコスト)
  5. 流通チャネル

具体例
かつて国内の携帯電話市場は、国内メーカーが支配していました。しかし、スマートフォンの登場により、アップルのiPhoneやグーグルのAndroidを搭載したサムスンといった新規参入企業が席巻。今やスマートフォンを持つユーザーは半数を超えましたが、そのうちのシェアの半分以上が海外メーカーで占められるようになっています。スマートフォンの台頭というゲームチェンジが、既存企業を破壊し、参入障壁をうちやぶる契機になった事例と言えます。

競争要因2:売り手(サプライヤー)の交渉力

 自社が製品を作る際には、当然ながら材料やサービスを仕入れ・調達する必要性が生じます。この材料やサービスの供給者とは、自社への売り手で、いわば自社がお客さまです。しかし、この売り手が業界で力を持っている場合や、その売り手の業者数が少ない場合、仕入れコストが高くなる場合が多くなります。すなわち、自社の収益性が悪化する要因になるのです。

  1. 市場集中度
  2. 製品の差別化
  3. スイッチング・コスト
  4. 川下統合

具体例
かつて、インテルのCPUやマイクロソフトのWindowsは市場で大きなシェアを占めており、ウィンテル(Windows+Intelの造語)などと呼ばれていました。それに対しPC組み立てメーカーは非常に数多く、サプライヤーであるインテルやマイクロソフトの交渉力は非常に強いものでした。

競争要因3:買い手(顧客)の交渉力

 自社製品の提供先が法人企業の場合、もしその企業が巨大な企業で、バイイングパワー(購買力)が非常に大きいと、この法人企業(=買い手)の価格交渉力は強くなります。また、製品の差別化がなされていない場合やスイッチング・コストが低い場合にも、買い手である顧客の交渉力が強くなります。そうなれば、自社製品は買いたたかれて、利益率は圧迫されることになります。

  1. 市場集中度
  2. 製品の差別化
  3. スイッチングコスト
  4. 買い手の情報量
  5. 川上統合

具体例
昨今、イオンやセブン&アイ・ホールディングスなど、川下企業の巨大化が進展しています。こうした企業に製品を販売する場合、自社の製品が他社製品と差別化できていないと、相手先ブランドのPB(プライベートブランド)として、安く提供せざるをえない状況に陥ってしまいます。

【次ページ】事例で学ぶ5フォース分析

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