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  • 2015/05/14 掲載

医療機器メーカーの世界ランキング:強力なJ&JやGE、シーメンスに日本勢は勝てるのか

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現在使われている医療機器は、50万~60万品目におよぶと言われる。多品種少量生産の医療機器業界では、ほかの事業領域のようなマンモス企業は少ない。しかし、医薬品業界と同様、医療機器業界を牽引するのは、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)やゼネラル・エレクトリック(GE)らの欧米メーカーだ。欧米メーカーは医療機器の研究開発で先行し、さらに医療機器市場も約8割を欧米が占めているなど、圧倒的なアドバンテージがある。しかし、最近は日本メーカーが欧米メーカーを買収する動きも登場。アベノミクスの成長戦略にも盛り込まれ、官民挙げた医療機器の輸出強化などで巻き返しに躍起となっている。

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

野澤 正毅:1967年12月生まれ。東京都出身。専門紙記者、雑誌編集者を経て、現在、ビジネスや医療・健康分野を中心に執筆活動を行っている。

現在使われている医療機器は50万~60万品目

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 2009年から放送を開始し、大ヒットしたドラマ「JIN-仁-」をご覧になった方も多いだろう。幕末にタイムスリップした脳外科医が、21世紀の医療技術を駆使して、当時の東京=江戸の人々を救っていくというストーリーだ。ただし、江戸には現在のような医薬品も医療機器もないので、主人公は悪戦苦闘することになる。

 ドラマの中では、現在の医学知識に基づいて、注射用の針とガラス瓶を江戸で製作した、という設定になっている。時代考証では、当時の職人の技術水準なら製作可能と判断されたのだろうが、実際の江戸の医師たちは、注射器一つない中で、医療を行わなければならなかったわけだ。私たちが、いかに医療機器の恩恵を受けているかもわかろうというものだ。

 医療機器は、包帯や骨折のときに使う副木といった、ごく初歩的なものから始まり、医学の発達に伴って高度化していったと考えられる。たとえば、中世ヨーロッパでは、顕微鏡や体温計の原型が作られたと言われている。日本では、19世紀にオランダから来日したシーボルトによって、手術用のメスやハサミなどがもたらされた。1895年にレントゲンがX線を発見、医療検査に使われるようになってから、医療技術は飛躍的に発展していった。

 医療機器は、今や医薬品と並んで医療を支える必須のアイテムだ。包帯、絆創膏、注射器、聴診器、体温計、血圧計、内視鏡、人工透析機器、カテーテル、メス、手術用の縫合糸、手術室の無影灯や手術台といった具合に、挙げていくと切りがない。1台当たり1億円以上するCTやMRIといった検査機器もある。体内に入れるペースメーカー、ステント、人工関節なども医療機器の範疇に入る。中には、コンタクトレンズ、コンドームといったものまである。

 このように、医療機器は千差万別で、種類は多岐にわたる。現在、使われている医療用医薬品は約1万5000種類なのに対し、医療機器は50万~60万品目とも言われている。日本の医療機器の市場規模は3兆円程度だから、単純計算で1品目当たりの平均売上高は500万円前後にとどまってしまう。したがって、医療機器メーカーは、医薬品メーカーと違って、多品種少量生産になるわけだ。

 しかも、同じ医療機器といっても、種類によって用途も形状も機能もまったく異なる。別の領域同士でノウハウを共有することが難しいのだ。医療機器メーカーで、専業の大企業が少ない理由はそこにある。医療機器メーカーの多くは、事業を得意領域に絞り込んでいる。

トップ10を欧米企業が独占

 医療機器部門売上高によるグローバルランキングを見ると、トップ10が欧米企業に独占されているのがわかる。

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医療機器業界の世界ランキング2014

 背景としては、次のようなことが考えられる。世界の医学界をリードしているのは西洋医学であり、医薬品と同じように、医療機器の研究開発でも欧米メーカーが主導権を握っている。世界の医療機器市場(約30兆円)のうち、約4割を米国、約4割を欧州、約1割を日本といった具合に、先進国がほとんどを占めているという事情もある(発展途上国では、医療機器がほとんど普及していない)。

 さらに、医療機器各々の国内市場は限られているので、欧米メーカーが早くから海外市場の開拓を図ってきたこともある。経営規模を生かして、製品のラインアップが充実しているのも強みだ(欧米メーカーでも、総合電機メーカーや医薬品メーカーが医療機器事業を兼営しているケースが多い)。

 医療機器売上高で世界第1位は、米国のジョンソン・エンド・ジョンソン(以下、J&J)の287億ドル(約3.43兆円)である。1886年に滅菌済みの包帯・縫合糸などの衛生用品メーカーとして出発。現在、約60カ国でグループ事業を展開、「トータルヘルスケアカンパニー」を標榜し、医療機器のほか、家庭用衛生用品、化粧品、医薬品などを幅広く製造している。

 外資系メーカーとして日本でも馴染み深いが、「バンドエイド」や「リステリン」など家庭用品のイメージが強く、医療機器のトップメーカーということはあまり知られていない。外科領域の医療機器では圧倒的なシェアを握る。ちなみに、医薬品売上高でも世界第7位である。

【次ページ】日本の医療機器は大幅な輸入超過

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