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  • 2015/05/15 掲載

オラクルのデジタルマーケティング戦略、まずは「データの理解」から始めよう

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いま「モダン・マーケティング」の世界では、顧客一人一人に最適なエクスペリエンス(体験)が求められている。「多くの企業が、高度にパーソナライズされたカスタマー・エクスペリエンスを提供していると思っているが、現実は違う。96%の顧客は実際に受け取るメッセージが役に立たないと答えている」と指摘するのは、米オラクル Oracle Marketing Cloud エマージング・マーケット担当バイスプレジデントのエイブ・スミス氏だ。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

分断化されたエクスペリエンス、ノンパーソナライズ、リアルタイム非対応という3重苦

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オラクル・コーポレーション
Oracle Marketing Cloud
エマージング・マーケット担当
バイスプレジデント
エイブ・スミス氏
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 「Oracle CloudWorld Tokyo 2015」に登壇したスミス氏は「現在のマーケティングは、カスタマー・エクスペリエンスがチャネルごとに分断されており、最適なパーソナライズ化ができていないことが大きな問題点だ」と指摘する。

「たとえば、ある顧客がWebサイトから商品を購入する。数日後に御礼や何に役立つメッセージが届く。しかし顧客がWebサイトに再訪問した際に、また同じ商品の広告やメッセージが出るようではいけない。顧客が過去に何をしたのか、しっかり捕捉されていないからだ。チャネル横断的なメッセージングの仕組みが、どこかで分断されている」

 チャネルが分断されてしまうのは、企業のなかでコミュニケーションがとれていないことに大きな原因がある。たとえば、あるチームがコンテンツをつくり、他のチームがソーシャル戦略を練り、別のチームがオムニチャネルのコミュニケーションを担当する。このような形で体制が分断化されると、単一の結果が得られず、いつまで経っても顧客に対して一丸となった対応ができないわけだ。

 最近では、小売りやメーカーなどのマーケテイング担当者(マーケッター)が、役に立ちそうな顧客データを収集し、マーケティングやコミュニケーションに活かそうと考えている。実際にモバイルの位置情報をベースにしたり、ソーシャルネットワークのやりとりを通じた購買行動などの情報を収集するマーケッターも多いだろう。しかし膨大なデータを整理し、数百万の顧客にパーソナライズした形で、効率的にデータを活用することは非常に難しいことだ。

「そのため顧客に発するメッセージが単一アクション、すなわち“購入”というシグナルのみに紐づけてられてしまうケースがほとんどだ。しかし、それ以外の行動に重要なヒントが隠されていることも多い。有益な情報を集めても、迅速なアクションに結び付けられない点も問題だ。顧客がソーシャルネットワークで何かつぶやく。本来ならマーケッターが即座に反応し、アクションを起こさなければならないが、リアルタイムでの対応ができない。実際に“顧客とリアルタイムに効率的なやりとりができている”と答えたマーケッターは12%程度しかいない」

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有益な情報を集めても、迅速なアクションに結び付けられない。「顧客とリアルタイムに効率的なやりとりができる」と答えたマーケッターは、わずか12%程度に過ぎない

 現状のマーケティングでは、多様なデータを活用したパーソナライズ化ができず、一方で既存チャネルが分断され、カスタマー・エクスペリエンスも行き届かず、リアルタイムな対応も難しいという3重苦にあえいでいる。結果として、効果的なコンバージョンに至らないというジレンマに陥ることになる。

モダン・マーケティングの実現に向けたカスタマージャーニー

 こういった課題に対し、オラクルは一体どのような戦略を考えているのだろうか? 同社では、マーケッターの仕事を簡素化するスイート製品や、Oracle Marketing Cloudによる包括的な仕組みを提供している。

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オラクルが提供するモダン・マーケティング・ソリューション。データ分析から、エンゲージメントの作成、オーケストレーション、クラウドサービスまで包括的に提供できるとうたっている

 モダン・マーケティングの実現には、まず「データの理解」から始めなければならない。データ分析をアセット全域にまたがって実施し、解釈することが大切だ。

「これによりマーケッターとして賢い意思決定が行える。しかも、すぐに行動を取り、適切なコンテンツを提供できる。またコンテンツ管理にとどまらず、コンテンツ・マーケティング、ソーシャル・リスニングも可能だ。個別ニーズに基づいて、適切なメッセージングをタイムリーに発することで購買感情を喚起し、適切なカスタマージャーニーを牽引できる」

 次に必要なことは「オーケストレーション」だ。

「メール、モバイル、ソーシャル、Web、EC、ディスプレイ広告、ソーシャルサーチなど、複数チャネルでのアプローチとインテリジェンスを組み合せて、リードスコアリングを実施し、適切なコミュニケーションで顧客にリーチをかけていく。とはいえ、これらをオラクル独自で行うことは難しい。そこで我々は300以上のパートナーとともに、オープンエコシステムをつくっている」

 またオラクルが有するデータクラウドを使えば、リッチデータを取得でき、新規顧客へのリーチをさらに広げられる。メディア、広告、パブリッシャーとのパートナー連携によるエンドツーエンドの戦略が可能だ。

「マーケッターは購入に反応するだけでなく、すべての属性、年齢、性別、購入指向、ロイヤリティといった普遍的なプロファイルを取得でき、顧客のあらゆる情報が1つの簡素化されたオートメーションとシンプルなビューで見られるようになる」

 モダン・マーケティングにおける顧客との関係は、その場で終わるキャンペーンでなく、長きにわたって続くジャーニーだ。これによってマーケッターは知見を使い、初めてよりよい意思決定ができるのだ。スミス氏は「ビジネスにとって最も重要なことは、難しいキャンペーン・マネージメントの制約を受けることなく、インテリジェントなコミュニケーションを構築することだ。これが我々のビジョンである」と強調した。

【次ページ】ROIを47倍にした米国におけるモダン・マーケティング事例

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