- 会員限定
- 2015/05/29 掲載
客に注文を付ける美味しいビジネスモデル:人を動かす極意
むかし話のネゴスターに学ぶ人を動かす極意
中森勇人(なかもりゆうと)
経済ジャーナリスト・作家/ 三重県知事関東地区サポーター。1964年神戸生まれ。大手金属メーカーに勤務の傍らジャーナリストとして出版執筆を行う。独立後は関西商法の研究を重ね、新聞雑誌、TVなどで独自の意見を発信する。
著書に『SEとして生き抜くワザ』(日本能率協会)、『関西商魂』(SBクリエイティブ)、『選客商売』(TWJ)、心が折れそうなビジネスマンが読む本 (ソフトバンク新書)などがある。
TKC「戦略経営者」、日刊ゲンダイ(ビジネス面)、東京スポーツ(サラリーマン特集)などレギュラー連載多数。儲かるビジネスをテーマに全国で講演活動を展開中。近著は「アイデアは∞関西商法に学ぶ商売繁盛のヒント(TKC出版)。
公式サイト http://www002.upp.so-net.ne.jp/u_nakamori/
くしゃくしゃになるほどの恐怖を味わう
注文の多いレストランと聞いて思い出されるのは児童文学者として有名な宮沢賢治が著した「注文の多い料理店」だ。2人はいそいそと店内へと入り、ある注意書きに気が付く。「当軒は注文の多い料理店ですからご承知ください」とあったが、お坊ちゃま育ちの2人は「流行っているから注文が多く手間取るのだ」と好意的に捉える。扉を開けると、そこには「髪をとかして、履物の泥を落とすこと」とあり、以後は扉を開けるごとに注意書きが現れる。「金属製のものを全て外すこと」や「衣服を脱ぐように」、やがて酢の匂いがする香水をかけさせられたり、と不思議な注文ばかり。最後には「壷の中の塩をもみ込んでください」とあり、2人はようやく自分たちが料理を食べる方ではなく、料理の素材として食べられる存在であることに気付く。
しかし、時すでに遅し。後戻りをしようと後ろの扉に向かうが、頑として開かない。恐る恐る前の扉のカギ穴を覗くとギラリと光る目玉が二つ。成す術のない2人は顔をくしゃくしゃにして泣くしかなかった。そのときだった。彼らの背後から扉を蹴破って、すでに死んだはずの2匹の犬が現れ、前の扉に向かって突進していくではないか。どうやら飼い犬たちは扉の向こうにいる“ばけ猫”と格闘しているようだ。しばらくするとレストランは建物ごと姿を消し、そこへ山の案内人が現れ、2人は無事都会へと帰っていった。しかし、くしゃくしゃになった顔だけは戻らなかったのだと言う。
さて、このお話、宮沢賢治は何を言いたかったのだろうか?
【次ページ】「無茶ぶり」というビジネスモデル
関連タグ
関連コンテンツ
PR
PR
PR